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学生アルバイトの税金について

みなさんこんにちはこんばんは.某大学院の修士課程に在籍しているはむです.

今年度 (2022/01-2022/12) 支給分の労働期間が残り 3 ヶ月半 (2022/11 まで) になり,学生アルバイトの方たちはそろそろ扶養を超えないように調整を始める方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は,扶養からはずれたらどうなるのか,どれだけ税金が増えるのかを説明していきます.

所得税の計算や源泉徴収票の見方も知りたいという方は全部読んでいただき,扶養を外れるといくら稼がないとプラスにならないのかすぐに知りたいという方は,「扶養から外れるとどうなるか」の章以降をお読みください.また,その場合でも「重要!」の章は必ずお読みください.

扶養とは?

学生アルバイトの方は親から「扶養を超えるな」と言われていると思いますが,まずはこの「扶養」について説明します.

「扶養」とは正確には「扶養控除」というものです.これは,所得税や住民税の計算をする際に,課税所得から控除 (= 引かれる) ものです.扶養控除の区分には,「一般の控除対象扶養親族」「特定扶養親族」「老人扶養親族」があり,「老人扶養親族」は同居しているかどうかでさらに 2 つに分けられます.この内,学生アルバイトに関わる区分は「一般の控除対象扶養親族 (以降,一般扶養控除)」と「特定扶養親族 (以降,特定扶養控除)」なので,この 2 つの区分について説明します.

「一般扶養控除」はその年の 12/31 時点で 16 歳以上,「特定扶養控除」はその年の 12/31 時点で 18 歳以上 23 歳未満で,両方とも年間の合計所得金額が 48 万円以下 (令和 4 年 8 月 15 日時点) の場合に適用されます.控除額は所得税の場合,「一般扶養控除」が 38 万円,「特定扶養控除」が 63 万円で,住民税の場合は「一般扶養控除」が 33 万円,「特定扶養控除」が 45 万円となります.扶養親族が複数人いる場合は人数分の控除が適用されます.

ここで,私のような 23 歳以上の扶養対象者は少ないと思うので,「特定扶養控除」の方を用いて計算します.「一般扶養控除」では,所得税の場合は 63 万円を 38 万円に,住民税の場合は 45 万円から 33 万円に直して計算してください.

ではまず,扶養に入っている方 (父親か母親) の源泉徴収票を用意してください.本来は今年分のものを用意したいのですが,まだ今年は終わっていないので昨年分のものを用意します.ここでは,扶養に入っている方の所得と控除額が昨年と今年で同じものとして計算します.

源泉徴収票

先に所得税の計算をするために,源泉徴収票から見ていきます.ここで重要となるのは,「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」の 4 つです.

支払金額

「支払金額」というのは,基本給や残業代,ボーナスや手当などの課税対象となるいわば「年収」です.通勤手当などの非課税対象のものは含まれていません.

給与所得控除後の金額

「給与所得控除」とは給与所得者に適用される控除で,国税庁 HP に掲載されているものを用いて計算します.

給与所得控除額 (国税庁 HP より引用)

この「給与所得控除額」を「支払金額」から引いた金額が「給与所得控除後の金額」になります.

所得控除の額の合計

「所得控除の額の合計」とは,給与所得控除以外の控除額の合計です.一般家庭では,「医療費控除」「社会保険料控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」「配偶者控除」「扶養控除」「基礎控除」が関係してくると思います.詳しくは,国税庁 HP を見てください.

源泉徴収税額

「源泉徴収税額」は 1 年間に収めた所得税の金額で,毎月の給料から自動で引かれている額の合計です.所得税は国税庁 HP に掲載されているものを用いて計算します.

所得税額 (国税庁 HP より引用)

源泉徴収税額は会社側が毎月の給料から計算して引かれており,計算した所得税額が源泉徴収税額よりも少ない場合には確定申告で戻ってきます.

所得税

では,所得税を計算するために,課税所得額を計算します.課税所得額は,

課税所得額 = 給与所得控除後の金額 - 所得控除後の額の合計

の計算式で計算されます.この課税所得額に上記表の税率を掛けて控除額を引いた額が所得税となります.

長くなりましたが,所得税に関する扶養の件をまとめると,扶養を超えた場合,「特定扶養控除」の 63 万円分が課税所得に追加されます.したがって,課税所得が 63 万円追加されても,上記表の課税される金額の範囲,つまり税率が変わらない場合は,親の所得税負担額は「63 万円 × 税率」分だけ増えることになります.仮に,20% の税率であったとすると,63 万円 × 20% = 12.6 万円の増額になります.一方,63 万円の増額によって,課税される金額の範囲が 1 段階上になってしまう場合,63 万円だけではなく課税所得全体に税率の上乗せ分がかかることになります.例えば課税所得が 650 万円である場合,税率は 20% であるので,所得税額は 650 万円 × 20% - 42.75 万円 = 87.25 万円となりますが,63 万円の増額があると 713 万円となり,税率が 20% から 23% に上がります.したがって,713 万円 × 23% - 63.6 万円 = 100.39 万円となるため,13.14 万円の増額になります.大して金額が変わりませんが,これは税率の分岐点で不公平にならないように控除額で調整されているためです.

住民税

住民税は,課税所得に対して税率 10% を掛けたものとなります.均等割というものもありますが,これは所得に関係なく課税されるため,扶養控除の金額に関係しません.もちろん均等割も非課税になる場合もあります.したがって,扶養から外れることによる住民税の増額分は 45 万円 × 10% = 4.5 万円となります.

扶養から外れるとどうなるか

今までの計算結果をまとめます.簡単のために,税率 20% でかつ扶養から外れることによって税率が変わらない場合を考えますが,所得税 12.6 万円,住民税 4.5 万円が増額され,合計で 17.1 万円の税増額となります.したがって,扶養から外れると,103 万円 + 17.1 万円 = 120.1 万円を稼がないと家庭全体ではマイナスになってしまいます.

住民税の納付義務は,自治体によって境界が異なりますが,横浜市の場合,所得が 55 万円 (基礎控除を合わせると給与収入では 100 万円) を超えると納付義務が生じます.ただし,学生の場合は勤労学生控除の 26 万円によって所得が 81 万円 (給与収入が 126 万円) までは納付しなくて良いです.

また,所得税の納付義務も,所得が 55 万円 (基礎控除を合わせると給与収入で 103 万円) を超えると納付義務が生じます.ただし,学生の場合は勤労学生控除の 27 万円によって所得が 82 万円 (給与収入が 130 万円) までは納付しなくて良いです.

ちなみに社会保険料も給与収入が 130 万円を超えると納付義務が生じるので,覚えておきましょう.

したがって,扶養から外し,かつ税金を納めないようにする場合には,120.1 万円以上 126 万円未満の間で稼ぐ必要があります.しかし,126 万円稼いだ場合でも,扶養を超えることによる家庭全体のプラスは 5.9 万円しかありません.つまり,103 万円を超えた 23 万円を稼ぐために,時給 1,200 円のアルバイトをすると仮定すると,約 191 時間働く必要がありますが,191 時間働いたとしても 5.9 万円しかプラスにならないため,103 万円を超えた分の時給は実質 309 円になります.こうなると,このまま働くのはさすがにバカバカしいですよね?なので,扶養の範囲内である 103 万円以内で働くことが重要になります.

ちなみに 126 万円や 130 万円以上稼いでも良いですが,勤労学生控除の範囲を超えてしまうため,自分にも所得税と住民税,社会保険料がかかってきます.さすがに面倒臭いので計算しませんが,所得税 5%,住民税 10% と均等割,月収によって異なる社会保険料を考慮すると 160 万円近く働かないと家庭全体にとってはプラスにはならないんじゃないかなと思います.しかもこれは損益分岐点なので,前述のように時給 309 円のような状態にならないためにはもっと稼ぐ必要があります.そのため,たくさん働いて稼ぎたい方はこれを頭に入れておく必要があります.

長くなりましたが,扶養から外れ,かつ自分の税金がかからないように働くと,5.9 万円しか家庭全体にプラスにならないのです.扶養を若干超えてしまいそうな場合には微調整で済みますが,余裕で扶養を超えてしまいそうな場合には親と相談し,アルバイトのシフトを調整して扶養の範囲内に抑える代わりに扶養を超えた場合の増税額分程度をお小遣いとしてもらう方が良いでしょう.

重要!

みなさんは 103 万円以内であれば税金がかからず,親の扶養も外れないと思っているかもしれませんが,それは一部誤りです.扶養の範囲と所得税の納付義務に関してはあっているのですが,住民税に関しては 100 万円前後から納付義務が発生します.これは前述のように自治体によって変わりますが,横浜市では所得が 55 万円 (給与所得では 100 万円) を超えると住民税の納付義務が発生します.したがって,100 万円以上稼いでしまった場合には勤労学生の申請と確定申告をする必要があるため,注意しておきましよう.

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