ベリーショートトリップ〜たまにどこかに行っている〜
1 波紋に委ねて
我れは行く。
5月上旬。
強い日差しが照りつけ皮膚がヒリヒリするが、吹き付ける風は冷たい。
海から押し寄せる波と、海へと注ぐ大河の水がぶつかりあい、白波を立てながら、ゴーゴー唸るような音が鳴っている。ここは阿武隈川の河口。
護岸には、むき出しになった瓦礫の隙間にへばりつくようにして、総状の花びらを連ねた濃い赤紫色の花が所々に群生している。川中の照り返す光の中にヨットサーフィンをする人の小さなシルエットが見える。川岸には一定の間隔を保ち竿を構える釣り人た