秒速5センチメートル再上映感想〜自分語りを添えて〜

はじめに

どうも、ぱふです。今回は「秒速5センチメートル」リバイバル上映を見た感想をつらつら書いていこうと思う。
※※※以下の内容はネタバレを含みます※※※

秒速5センチメートル

皆さんは「秒速5センチメートル」という作品をご存知だろうか。「君の名は。」や「天気の子」、最近だと「すずめの戸締り」で有名な新海誠監督が2007年に公開した作品である。
この作品、厳密には「桜花抄」、「コスモナウト」、「秒速5センチメートル」と言う3話の作品をまとめて「秒速5センチメートル」として扱われている。
そんな「秒速5センチメートル」だが、この春「桜前線上映」と題し、リバイバル上映が行われている。
作品の詳しい概要やリバイバル上映の詳細はもっと綺麗にまとめているサイトがあるだろうから、気になる人は調べて見てほしい。

早速自分語り

細かいのあらすじに触れる前に、早速自分語りをしていこうと思う。
僕が初めて「秒速5センチメートル」という作品を見たのは、中学3年生だかそれくらいの時期で、感想としては「桜花抄」は結構いいなぁ、「コスモナウト」はよくわからん、「秒速5センチメートル」はハッピーエンドじゃない作品もええなぁ、くらいのクッソ浅い感想しかなかった。
そのため、今回リバイバル上映を見るまでは特に見返すこともなかったし、なんなら新海誠監督作品としては言の葉の庭の方が好きだった位である。
そんな「秒速5センチメートル」を約10年経った今、映画館で見たら当時とは全く違った印象を受けた。
端的に言うと、自分が人生で大切に宝箱にしまっていた思い出みたいなのが表現されすぎている。いやもうこの話、俺の思い出を元に作った?ってくらい自分の人生と重ねてしまって、気持ちが痛いくらいわかる。
何をそんなに騒いどんねんって話だろうから、早速感想に入っていこうと思う。

「桜花抄」

あらすじ

「桜花抄」の端的なあらすじはこんな感じ。
主人公遠野貴樹とヒロインの篠原明里は小学校時代、お互い親の都合による引越しが多かった共通点もあり、仲良くなり、お互い思いを寄せる関係に。
その後、同じ中学校に進学予定だったが、明里は親の都合により、栃木の中学校に進学することになる。(貴樹は東京の中学校へ進学)
離れ離れになった後、2人は文通によるやり取りを始めた。
そんな関係が1年ほど(厳密には手紙のやり取りが始まるまで半年あるため、そこから考えると半年)続いた後、今度は貴樹の親の都合により、鹿児島に引越すことに。
貴樹が引越す前に会うことに。
待ち合わせは3月2日19:00、明里の最寄り駅の待合室。
貴樹は学校終わりに電車に乗り、明里の元へ向かう。
不幸なことにその日は大雪。
大雪による影響で、途中で電車が止まってしまい、本来3時間程で着く予定だったところ、到着が23時になってしまう。
申し訳なさからもういっその事、帰っていてくれと思いながらも目的の駅に降り立つ貴樹。
その待合室には明里の姿が。
無事に再開できた2人。
ようやく思いが通じ合い、桜の木の下で唇を重ねる。
近くの畑の小屋の中で色んなことを話しながら毛布にくるまり、夜を明かす。
翌日の朝、貴樹は動き始めた電車に乗り、帰路に着く。必ず手紙を書く、電話もする、そう約束して。

とまぁ、こんなあらすじな訳だが、筆者の文章力のせいで感動の作品が意味のわからんものになってる気がするので、その辺は是非作品を見て欲しい。

感想

感想に入る前に、皆さんは忘れられない記憶、というものはあるだろうか。僕にとってそれは初恋の記憶である。
細かいことは今更書くつもりもないが、親の反対だか何だかで別れたり復縁したりしたこと、初めて両思いだとわかったメールを読んだ日のこと、門限を破り初めてキスをして帰って親にしこたま怒られたことは今でも鮮明に覚えているし、好きだと伝えるために走って会いに行ったのは後にも先にもあの時だけだろう。
そう、まさに「桜花抄」で描かれてる遠野貴樹そのものである。作中だと物理的距離という障害を乗り越え、ようやくお互いの思いが通じた時の気持ち、初めて唇を重ね、好きだということがどういうことなのか理解した時の気持ち、全部分かりすぎる。
この作品でさらにポイントとなるのが、大雪による遅延である。
いや、それ以前にそもそも東京〜栃木感の距離感に対する感情か。
少し話が脱線するが、自分は大阪に住んでいた中学生の頃、とある作品の聖地巡礼のために滋賀まで行ったことがある。乗り換え3回、約2時間の旅であるが、当時の自分にとってはめちゃくちゃ大冒険だったし、移動中はずっと不安で乗り換えのメモを見てた覚えがある。その後、その道は大学までの通学路となり、自分にとっては何気ない距離感に変わってしまうのだが、それはまた別の話。
作品の話に戻り、中学進学後の貴樹と明里の距離は東京〜栃木の約3〜4時間。正直、今の自分にしてみれば、車もあるし、電車だとして映画1~2本見てれば着く距離なので、すぐそこである。
でも当時の自分や貴樹にとってはこれは壮大な距離なのである。
加えて、現代とは違い、乗換案内をその場で検索することも出来なければ、携帯で相手と連絡を取ることもできない。
それなのにも関わらず、明里に会いに行こうとした勇気は計り知れないものがあっただろう。
そんな中起きてしまう大雪による遅延。
予定より遅れる電車、本来乗ろうと思っていた電車に乗れない不安、でも原因は大雪。誰が悪いわけでもなく、誰を責めれるわけでもなく、ただただ待つことしか出来ない。
過去の自分は特に問題なく、予定通り行けたのにあんなに不安だった。
それなのにも関わらずさらにこの仕打ちである。
さらにさらに、駅で電車を待っている際、明里に宛てて書いた手紙が風に飛ばされて無くしてしまう。
いや、もうその時の貴樹の気持ちを考えたら心臓痛いわ。
「たった一分がものすごく長く感じられ・・・
時間ははっきりした悪意を持って、僕の上をゆっくりと流れていった。
僕はきつく歯を食いしばり、ただ、とにかく泣かない様に耐えているしかなかった。」って。
いや、普通に泣くて。
その状況で駅でもないところに停車して2時間???
不安だし、もう遅くなっちゃったから会いたいけど帰ってて欲しい気持ちも分かるし、何回も何回も時計確認して、でも時が過ぎるのを待つしかなくて。
気持ちぐちゃぐちゃだったろうな。
駅着いて、明里を見つけたあとも抱きつくとかじゃなくて、静かに「明里…」って。
その後の明里が作ってきてくれたお弁当を食べるところだったり、キスをした時の貴樹の気持ちだったりもめちゃくちゃ当時自分が感じたことと重なるんやけど、さすがにその辺は書いててもキモいので一旦割愛。

そんなこんなで、要約すると自分の忘れられない記憶と遠野貴樹がめちゃくちゃ重なって心臓痛かった。

「コスモナウト」

あらすじ

舞台は貴樹が引越した鹿児島の種子島。
中学2年で引越してきた貴樹に思いを寄せる澄田花苗という少女視点でのお話。
時はあれから約5年が経った高校3年生。
高3ながら進路も決まらず、趣味のサーフィンもスランプに陥り、貴樹にも思いを伝えれずにいる花苗。
しかし、貴樹と話す中で、悩んでいるのは自分だけではないとわかり、ひとつずつ出来ることからしていくと決心し、挑んだサーフィン。
ついに半年のブランクを乗り越え、波に立つことができた。
それをきっかけに、今日思いを伝えなければいつ伝えるんだと決心する花苗。
2人での帰り道、思いを伝えようとするも、貴樹の無言の圧力を感じ、伝えることが出来なかった。
それでも自分を気遣ってくれる貴樹の優しさが辛く、泣き出してしまう。
そしてその時、打ち上がったロケットを見て、貴樹は自分のことなど見ておらず、遠くの誰かを見ていることを完全に悟り、告白することを諦める。
貴樹へ思いが通じることはないとわかったものの、それでも貴樹のことがどうしようもなく好きだと思い、泣きながら眠りつく…

感想

よし、ちょっと待て。
花苗と貴樹の話は一旦置いといて、明里とどうなってん!?!?!?!!!
手紙出すって言ってたよね??電話するって言ってたよね???
明確な描写はないので、何かあった可能性も0ではありませんが、あえて断言しましょう。
この2人の間には何も無かったのです。
そう、所謂自然消滅というやつです。
エンディングで少しその空白期間の描写があったので、補足しておくと、恐らく中学生の間くらいは手紙でのやり取りはあったと思われます。貴樹は宛先のないメールを打つ癖がある、という描写から、恐らくメールでのやり取りも多少あったのでしょう。
ですが、その後は自然消滅したのでしょう。
なぜかって?
僕がそうだったからですね。
前章で書いた忘れられない記憶の結末。
そう自然消滅です。
明確な何かがあって別れに至ったわけではない、でもだからこそ記憶に残り続けるというか、引きずり続けると言うか。
いや、自分の場合はギリ別れ話したか。
そんなことはさて置き、明里への思いを断ち切れない貴樹。
そんな貴樹に思いを寄せてしまう花苗。
叶わない恋。
なんなら初めからスタート地点にも立ててなかった。
いやもう切なすぎる。
登場人物の中で1番幸せになって欲しい。
またしても自分の過去の話をすると、そんな初恋の後、高校生の頃に付き合った子がいましてね。
いや、自分の場合は貴樹と違ってちゃんと吹っ切れて好きだったと言える自信はある。
自信はあるものの、相手視点で見るとこんな感じだったのかなぁとも思ったり思わなかったり。
そんなわけもあり、自分の人生において、もう交わることはほとんどないんだろうなと思いつつも、世界のどこかで幸せになって欲しいって思ってたんやけど、その子と花苗が重なりすぎて。
花苗もその子も公園で目が合った犬が全力で撫でられに来てくれる呪いにかかればいいのに。

「秒速5センチメートル」

あらすじ

桜の舞う季節。
東京の大学へ進学後、社会人になった貴樹。
未だに心の底に明里への思いが残り続ける。
そのせいか、3年付き合った彼女にも、「メールのやり取りを1000回しても、心の距離は1センチくらいしか近づけなかった」と言われ、振られてしまう。
IT業の激務も重なり、心が疲弊して仕事をやめる。
一方で明里。
明里は結婚することになり、それと同時に上京。
踏切ですれ違う2人。
今振り返れば、相手もきっと振り返ると確信する貴樹。
電車が通過。
踏切の向こう側でこちらを振り返る姿はなかった。

感想

いや、このずっと心の隅に残り続ける気持ちはちょっとわかる。
よく男は名前を付けて保存、女は上書き保存とか言うけど、それを物の見事に表してるよな。
ほんで何故か自分もIT業に就職して、上司がパワハラ上司ときたからね。
3年半付き合った人にも振られるし。(原因は完全に別やけど)
心がすり減るのもわかる。
過去の思い出が綺麗に見えるのもわかる。
すれ違う時に、相手もそうなんだろうなって振り返るけど、相手は別にそんなことなくて、自分との思い出なんかカスほどにも残ってないんだろうな。
自分にとってはそんな思い出でも相手にとっては意外とそんなもんなんよ。
頑張って生きような、貴樹。
ま、自分の場合、時代や結末がちょっと違うので、貴樹ほどのバッドエンドにはなってないわけですが、その辺は飲みに行った時の酒の肴にでもしましょうか。

あとがき

そんなこんなで、自分の人生を投影しまくった「秒速5センチメートル」という作品。
あの頃の経験が良き思い出に変わった今だからこそ、めちゃくちゃ刺さったような気がします。
その他にも、作品名にもなってる「桜の花の落ちるスピード。秒速5センチメートル。」みたいな印象的なセリフだったり、曲だったり、今回触れてないけど語りたいポイントもいっぱいなので、是非1度ご覧になってみてはいかがでしょうか。

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