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セリフのないお芝居

 箱根甘酒茶屋さんにて、電気を使わないコンサート『箱根八夜』を運営させていただいてから、早いものでもう5年になります。毎回趣向を凝らし、アレンジにアレンジを加えてまいりました。そんな演目の中に、芥川龍之介原作の『蜘蛛の糸』があります。

 『蜘蛛の糸』は、根っからの罪人『カンダタ』が地獄から這い上がろうと、天から降りてきた蜘蛛の糸を辿って天国に向かうのですが、下からついてくる他の罪人達を見つけ、我が身可愛さから糸を独占し、結果糸が切れ、再び地獄へ落ちてしまうという、戒めの物語です。

 このお話は、箱根阿弥陀寺の水野御住職の琵琶とうちのかみさん広瀬玲子の大型布の舞台美術作品により上演され、その後、再上演にあたり新しい演出として『6メートルの巨大布のお釈迦様が悠々と昇る』という案が誕生しました。

 その時がまさに台風19号の上陸で、箱根にも甚大な被害がもたらされてしまいました。開催さえ危ぶまれる中の準備となり、それを念頭に置いた演目ではなかったので、急遽、この戒めの物語のどこかに『希望』を感じられるテイストを持たせるようと、是が非でも、無事にお釈迦様を天に昇らせるという目標が生まれました。

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 私はギタリストの中村アキラさんと前半に演奏で出演するのですが、このイベントではなんと、主人公『カンダタ』を私の一人芝居で行うこととなりました。選ばれた理由は『罪人顔』であるということ、それ一点でした。

 このイベントではコミカルなテイストの『神崎与五郎 東下りの詫び証文』にも出演をさせていただいておりますが、今回は笑うところのない真面目なお芝居です。その上、ナレーションに合わせて動く『無言劇』のため、演者にはそれなりの説得力が求められます。ランプとロウソクの暗がりの中で見る舞台美術中心のお芝居ですので、そう演技にシビアなクオリティーは入りませんが、やはり、これは荷が重かったですね。その上、SE(効果音)もハーモニカで出しながらですから。よろしければ、イベントの記録動画をご覧ください。