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じんましん と 十味敗毒湯

 かゆみを伴う紅斑ができ、それが時に盛り上がったりするようなものを蕁麻疹と呼びます。皮膚に存在する白血球の仲間から、血管に影響するような物質が出てきて、血管拡張や浮腫や、局所への白血球の浸潤などが起きます。特定の物質や物理刺激に対して起こるこったり、免疫が関係していたりしていなかったり、原因がわからなかったりといろいろです。

 蕁麻疹と診断されれば、抗ヒスタミン薬を使用することが普通です。原因がはっきりわかるようなときは、その原因を取り除くことになります。しかし、慢性蕁麻疹と言われるものは、原因がはっきりしない場合も少なくありませんし、抗ヒスタミン薬が無効のことも多いとされます。なお、抗ヒスタミン薬は眠気を誘うことがあることと、高齢者ではせん妄を起こすことがある点に注意が必要です。

 蕁麻疹に対して使われる漢方薬もあります。代表格は十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)だと思います。江戸時代の医師、華岡青洲が生み出した処方としても有名です。

 保険適応は、「化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性湿疹、水虫。」とされています。熱を持つような皮膚の変化に対して用いられる場合が多いです。いろいろな皮膚疾患の初期に使うことが多いですが、慢性化したような場合にも使われます。皮膚に問題が起きやすい人に対して長く服用してもらい、症状が出にくくなるようなこともあります。また胃腸の調子を良くしてくれる作用もあります。

 処方名に十味とついているように、10種類の生薬で構成されています。かゆみは風邪(ふうじゃ)によると考えるのですが、その風邪を取り除いてかゆみを軽減します。熱を持った部分を冷やします。また排膿作用も持っていますので、少し化膿したような皮膚疾患にも有効です。これらの効果を表す言葉として、去風化湿、清熱解毒といった用語が使われます。

 十味敗毒湯以外で使用されるものとして、葛根湯や消風散なども挙げられます。葛根湯は単なる風邪薬ではなく、おもに上半身に見られる炎症に効果を見せてくれます。消風散もかゆみに対して処方します。十味敗毒湯と一緒に服用してもらうこともあります。なお、じんましんの適応はありませんが、急性の皮膚の発赤を伴う浮腫に対して、越婢加朮湯がよく効くことがあります。その際は、湿疹に対して使用するということになります。

 皮膚は内臓の鏡とも言われます。漢方薬と言うのは全身の調子、特に胃腸の調子をととのえるような生薬が含まれている場合が多いです。皮膚疾患を長く患っているといった場合、漢方も利用する皮膚科医に相談してみるとよいかもしれません。もちろん、皮膚科以外の漢方医でもよいと思います。困っているのなら、一度は試してみないともったいないですよ。なお、試す時には一種類を使って芳しくないからと言って諦めないで、何種類か試してみてください。


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