切り取られたツナガリのつながり #ランダムおひねり
「蛍光ペンってさぁ、長い年月経つとかなり変色するんだねぇ」
こんな、単なる感想を口に出せば「え、まじ? あ、ほんとだ。元これ何色? んー?? 水色?」とすぐに反応を返してくれる相手がすぐそばにいるって、ものすごい幸せなことだよなぁ、なんてしみじみしてしまう。
「そう、水色。よくわかったね」
「ほら、何となく残ってる、青さが」
「確かにそうだね……」
言いながらパラパラと、はるか昔のプリントをめくる。
大学時代の、プリント
あの頃は『こんなもん全部覚えられるわけないじゃん』と叫んでいたはずなのに、今では当たり前のように仕事で使いまくっている内容がそこには記されていて、おそらく初めてその内容を知ったであろうじぶんが使い慣れない言葉を辿々しく初々しく書き留めている様がみて取れる。こんな時代も、あったねぇ、そういえば。
あの頃の自分が、今の私をみたらどう思うだろう、なんてめちゃめちゃありきたりで普遍的な問いかけを自らに向けてしまうにはこれ以上ないタイミングだった。
けれど
そのプリントの下の方から、過去の自分の叫びが
今の自分に届いてしまった
届いてしまったからにはそんなことは言ってられなく、なってしまった。
「うん、離婚したのは間違ってないね」
そう、口に出してしまったら横にいた娘がハッとしたような顔をして、私をまじまじみてきた。
「ママ。ママにとって間違ってないんだったら、ママにとっては正解なんだと思うよ」
……まだまだ高校生なのに、この子は時々すごい言葉をくれる。
「なにみたのよ。続き?」そう言って覗き込んできた娘も、その言葉をみてしまった。青臭くて、暑苦しくて、土臭い、ちっちゃいのに荒っぽい文字で書かれた言葉。
「言葉の通じる世界に生きたい」
「……ママもずっとそうおもってたの?」
「うん、そうだね。ずっとおもってたし、お父さんと一緒にいるのは、辛かったよ」
「……そっか」
あれ、今この子「も」って言ったね
「お母さんも」って
過去はときどき、粋な計らいを未来でやってのけてくれることがある。
そうか、この子もそうなのか。
そうじゃないかと、おもっていたけど。
自分の過ちと、自分の正解と、重ねてきた時間を一気に受け止めたように思えてクラクラした。
そうか、そうなのか
外には、雨が降り出していた。
サポートいただけたらムスメズに美味しいもの食べさせるか、わたしがドトります。 小躍りしながら。