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褥瘡治療に利用する漢方薬

 寝たきりの状態になった方のケアと言うのはなかなか大変です。特に自力では寝返りも打てないと言うふうになった場合には、定期的に体位を変えてあげないと褥瘡が発生してしまいます。褥瘡の発生要因には外的要因と内的要因に分けて考える場合が多いです。外的要因としては物理的な力が1カ所にかかることによって血流が悪くなり、組織の壊死が起こり皮膚潰瘍ができるということになります。単に圧力だけではなくずれの力も問題となります。内的要因とすれば加齢により組織が脆弱になったり、栄養状態が悪かったり、麻痺で動けないといったいった要因などが挙げられます。

 褥瘡治療の主役ではありませんが、漢方薬も利用することができます。漢方薬は、体の状態や体調を整えることによって、内的な要因を改善させる方向を目指すことになります。ですから不足を補う、補剤を用いることが多くなります。

 最もよく使われるのが十全大補湯です。血を補うとともにその巡りを良くし、体を温め、栄養状態の低下や微小循環の障害を改善することによって褥瘡を治癒の方向へ向かわせます。また全身の疲労や倦怠感、食欲不振なども改善させる働きがあります。

 十全大補等を使用するような状態の人で、不安や不眠などの精神症状を伴っているような場合には加味帰脾湯を用いる場合があります。咳や痰などの呼吸器症状や皮膚の痒み、寝汗などを認めるときには人参養栄湯を利用します。

 以上述べた三剤は、いずれも皮膚を丈夫にすると言われる黄耆と言う生薬を含んでいます。また、六君子湯、補中益気湯、桂枝茯苓丸、黄耆建中湯その他、患者さんの状態に応じて処方を選択します。

 ただし漢方薬は、あくまで褥瘡治療の補佐役です。褥瘡ができそうな場所あるいはできた場所になるべく圧力がかからないようにケアをし、褥瘡を清潔に保ち、保護し、薬剤を塗布して治癒を促進させ、栄養状態を改善させといった具合に、ケア及び褥瘡の処置がとても重要です。さらに言えば褥瘡ができやすいと思われる状態の方に褥瘡ができないように工夫したケアをすると言うことが一番大切になります。褥瘡も感染してしまうと敗血症などの重大な状態を引き起こすこともあります。高齢者、特に動けない方のケアと言うのはなかなか大変なのです。

 高齢者介護の場面では、漢方薬を利用することのできる状況が色々とあります。介護に関わる方が、漢方薬をうまく利用して、被介護者の状態を少しでも良くすることができるように願っています。

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