子育ての愉快たちを握りしめて10ヶ月
子育て、思ってたよりずっと、おもしろい。
母親になってあっという間に10ヶ月。うっかり地球に降り立ってしまっただけの生命体のような赤子が少しずつ動くようになり、声を出すようになり、なにかを掴むようになり、ものを食べる、歩く、そのすべての間に数え切れないほどの機微があり。それらを余すことなく記録したかったのに、みごとに指の間から落ちてゆく。あの日に戻って記録したいけれど、駆け抜けてきたこの日々をもう一度やる気力はいまのところない。
せめて現時点でのざっくりとしたあれこれをどうにか書き留めたいと思いながら、気づけば10ヶ月。
もともと、こどもかわいい!あかちゃんかわいい!というタイプの人間ではなかった。人並みにかわいさは感じるけれど、ちいさいこどもと同じ視線で上手に話したり遊んだりなんて到底むりむり、でも、だからといって出産を目前に控えたところでそのあたりの不安にまみれたりはしなかった。だって、かわいいか否かはおいといて、産んだらやるしかないしなあ。ただそれだけ。これから始まる育児というスーパー未知の世界、超こわいけど始まったらやるしかないからやるしかない。
そう思って産んだあかちゃんは、やっぱり、「かわいい!」ではなかった。「おお、生命……これが生命、これは生命だな……」という、なんというかイチ生き物を興味深く観察させていただくという感じで、それは10ヶ月経った現在まで絶え間なく続く感情。なんの煩悩もなく、ただ息をして、よくわからない世界でただ生きて、あらゆる未知をどんどん吸収してゆこうとする姿勢は非常に動物的で。それは誕生直後より10ヶ月経った今のほうがより一層際立っているように思う。飲んで出して泣いていただけの10ヶ月前より、食べて動いて泣いて笑って触れて、活動内容のバリエーションがこんなに増えたのにその全てに純粋さしかない。ただひたすらに生命が活動しているようすは心底興味深くて、母としての子へのスタンスがずっと興味深さを起点にしているので、大抵のことがおもしろい。いま最もおもしろいのは離乳食の様子かもしれない。ご飯粒をぎゅっと握りしめ、はみ出たご飯を口に入れ、入ったら一旦ゴールなので握りしめられたおててが開き、ご飯が宙に舞う。テーブルとその下に敷いたシートを見事に散らかしながら懸命に握っては食べ握っては食べ。お顔もおててもおむつも脚もご飯粒まみれ、わっはっはよく食べました!!!!基本面白がりスタイルだからこんな陽気にできるのであって、無理なひとは無理無理の無理であろうこの離乳食、、、、と、散らかるたびに思っている。この離乳食も、つかみ食べ当初は食べ物を食べ物として認識すらしていないものだから、握り潰してぐっちゃぐっちゃにちいさくなり、さらに口に入ることもなく終わる。ああそっかこれが食べられるってわからないもんねえと気付き、それもまた興味深い。あたらしいことをするたびに、なんにもわからず、それがなんなのかわかっていくところからはじまる。なにもわからないいきものだったあの子が、すこしずつ、どんどん、確実に、いろんなことをわかっていく。0歳の子育てはそれのサポート・見守りで、これはものすごく新鮮。それなりに知能がある生き物が、どう発達してゆくのかを見続けられる、これはある意味ものすごい贅沢なことだな。
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10ヶ月検診の問診票に、「ばばば、まんまなどの喃語を発しますか」という項目があり、我が子はいいえだった。それはちょうど気になったいたことでもあったのだけど、お医者さんからはまったくなにも触れられなかったので、ただの発達の進捗確認のための項目だったのだな、特に心配することでもなさそうだ、と元々さほど心配していなかったところにお墨付きをもらった。が、その2日後、突然ばの発音が登場する。おまけに今までずっとハスキーボイスできていた喉が突然の高音を発してかあちゃんびっくり。そんなことできるようになったんだ!!!!!
それから、突然大きな声でしゃべったり、やたらおしゃべりしまくったりする生活が続いている。いろんな発声方法がわかって、こんなふうに声がでるんだ!って面白いだろうなあ、ずっとマイクのテスト中なのだねあなたは、と思いながらきみの声を聞いています。
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うちの子、後追いって特にないなあとのんきに過ごしていたのだけれど、ここにきてだいぶ泣く。追わない。泣く。もしくは呼ぶ。かわいい。
特に外出先が顕著で、子育てサロン等にいくと2m離れたらもう泣く。いるじゃん!目の前にいるじゃん!でも泣く。かあちゃんのこと大好きかよ!そうかよ〜!かわいいな〜〜!!毎日なーーんにも特別なことはせず、近くでのんびり一緒に生活しているだけだけど、あなたはとうちゃんかあちゃんへのすきすきビームが毎日強まっているんだねえ、安全基地レベルがどんどん高まっているんだねえ。子育ての正解なんて全然わからないけれど、それだけラブでいてくれるってことは毎日なんとなく正解っぽいことできてるんだねえ。いいことだいいことだ、うんうん、いっぱい泣いてすごいかわいいよ!抱っこしたらがっちりしがみつくのもかわいいよ!あー生き物!!
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この、煩悩なんてない、ただ懸命に生きている様子を見守る日々はきっとそう長くなくて、これから自我が芽生えて意思表示をされて、こちらの接しかたを工夫したり子の性質をよく考えたり、いろいろなことを考えさせられたりする日々があっという間にやってくるんだろう。それでもなんだか、だいじょうぶなきがする。変わらず、面白がって、子の世界を想像して、時折反省しながら、わたしの身体から登場したこの生き物がレベルアップしてゆくさまを愉快に見守っていきたい。
かーちゃんといっしょに愉快にいきてこ!
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