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かすみ目 疲れ目 と 漢方

 父親が高齢者の仲間に入った頃、目をこするのを時々見かけました。その時は別に気に留めていませんでしたが、徐々に自分がその頃の父の年齢に近づきつつある現在、あれはきっと目のかすみが気になっていたのだろうと納得しています。結局手術を受けるほどではなかったようだが、かるい白内障も指摘されていたようだ。はっきりとした白内障ならば、現在は曇った水晶体を除去して眼内レンズを入れることで、世の中が明るくなる方も多くなった。しかしかすみ目を感じるのは、必ずしも白内障によるものとは限らず、明らかな原因を特定できないような場合も少なくないようだ。原因がわからないと西洋医学ではいかんともしがたく、「目薬をだしましょう」ということになる。そんな時には、漢方薬を試してみるというのも良いと思う。よく利用するのは、八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、釣藤散(ちょうとうさん)などです。

八味地黄丸

 第一選択は八味地黄丸で、本などを調べれば、いの一番に紹介される漢方薬だと思います。加齢に伴い、生命エネルギーが乏しくなってきている状況を漢方では腎虚と呼びますが、そんな腎虚のかたに使用する漢方薬です。かすみ目も加齢にともないよく見られる症状ですから、この処方でアンチエージングを目指すわけです。八味地黄丸を継続することにより、半数の方で視力が向上したとか、白内障の進行が遅くなったとかいう報告もありますから、試してみる価値はありますね。ただし、保険適応としてかすみ目などが挙げられていない点は注意が必要です。保険適応は、「疲労、倦怠感著しく、尿利減少または頻数、口渇し、手足に交互に冷感と熱感のあるものの次の諸症:腎炎、糖尿病、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、脚気、膀胱カタル、前立腺肥大、高血圧。」となっています。漢方薬の保険適応病名は、必ずしも漢方本来の考え方に合致したものではないので、生薬構成などを考えて処方の持つ力をうまく利用する必要があります。

牛車腎気丸

 牛車腎気丸は八味地黄丸に、牛膝と車前子という生薬が加えられた処方です。血液の流れを良くし、水の代謝を改善する力が強められています。使い方は、八味地黄丸とほとんど一緒ですが、下肢のむくみなどが出やすい人に使う傾向があります。ただし、こちらには保険適応病名に老人のかすみ目が入っています。適応病名をお示しすると、「疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少、または多尿で時に口渇のある次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、むくみ。」となっています。

釣藤散

 釣藤散の保険適応は、「慢性に続く頭痛で中年以降、または高血圧の傾向のあるもの。」となっています。これだけを見るとかすみ目とは関係がなさそうですが、この処方には平肝という作用があるとされています。漢方では、肝の興奮が高まり気が上昇すると、頭痛、めまい、目の充血などがみられるとされ、それを鎮める効果が、目にもよい効果となって現れると考えるわけです。高血圧傾向のある方でかすみ目があるようなら試してみるとよいと思います。なお平肝といういみで、抑肝散なども利用されることがあります。

 以上は加齢に伴って出てくる目の不調という意味合いでの処方選択となります。目の疲れは、気力不足や栄養不足でも起こります。その時は別の処方が良い場合もありますから、漢方を試そうと思ったら一度は診察を受けた方が良いと思います。それが自分に合った処方を見つける早道です。

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