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ラーメン屋でスタッフの女の子がちょっとしたことで注意されていた。本当に些細なことだったし、店長も声を荒げることなく「次は気をつけて欲しい」ということを静かに伝えた程度だ。それでもその女の子は注意されたことがよほどショックだったようで、それからはおどおどと店長の様子を伺うようになった。 それからぼく自身もその女の子のことが気がかりになって顔を上げて見てみると大学の時に交際していた人に似ていた。もちろん、マスクをしていたから顔の全部は見れていないけれど、それでもいつも不安そうな
ねばついた秋の夕暮れ。君はいつもと同じ黄色いチャック・テイラーを履いて縁石の上を両腕を上げてバランスを取りながらこう訊くのだ。 「最近どう?」 ぼくたちはもうほとんど毎日同じ会話をする。右側から差し込む夕日は建物の間をすり抜けて君の横顔をなぞったり、黒く塗りつぶしたりした。 「最近も何もないよ。昨日と同じ今日を生きた」 昨日と同じ返事。君はそんなぼくをちらっといちど見ただけで、また前を向いて両腕でバランスを取るのだ。 ぼくらの髪を黄金に染めていた黄昏はいつしか暗闇へ