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観劇日記‐Medicine

はじめまして、博多在住はなです。
初note観劇日記になりました。その最初の作品が、「Medicine」。先日、博多から名古屋まで出かけて観劇してきました。東海芸術劇場という初めて行く劇場で行われた、田中圭主演の舞台です。

この作品、エンダ・ウォルシュというアイルランド生まれの劇作家による2021年の作品の日本初上演作で、ウォルシュと聞いてこれはぜひ観たい!と思っていたものです。しか~し! 主演が田中圭ということもあり、それはもうすごいチケット争奪戦で、私は最後の最後に追加発売されたいわゆる”見切り席”の販売で幸運にも1枚だけGETでき、ようやく参戦することに(ほんとに見切り席だっけど、舞台にはめちゃ近かった!)。いや、諦めずにサイトをチェックしていてよかったです(;'∀')。

舞台は、とある病院施設の中の、とある部屋。天井には”おめでとう”というガーランドが飾り付けられ、ドラムセットが置かれた不思議な部屋です。登場人物は、どうやら患者だと思われるジョン・ケインと、病院にボランティアだか仕事だかで訪れた2人のメアリー。そしてもう1人、謎のドラム奏者。2人のメアリーは時にロブスターになったり、老人になったり、父になったり、母になったり、少女になったり…とにかく変貌します。

最初はその変貌についていくのがやっとだった観客(わたし)も、次第にその周りの人々や音が、主人公ジョン・ケインのこの部屋に至るまでの人生や、感情を表すパズルのピースになっていることに気付きます。ジョンが語り始める自分の人生は、どうして彼がここにいるのか、ここから出ていけるのか、誰がここにジョンを閉じ込めているのかという大きな謎を含んだまま。そのまま物語はひとつの部屋の中で進んでいきます。

1時間35分の舞台は、休憩なしのノンストップ。謎めいた前半からジョンがここに来た理由が分かってからの中盤以降は、感情の嵐が舞台に吹き荒れます。”ちょっと変わった少年”と思われていたジョンが最後の最後に感情を爆発させる瞬間が最大の山場で、もうそのときにはジョンの感情が自分に乗り移っているかのようで、号泣してしまいました。

1時間35分という凝縮した舞台

作品名になっている「Medicine」は薬。この舞台では一瞬だけそのタイトルに関わるシーンが出てきます。そして、そのタイトルに関わる重要な言葉として「食事」という言葉があり、この2つの言葉がジョンのこの場所での生活を支配する大きな存在だと気付かされて、愕然としました。

ちょっと変わった少年は、果たしてジョンだけなのか。どこにでもいる普通の少年が、ちょっと変わった思いを持っただけで、この大きな部屋の中に閉じ込められてしまうようなことはないのか…。いや、そもそも”ちょっと変わった”って、”普通だと思っている人”と、ちょっと違うだけなのではないか…。

1時間35分という短い上演時間の中に凝縮されたウォルシュの点滴のような作品は、なんかすごく濃い。濃かったなぁというのが実感でした。しかし、未だ謎なのは劇中で使われていた楽曲の意味。EW&Fの「セプテンバー」など1960年代・70年代の楽曲が使われているのは、舞台設定がその時代を指しているということなのでしょうか。いや、待てよ? リトル・マーメイドは1989年作だったぞ(ロブスターの謎)?? ということは曲が流れているのはその時代で、ジョンがいる今の時代は1989年以降ってこと? なるほど音楽を時間設定の小道具にしているのか?

そんな細かいところを後から咀嚼できるのも、舞台の愉しみのひとつですよね。

いや、しかし。田中圭の熱量、すごかった!

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