見出し画像

レスキュー隊に早朝から叩き起こされた話

はなのかんづめ ep.7
(※はなのかんづめとは、花屋が敬愛してやまないさくらももこ氏に憧れて
書き始めた中身のないエッセイのことである)
身バレ防止も含めてある程度のフィクションも混ぜているので、どこかの世界で生きているOLがチラシの裏に書いている妄想くらいに思って読み流して欲しい。

2023年6月14日 AM7:13


ガンガンガンと玄関を叩く音と、ピンポンを連打される音で起こされた。
なにごとかと思い備え付けのTVモニターでドアの向こう側の様子を見てみると、担架や色んなものを持った「消防局」のロングコートを着た人が5~6人私の部屋を取り囲むようにしてマイムマイムの形で並んでいる。
こんな閑静な住宅街で殺人事件か、テロか、ただならぬ出来事でも起きたのかとビビッてカーディガンを着てドアを開けた。
「朝早くから失礼します~」
「今起きたばっかりなので、こんな格好ですみません。近くで何かあったんですか?」
寝起きでまだ頭が回っておらず、近くで何か物騒なことでもあったのかと問いかける。すると、どよめく消防局の人たち。
「いや、地方にお住いのお母さまから通報があって参りました」
「え?」
「花屋さんですね?」
「あ、え、はい」

どうやら、彼らが話した『地方にお住いのお母さま』は、わたしの母 千鶴子(仮名)のことらしい。
呆然としたわたしが、ベッドに放置したままのスマートフォンを見ると夥しい数の母からの着信が入っており、どうやってこの場を収集するか考えたいのでひとまず扉を締めてベッドボードの眼鏡を掛けた。

『なんにもないけど悲しい』と泣いたせい

そもそも、母が朝っぱらから不安定になったのはわたしのせいだった。前日の夜、仕事のストレスと久々に発症した喘息発作のせいでネガティブになっていたわたしは、母との電話で「特に理由はないけど、悲しいんだよねぇ。ちょっと疲れたのかも」と喋りながら、号泣してしまったのである。

自分で言うのも情けないが、わたしはメンタルがそこまで強くない。けれど、自分の機嫌を自分自身で取る方法は心得ているし、好きなインテリアを揃えた住居、住んでいる街や仕事が結構好きなので、仕事:心を比べたときにライフワークバランスの優先順位を履き違えるほど悩んでもいない。

ただ本当に昨夜は、「疲れたな~。映画館かサウナでも行きたいけど、喘息ひどいから密室の空間はダメだしなぁ」とストレス発散の術が潰された。
+職場が繁忙期で、上手く立ち回れない。なんか上手いこと回らないんだよねえ。ぐぬぬ。っていうマイナスなことが重なっただけなのだ。
一人暮らしはたのしい。けれどたまに、独りの自分が寂しくなるときもある。そんな夜に、母の声を聞いてホッとしたから自分の弱さが明るみに出てしまったのだろう。ぐわんぐわん、みにくいアヒルの子のように泣いたのである。

さて、このような娘と違って、母は思い詰めたら一直線の直情型だ。

  • 5時半過ぎに電話しても繋がらない(実際:熟睡している)

  • 6時になってLINEをしても既読にならない(実際:熟睡している)

  • もう6時半だけど、既読も折り返しもない(実際:熟睡している)

  • 昨夜号泣していて様子がおかしかった(実際:確かに少し凹んでた)

  • これは何かあったに違いない(実際:熟睡したらけろっとしてた)

単にアラームが鳴るまで熟睡している娘:取り越し苦労の母
両者の二項対立、平たく言えば掛け違いコントなのだが、本当にコントが現実になってしまった。
パニックになった母は、原付で早朝から地元の消防局に乗りこんで、私の住む街の警察/レスキュー隊に出動要請を出して私が叩き起こされた冒頭に戻る・・・、のである。

さて、かくして朝からのドタバタレスキュー騒動は各所へのわたしの謝罪と、母からの『生きててよかった』の号泣で幕を閉じたのだが、
傍迷惑にもほどがありすぎてしばらくは警察署と消防署の前を胸を張って通ることが難しくなりそうだ。
けれど、気圧や天候によるモヤモヤを母は一発で吹き飛ばしてくれたのでかなり荒療治ではあるが母に相談してよかったといえるのかもしれない。
(ただし、この先しばらくは、母の前では絶対泣かないし、弱音も吐かないことだけは宣言する)

結果的に、地域で働く方に本当に多大なご迷惑をお掛けしてしまったので、
お詫びの品を持参して、金曜の夕方にでも最寄りの消防署に伺うつもりである。
※それとは別に、母に正しい公共組織(レスキュー、警察)の使用方法もきちんと説明しなければならないと思っているのでまだ火が燃えているうちに説明責任は果たしたい。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?