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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

ボカロ合同 作品解説

はじめに

 まずは一言。
 副主催権限を振り回し、思う存分暴れ散らかしてしまい大変申し訳ございませんでした。ちなみに口だけなので全く反省はしていません。
 そして、この解説を読む前に私の話を読んでくださったあなた。ありがとうございます。あなたが読んでくださっていることが、今こうして長文をまさに打ち込まんと手を動かす理由になっています。
 さて、合同誌の実質1/4を埋めるバカの原稿を過去の自分が書いて投げたせいで文字数がすごいことになりそうな気がするので、早速ですが順を追って解説していこうかと思います。


【逝夏 -from:『夢声影画』】について

①どうしてその曲とキャラを選んだのか

 これは去年の冬コミに出した本『夢声影画(むせいえいが)』と、その次の月にあったサンアカ4で出した折本『初声影画(はっせいえいが)』を読んでいないとわからない内容になるため詳細は省きますが、サンアカ4で書く予定だった折本の内容って本来書く予定だった内容の半分しか書けていないんですよね。それは『夢声影画』のあとがきで語った内容と『初声映画』のラストのシーンを知っている人なら気が付くかもしれませんし、私的な話になるので詳しくは話しませんが、当時の自分は残りの半分を語る機会をどこかに残しておきたかったのかもしれません。
 『夢声影画』という作品は「実はおれ含めてオタクが語っている二次創作の内容って実は全て架空のもので~」ということと「だからそれらをまとめて『ありえたかもしれない世界線』って体で語らせてもらうぜ!」というコンセプト(5秒でわかる解説の仕方)で成り立っています。それを「映画(のフィルム = 私たちの生み出す二次創作のストーリー)」と「映画館(= それを語る媒体(例えば漫画、小説、音楽……etc.)であり、キヴォトスの次元(いわゆる二次元の、生徒さんがいる世界)では実在と非実在の狭間として語られる空間・世界)」の二つに落とし込んだのが、『夢声影画』の根底にあるわけです。宇宙猫になっている方、すみません。もう少しだけオタクの自作品語りに付き合わさせてください。テクスト論という言葉を知っている方はこのあたりの話がヌルッと入ってくるかもしれません。
 ここまで語ったうえで本題に入りますが、『夢声影画』のネタバレになるので詳しくは語れませんが、曲とキャラについて。この作品は『グッバイ・スター・オン・アーク』とは対照的に、楽曲の方が後付けになって生まれたパターンです。『夢声影画』の設定は正味なところ、どんな創作に対しても後付けできるので、『スター・オン・アーク』を書き終えたうえで私は考えました。「『夢声影画』の濃い部分をボカロ合同の最初に付けたら面白いことになるんじゃね?」と。もちろん人によっては創作の私物化だ! と思われる方もいるかと思います。というか実際そうなる危険性をはらんでいるわけですし。それでも書けてしまった(&思いつきで書き始めて主催に投げたのが7/14の18時なので締め切りブッチという意味ではカスのムーブ。でも主催が出来上がるのより1日早いです。クズの五十歩百歩。)のは……本当になんででしょうね……ともかく、まだ私は『夢声影画』の先生と『ノレア』について書きたいことがあったんだと思います。作品を書くにあたって。こんにちは谷田さん(キタニタツヤ)氏の楽曲が好きだったというのもありますが、聴けば聴くほど「あれ?これって冬コミの本の内容に噛ませられね?」と気づいてしまったので、この楽曲にしました。

②歌詞を落とし込む時に考えたこと

 ①のペースで語っていれば私も疲れるので以下適当に省略します。
 夾竹桃とは猛毒の植物で、花言葉は「注意、危険、用心」です。『夾竹桃』という楽曲は、贖いきれない罪を犯した青年が、罪から逃れ、「やがて神がすべてを均しくならすような、デウス・エクス・マキナ的な救済を求めている」文脈を纏っています。『夾竹桃』には「彼は醜さに苛まれて」「水色装う君を呪った」「互いに穢れたままで」「惨めな彼を赦して欲しいんだ」というように、私はその「罪」を(おそらく本来は性衝動的な罪だったり、人に手をかけた罪だったりするのでしょうが)「『影画』のフィルム(= 二次創作のメタファー)に貴賤を付け、気に入らないシーンをカットしたり燃やしたりするその傲慢さ」と、他人の創作に手にかける罪として落とし込みました。
 ……君、思想強くない?

③書いたときにこだわったシーン

 特定のここのシーン!というのはあまりないのですが。
・書き出しと『夢声影画』とのリンク
・二人は順を追って『影画』を眺めていること、それが彼女の名前が明らかになることで視覚的に認知できるような書き方をしていること
・最後の1ページ使っての表現

 辺りは気に入っています。ほかにもいろいろあった気はしますが忘れました。取り急ぎ『逝夏』の解説はこんな感じです。長々と読んでいただいてありがとうございます。

【グッバイ・スター・オン・アーク】について

①どうしてその曲とキャラを選んだのか

 先述したように、こちらは楽曲とアーティストが先に来ました。
 というのもかなり難産で、最初は暴走PかTwinfield氏で書きたいな、と思っていたのですが、そもそも二つほど問題がありまして。まずどちらのボカロPで書くか問題。次に何の曲にするか問題。初期案では暴走Pなら「カガリビバナ」、Twinfield氏なら「EarsLolipop」や「カシマシビスチェット」や「Step by Step」かな~と考えていました。そのはずなのに選ばれたのは『終点』と『Polymer』。どういうことだよ。
 
まぁそれほどに難航難儀していたのは事実なのですが、そもそも『カガリビバナ』で書くには秤アツコさんで、と決めてたんですよね。ですがどうせ水着来るんだし折本でも作ってそこでやればいいんじゃね?となったので没に。『EarsLolipop』『Step~』なら聖園ミカさん、『カシマシ~』なら柚鳥ナツさんか宇沢レイサさん辺りを考え、歌詞とが曲を眺めてたら『Polymer』という曲が完全に場外から飛んできたわけで。じゃあこれで書くしかねぇ、と腹をくくったのが始まりでした。
 ちなみに今更ですがTwinfield氏の曲と言えばプロ〇カNextの『ONESELF』が一番有名ですが、そもそもブルアカのOSTに入っているようなサウンドが好きな方はこういうフューチャーベーステイストな曲、刺さると思いますのでこれを機に聴いていただけたら嬉しいです。恋する乙女のエレクトロニクスからジャズビートのバチバチな曲まで何でもありますので……
 暴走P氏の『終点』を混ぜようと考えたのは『Polymer』×シグノド先生まで構成が立ってからでした。これについては後述。

 ボカロじゃないので曲名はあげませんでしたが、これらの曲の要素も組み込んではいます。

・『波に名前をつけること、僕らの呼吸に終わりがあること。』 / キタニタツヤ
・『君のつづき』 / キタニタツヤ
・『19歳』 / 帰りの会
・『眠れない夜を君に』 / あたらよ
・『花人局』 / ヨルシカ
・『ノーチラス』 / ヨルシカ

 というかキタニもn-bunaもやまも氏も実質ボカロPだしダメ?
 ダメかぁ……

②歌詞を落とし込む時に考えたこと

 『私だけのスター・オン・アーク』『君だけのスター・オン・アーク』 『2月20日の貴女から3年と1週間後の君へ』の三部作の完結編であり、『スター・オン・アーク』シリーズの最終編として書き上げたので、整合性やストーリーラインなんかは結構考えました。ネタバレ全開で語ると、ギャルゲやエロゲ的な言い方をするなら、シグノド16歳時空の7節が分岐点で、正規ルートが『2月~』でシグレがレッドウィンター卒業でそのまま働き、ノドカが大学生になる世界線……って訳ですね。逆にシグレが働かずに腐っていく世界線(本稿、19歳世界)が7節の失敗なわけで。そのきっかけとなるのが「————」で隠されたセリフ、ってことです。ちなみにですが作者的には『Polymer』の「やめにしよう」という歌詞をそのまま入れようとしていましたが、ここは読み手に想像の幅を広げていただきたかったので消しました。
 「シグレがノドカに対して差し出すことも叶わない手紙を書く」ということについて。これは『終点』でも出てくる要素ですが、どちらかというと『19歳』『ノーチラス』の要素が強いです。それと「もう叶わない」と言っておきながらポストに投函するシーンがあること、シグレの放浪と時間軸、海に向かう描写と想像しうる季節……話の途中で幻想と対峙する場面があるように、この19歳軸の物語は「意図的」に、様々な箇所に対して整合性を疑いたくなるような描写を組み込んでいます。このあたりの受け取り方も含め、読んだ人に読みを委ねたいと思っています。一応自分の中で答えはあるんですけどね。

③書いたときにこだわったシーン

・全体的なポエム表現。これが無いのは自分の文章じゃない、みたいなところあります。もはや。書き終わると不思議なもんで「今回控えめだったな~」と思うのですが、読み返したら相変わらず連発しててバカ笑いました。
・シグレへの日付の無関心さについて。シグノド合同に寄稿した『君だけの~』でも『ふと見た時計の針は、夜明けまで幾許かの時間があることを示していた』というように描写しましたが、シグレにとって、ノドカのいない日々は色あせて見える——それこそ、カレンダーを破かなかったり、ぼんやりと空を眺めて時間なんて気にしないほどに——と思うのです。シグレは、星座や流星群に向かって目を輝かせるノドカのことが好きなのですから。そんなノドカが時計や月の周期、星の動きを大事にしないとは思えないですし、そのあたりの差異を「カレンダーはあの時から止まったまま」という表現で例えたりしています。逆に、16歳時空やラストのシーン。「二日おきに顔を見せてくれていたのだが」「バスが止まるのに、二十秒も経たなかった」「終電まであと一時間」「スマホのカレンダーを見て」というように、ここにきて具体的に時間や日付、月に言及する描写があります。今までぼんやりとした空の動きでしか時間を掌握していなかったシグレが、少しだけ前を向いて行動できている。そういった意図を込め、こういう表現を組み込みました。自分の小説の常套手段でもありますが、こういうささやかな「書く技術」は使っていくうちに身に着くものだと思っているので、もっと他の方が書かれるこういうのもみたいなというお気持ちです。
・途中でシグレが声をかけるトリニティのモブ生徒やラストに出てくる町民について。当初の案では『The name of the flower is __ .』に出てくる少女『秤リナ』や『特徴的な羊駱駝(あるぱか)のキーホルダーを付けた先輩』にしようかと考えていましたが、さすがに内輪ネタが過ぎるなとおもい没にしました。
・「停滞、永遠を望むシグレ」と「進歩、刹那的な美を望むノドカ」の対比について。書いていて思い出しましたけど、『天ノ弱』で書く案も一瞬浮上したのですが没ったんですよね。その名残みたいなのがあるかもしれません。
・「一度断られてから、後日付き合っている」という話の流れについて。断り方も含めて、『早瀬ユウカを文学する。』『独白と競走』を思い起こさせられた方もいらっしゃるかと思います。まぁその通りではあるんですが。都合のいい人間なので一度断ってから、その傷も癒えた頃に改めて、ってパターンが好きなんですよね。個人的な思想ですが、「曇らせるだけなら誰にだってできる。大事なのはそこに発生する葛藤と解決に向けてあがく人間の美学を描写することで、最後にはほんの僅かな救いがあってほしい」と思う人間なので。泥臭く足掻く人間が見せる人間賛歌が大好きです。
・「幸せを願っています」と言いながらポストに投函したシーン。この言葉自体は『終点』から持ってきたものですが、結構気に入っています。そのあとの「魂」の下りも含めて、これを書くために手紙を書かせたみたいなところありますので。
・「レンズ越しの世界は~」という思想について。シグレにはノドカへの失恋を通して、そう思って欲しい(人間の主観は自己中で、どこまで行ってもこの瞳に映る光景は恣意的なものでしかない、という考えに至って欲しい)という勝手な思想を含んでいます。だから彼女はノドカの眺める望遠鏡を横から眺めていた生活から、自分で覗く生活にシフトしてほしい。でも望遠鏡を買ってしまうとあの子の姿が脳裏にチラついてしまう。その葛藤への解として選んだのがカメラのレンズだったわけで、ここで水着秤アツコさんがカメラを持っているのを知った私は激しく頭を抱えました(隙自語)。『私だけの』でも言ったように、望遠鏡ってのぞき込んでいる間は特定の星に注目してしまうので、その周辺だったりすぐ近くにある星とかが見えなくなってしまうんですよね。ノドカにはそうであってほしい一方で、シグレにはアップとルーズを学んでほしい。そういったいろんな事情(と楽曲『ノーチラス』の流れを汲みたかった私情)で、最終的にシグレにカメラを持たせました。

おわりに

 他にもいろいろあった気がしますが、忘れたので思い出したら何か言うかもしれません。あるいはこれ以上何か言わないかもしれません。全ては私の気まぐれなので。
 最後に。ここまで読んでくださった、ということは、少なくとも私の思想や表現のこだわりについて垣間見た方ということでしょう。ありがとうございます。まだまだ自分の表現で気持ちよくなりたいですし、もっと頑張りますので、ぜひ生暖かい目で見ていただけたらと思います。
 参加者の皆様。それぞれの方の書き方だったりだとか、イラストだったりとか。とにかく「味」を感じられる作品ばかりで。最高でした。
 告知動画を作成するにあたり、楽曲を貸していただけたリアンさん。ありがとうございます。あなたが快諾していただけたおかげで、少しでも多くの方に「こんな合同誌があるんだぞ!」と叫び散らかし、多くの方が足を止めるきっかけになれたと信じています。動画作るのも楽しかったですし。
 そして主催。お前は人を頼れ。嘘。嘘じゃないけど、お疲れ様。「14本目生やしていい?」って聞いてこられた時はマジか~~~コイツどうしてやろうか……なんて考えてたけど、無事に刊行されてよかったっす。無茶な希望とかも沢山投げてマジで申し訳なかった。けど、実際作業していて楽しかったし、少なくとも暫くの間は忘れられない合同誌になった思う。

 長々と謝辞を述べましたが、暴れた分と文章量考えたらまだ足りないぐらいです。無限に書けるな、このテキストファイル……
 本当にありがとうございました。また、どこかで。

 白ヶ崎はな

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