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気力と体力を充実させてくれる漢方薬の仲間を「気血双補剤」と呼びます

 長く病気を患っていたり、大きな手術を受けたりすると、気力も体力も使い果たしてぐったりとしてしまうことがあります。漢方の視点で見ると、気虚と血虚の両方が見られる状態といえ、気血両虚と言います。こういう時に利用される漢方薬を、気血双補剤と呼びます。高齢になる程、このような状態の方が増えてきますので、高齢化が進んできている現代においてその重要性が増してきていると思います。この仲間に入る処方としては、十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、帰脾湯(きひとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)が挙げられます。

 代表格は十全大補湯です。10種類の生薬でいろいろ補ってくれると言う意味を感じる処方の名前ですね。四君子湯と四物湯が一緒になり、さらに桂皮と黄耆が加わった処方です。四君子湯は元気補ってくれる補気剤の基本処方であり、四物湯は体力をつけ血を補う補血剤の基本処方でしたね。桂皮と黄耆で、体を温め、痛みを軽減し、元気をつける力が補強されています。保険適用病名は、「病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血。」となっています。近年では手術を含めたがん治療によって体力が落ちてしまった人や、治療に伴う副作用に対処する目的での出番も多くなっています。肌がカサカサで顔色が悪く元気がないといったような形に使うと良いと思います。また体力が落ちてしまうと、寝汗をかくといった症状が出ることがあります。黄耆の入っている十全大補湯でしたらそういう症状も軽減させてくれる可能性があります。

 人参養栄湯も気力体力を補ってくれる処方です。12種類の生薬から構成されています。保険適用は、「病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、寝汗、手足の冷え、貧血。」となっており、十全大補湯とかなり似通った適用となっています。ということは似たような人に使うわけですが、人参養栄湯には生薬の中に遠志と五味子が入っていると言う特徴があります。遠志は記憶力減退に効果があると言われる生薬です。遠志と茯苓が気持ちを安定させ、遠志と五味子で咳や痰を鎮めます。ですから元気や体力がなくなった上に不眠を訴えたり、咳や息切れの呼吸器症状があったり、物忘れが気になったりと言う方にはこの人参養栄湯が良いと思います。高齢化社会においてますますその重要性が増してくるだろうと思われる処方です。

 帰脾湯は、疲労、貧血、不眠、物忘れなどが目立つ場合に利用をします。保険適用も「虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:貧血、不眠症。」となっています。12種類の生薬から構成されており、その中の竜眼肉、酸棗仁、遠志は心の安定を保ち気持ちを安らかにしてくれます。木香は気の巡りを良くしてくれます。この帰脾湯に、柴胡と山梔子を加えたものが加味帰脾湯です。保険適用は「虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症。」となっています。帰脾湯に比べて体が弱り、精神不安などが強い場合に使います。

 以上が元気も体力も補ってくれる気血双補剤と呼ばれるものです。多くの場合高齢者に使われますが、若い方でもすっかり元気がなくなり体力も落ちてしまった状態に利用される処方たちです。

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