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ライブハウスに恋をする

ライブハウスに、ライブに行かなくなって半年以上が経った。元々月に3〜4回ほどのペースでライブへ行っていた私だったけれど、今の私は元気だし、ダイエットも成功したし、貯金もできたし、愛しい恋人との時間もしっかり作ることができている。

心のどこかでぽっかりと空いてしまった隙間に気づかないように生きている。

配信ライブというものも何本か見た。
音楽だって相変わらず、タワレコでCDを購入したり、サブスクも、YouTubeだって聴けるから聴いている。 けれど、大好きなバンドの配信を見ても、ずっとずっと、心のどこかで隙間が空いて、そこには生暖かい嫌な風が吹くのだ。

生で観ることには敵わないと知ってしまったのはいつだろう。好きなバンドを地下のあの暑くてジメジメした暗い空間に観に行って、涙したあの日。対バンしているバンドに感動して、その場でCDを購入した日。転換のBGMがブルーハーツで泣いちゃった日。大好きな友達と大好きなバンドを見て、その子の背中越しに見たそのバンドの光る姿に泣いちゃった日。ライブハウスの帰り道に、大声で歌って駅まで歩いた日。

他にももっともっと、話せば終わらないくらいの思い出と、価値があったように感じる。

生じゃないと、と思うのは、その配信ライブでは得られない何かが好きなバンドが演奏する時間以外にもあるからだと思う。もちろん好きなバンドを生で観るあの熱量も大好きだと思うのが大前提で。

鼓膜と脳と心と、全身で音楽というものに、恋をしている。


ドライブ用だと意気込み作っているプレイリストも、なんとなくどんよりしてしまう。
名曲はずっと名曲で大好きだけど、ライブハウスで初めて観るバンドで初めて聴いた曲に感動する、あの輝きに勝てない時もある。

ライブハウスだけじゃない。音楽フェスだってそうだ。2018年のお台場、MUROFESで見た私の一番好きなバンド、THE BOYS&GIRLSは
暮れていく空をバックに歌っていた。二度と忘れない「セットリスト変更だ」の言葉。あの日のノンフィクションの約束の歌い出し。


そんな輝いていて汚くて、暗いしタバコ臭いし、音でっかいし。そんな、そんな空間に恋をしていた。


ライブハウスは再開しているのも知っている。
私もとっくに近場に旅行とかお出かけとかごはんに行く。だけど、ライブハウスにはいけない。きっと私以外にもそういう人は居ると思う。

感染症の影響で無くなったライブハウスを何件も見た。今あるライブハウスだって、きっと経営状況は良くないだろう。
大いに分かった上で、ライブハウスに恋をしている自分は何もできないのだ。


愛するライブハウスのことを考えて、今日もあの日のステージを思い出して眠ろうとする。
また早く、あの輝きに満ちた日々が帰ってきますように。

(写真は世界一大好きなライブハウス、下北沢近松の入口です。)


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