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コレクティブ 国家の嘘

監督:アレクサンダー・ナナウ
ルーマニア(2019年)
公式サイト
https://transformer.co.jp/m/colectiv/

ルーマニアのドキュメンタリー映画なんですが、えぇぇ、嘘でしょ…という、ものすごい話です…。

映画は、ルーマニアの首都、ブカレストのライブハウス「コレクティブ」で、ライブ中に演出の花火が原因で火災が発生し、それにより27人が死亡、180人が火傷などで負傷する大惨事からスタートします。
この火災そのものも悲惨な出来事なんですが、その後、火傷で入院した人が次々と病院で死亡、その数64名。明らかに異常な事態に、「ガゼタ・スポルトゥリロル」というタブロイド紙の編集長である、カタリン・トロンタンという記者が調査を始めます。
そこに大学病院医師からの内部告発があり、なぜ入院患者が死んでしまうのか、その真実が明らかに…。

実際の事件なので、あまりネタバレも何もないと思うので書いてしまうのだが、病院の手術室などで使われている消毒液が薄められていて、火事を生き残った命に別状のない火傷の患者が、機能しない消毒液で感染症を引き起こし、次々に死亡してしまうという、あまりにも理不尽な理由が判明します。
なぜ薄められた消毒液が使われていたのかというと、もちろん利益の為。
そしてさらに酷いのが、その製薬会社と病院が癒着しているということが、調査の中で明らかになってゆくのだが、それに加えて、そもそもルーマニアの病院に重度の熱傷患者に対応できる病院がないことを知りながら、国外の病院へ患者を搬送しなかった事実も判明し…。

とにかく、あっちもこっちも腐敗しまくっていることが、調査で次々と明らかになってくるのだが、それを調査してゆくのがテレビ局でもなく、大手新聞社でもなく、スポーツ新聞というタブロイド紙なんですよ。
ある意味、どこにも忖度しないでいい、タブロイド誌だから書けたというか(本来ならテレビだって新聞だって書けるはずなんですけど)。

そしてこの映画、それまで与党だった政権が信用を失って、野党に政権が移り、後半から新しい保健省大臣が登場するのですが、そこからがまた見応えがあるんです。
正直、頼りない感じの大臣なんですが、この大問題にちゃんと向き合うんです。この大臣にカメラが密着するんですが、普通ならそんなの許可しないでしょ⁉︎それができてしまうような「公」の人なんです。

ただ、新しい政権になっても、簡単には状況は好転せず…。

というのが映画のざっくりとした内容。
え、これ相棒シリーズか何かですか?というような腐敗っぷりと、話の進み方に、映画に引き込まれるのと同時に、空いた口が塞がりません。
これがドキュメンタリーというところが恐ろしい…。

が、この映画を見ていると、どうしても日本の現状とかぶってくるんですよね。
日本も負けず劣らずの腐敗っぷり。
与党第一党がカルト教団と手を組み、何億という裏金を組織ぐるみで作り、原発は安全と嘘をつき、オリンピックやマイナカードなど隙あらば金儲けをしようとし、被災地には金を出し渋り、外国人(正確にはアジア圏の)を差別し、国民からは金をふんだくる。
うん、負けてない。もしくはクソ度合いでは勝ってる。

そして国民が選挙さえ行けば、こんなクソ議員だらけの政権を変えられるのに、それができないというところも、ルーマニアと全く同じ。

自分の近くのことは見えないものだけど、こうして外国の映画で見たら、どれだけ一部の人間の利益の為に、間接的に命や人生を踏みにじっているかを突きつけられる作品です。
面白いので、超オススメです。

それと最後に、調査報道の大事さも教えてくれる作品でもあります。
週間文春のような存在や、ちゃんと調査取材をする記者の大事さを痛感します。
記者クラブは猛省しろ。

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