現代会社員ホラー「呼んだのだあれ?」
ある日、私宛にチーム内ミーティングの招待が届いた。
詳細は書いていないが、業務で使っている顧客管理システムの運営方法についての会議らしい。私はそのシステムにほとんど絡んでいないのだが、いずれ使い方をマスターしてほしいと言われていたから、何かレクチャーがあるのだろう。
その会議は、私を含め5人にスケジュールが送られていた。
会議当日。
時間になり、ZOOMの会議室に入ると、人が集まり始めていた。しかし、開始時間になっても参加者の一人である課長がこない。どうやら前の会議が長引いているらしい。課長が来るまで黙って待つ。みなそれぞれの作業をしている。
待っている間に、ある女性メンバーの一人のところで電話が鳴り始める。彼女はマイクをオンにしたまま席を離れ、電話に出る。お客様に対応する声がモニター越しに聞こえてくる。
ZOOMを小窓にし、作業をしながら電話応対が続いている音声を聞いていると、ようやく課長が会議室に入ってきた。
「遅くなりました」
課長が入ってしばらくすると、女性メンバーも電話対応を終え、画面の前に戻ってきた。
「もしかして私待ちでしたか?すみません」
ようやく招集メンバーが全員揃った。
しかし、口を開くものは誰もいない。
まるで、誰かを待っているように。
まだ誰かいたっけ?と思いスケジュールを確認するも、参加予定者は今いるメンバーと一致する。
いったいどういうことなのだ。誰を待っているんだ。
みんな画面を見つめたまま動かない。そのまま1分か2分経っただろうか。
あるメンバーがようやく口を開いた。
「あの……この会議って、課長の招集という認識なんですけど、あってますか?」
「え?」
急に名指しされた課長から戸惑いの声が上がる。少しして、
「確かに私が主催者になってますね……全然頭づくりができてないや。なにをやる場でしたっけ?」
そこでまた別のメンバーが助け船を出す。
「システムの運用を決めるためにそもそも業務フローをどうするのか決めないといけないっていう話でしたよね。」
「えーっと、じゃあフローを一つずつ考えていきましょうか」
こうして、課長がその場で考えてフローを書き出していくだけの会議は始まったのであった。
ねえ、この会議私いらなかったよね。
誰も準備していない無駄に人数の多い会議に呼ばれるなんて、恐怖しかない。
呼んだのだあれ?(課長です)
(どみの)