【詩】終焉と

終わりはいつも音を立てて教えてはくれない
いつの間に走り出した運命に
気づいた時には少しだけ手遅れで
まるでさっきまで紅かった林檎の実が
手のひらの上でサラサラと
砂になって
砕け
崩れ
指のすきまをすり抜け落ちゆくように
心の臓から流れ出す血液が
急激に冷えて
内側から凍てつくように
確かにあったそれが終わっていくのを
ただ
指をくわえて見ているしか出来ないような
圧倒的な絶望を孕んで鐘を打ち鳴らす
怯んで手を離せばもう戻らない
切れかけの赤い糸を
決して放してしまわぬように
首に巻きつけて君を見る
その茶色い瞳にまだぼくは
映っているのか
のばせない腕がもどかしい

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