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消化機能をととのえてくれる漢方薬、小建中湯について

 すこし漢方のことを勉強した方の中には、小建中湯は小児用の漢方薬だと思っている人がいます。確かに小児科領域でよく使われるようですが、私は小児の診察をしておらず、大人にも使います。ちなみに私自身もお腹の調子が悪いようなときに飲んでいます。

 処方名にある中というのは、消化器やその機能のことですから、建中でお腹の調子を建て直すという意味になります。

 保険適応病名は、「体質虚弱で疲労しやすく、血色がすぐれず、腹痛、動悸、手足のほてり、冷え、頻尿および多尿などのいずれかを伴う次の諸症:
小児虚弱体質、疲労倦怠、神経質、慢性胃腸炎、小児夜尿症、夜なき。」となっています。

 最近も虚弱児という言葉を使うかどうかわかりませんが、体の弱い子供が服用しているうちに元気になるとされています。また夜尿症にも効果を認めることがあるようです。朝礼で倒れてしまう子供などにも効果があります。しかし、子供でなくても胃腸を調子をととのえてくれるので、元気が出て、体調を整えられてきます。

 お疲れさんの人の元気づけに使う処方として有名なものに、補中益気湯があります。これは800年近く前に作られた処方です。一方小建中湯は1800年くらい前の処方で、その頃は小建中湯が元気づけのお薬として使われていたようです。ですから、これを飲んでいるうちに元気が出てきて、すっかりお気に入りになる大人の方もおられるのです。

 小建中湯があう方のイメージは、体が弱く、疲れやすく、お腹の調子を崩してお腹を痛がりやすいような人で、お腹の筋肉は発達していないけど突っ張ったようになっているといったところです。

 桂枝湯の芍薬を増量した桂枝加芍薬湯に、さらに膠飴(みずあめ)を加えた処方が小建中湯となります。甘いので子供にも飲みやすいお薬です。桂皮が気のめぐりを良くするとともに体を温め、芍薬が痛みをとり、大棗、甘草、生姜が胃腸をととのえ、膠飴が元気をつけてくれます。膠飴にはオリゴ糖が含まれているわけなので、プロバイオティクスの意味合いもあるのだと思っています。また、膠飴を加える前の桂枝加芍薬湯は、過敏性腸症候群にも利用される処方ですから、同様に小建中湯も使えると思っています。

 実際に、どのような病名の方に応用できるかを少し挙げてみると、慢性胃腸炎、過敏性腸症候群、開腹術後の腸管通過障害、慢性肝炎、虚弱児、起立性調節障害、夜尿症、夜啼症、胃腸虚弱児、幼児のヘルニア(臍部、鼠径部)、神経症、心身症、気管支喘息、慢性扁桃炎、疲労倦怠、貧血、アトピー性皮膚炎、頻尿などとなります。もちろん、体質があっているうえでのことです。

 ところで、桂枝湯はかぜなどに使われ、桂枝湯の芍薬だけ増やした桂枝加芍薬湯は腹痛などに使われ、桂枝加芍薬湯に膠飴を加えた小建中湯はお腹の調子をととのえるとともに元気づけるという風に、構成生薬の量や種類が微妙に変化するだけで、対応する症状も変化していくというとことが面白いですね。そんな配合の妙を見つけ出してきた歴史に感謝したいと思います。

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