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【タイドラマ】なぜ何回観ても『SOTUS』に胸焦がれるのだろう

(ストーリーにも言及しているので未視聴の場合は自衛してください)

タイドラマの中でいちばん何が好き?と聞かれたら、なんと答えるだろう。2getherも大好きだし、Lovely Writerも捨てがたい。Theory of Loveも相当に好き。だけどやっぱり最終的には『SOTUS』に帰結するような気がします。

『SOTUS』はタイBLの金字塔とも呼ばれ、昨今のタイBLブームの火付け役のようなポジションとして知られているようです。その人気は、制作のGMMTVの経営難を救ったとか救ってないとか。続編の『SOTUS S』も作られ、何年経っても人気の作品です。
あらすじはあらゆるサイトで紹介されているので詳しくは割愛しますが、大学工学部の新入生教育プログラム、通称「SOTUS」を通じて、アーティット先輩とコングポップ後輩が少しずつ愛を育んでゆく・・・という感じでしょうか。

わたしは何度も観ていますが、観るたびに胸を焦がされています。ドキドキするラブシーンが多いわけではないし、ふたりがいわゆる両想いになるまでに時間がかかるので、BL手練れ勢には物足りないかもしれません。それでもどんな刺激的な作品よりも、観るたびに胸が「うぐぐぐぐぐ・・・・」とうづくのです。それはなぜか。

まず、どこまでもまっすぐなコングポップの愛。入学当時からコングポップ後輩はアーティット先輩のことが大好きなのですが(というかめちゃ重い)、その気持ちはシリーズを通して一度も揺らぐことはありません。これは本当にすごいことです。なぜならアーティット先輩は序盤、令和の今ならコンプラ完全OUTのいじめっ子だったからです。どんなにひどいことをされても全く変わらないコングポップの愛情。最終的に結ばれても「先輩には同じ気持ちを求めません」とおっしゃっています。無償なのです。無償の愛なのです。

そしてわたしが最も焦がれるのは、アーティットの成長。アーティットは本当に未熟でした。いじめっ子だったし、自分のコングポップへの気持ちに気づいてからもどうしていいかわからずコングポップを傷つけてばかり。見ていられません。正直、序盤のアーティットは最低です。察するに、アーティットはきっとヘッドワーガーとしての重責や成果にとてもプレッシャーを感じていたであろうに、超問題児(兼超強火)のコングポップにさらに手を焼いて、キャパオーバーだったのだと思います。
それでも少しずつ、少しずつ、周りの人の力を借りながら自分の気持ちに正直になって、コングポップも自分の気持ちも、男性同士の恋愛も受け入れていく。
コングポップだって愛を貫くことが辛い時もあったと思います。だって絶対好きじゃない方がラクだもんあんな人・・・それでもふたりが結ばれたのはそれぞれ(特にアーティットが)葛藤して、成長したからこそ。その過程がすごく丁寧に描かれています。だから大好きなのです。

わたしは超勝手ながら、この作品をキャストのKristくん、Singtoくん、そして制作陣に重ねてしまっているんです。今でこそタイのBLドラマが大ブームですが、SOTUSが作られたのはまだ世間に受け入れられる前で、同性愛者を演じるキャストだって相当苦労したはず。演出だって最近のタイドラマとはくらべものにならないくらい粗いときがあります。きっとたくさん葛藤したでしょう。それでも素晴らしい作品になったのはきっと熱量があったから。愛にあふれた唯一無二の作品なのは、制作陣やキャストのこの作品への熱量や愛情が伝わってくるからなのだと思います。

個人的に、BL作品(に限らないとは思いますが)の良し悪しは「作り手側の熱量」によると思っています。もう少し踏み込むと、「オタクってこういうのが好きなんでしょ」みたいな思惑が透けて見えると一瞬にして駄作になる。純粋に、作品を通して伝えたいことを実直に熱を持って描いている作品は良作だと思います。『SOTUS』はもちろん萌える要素満載なのですが、作品として「アーティットとコングポップの愛と成長の物語である」という筋が通っています。その筋に、KristくんとSingtoくんの葛藤や成長も重ねて見える。いつ見ても胸が焦がれるのは、それが理由だと思います。

Kristくんはミュージシャンとして、Singtoくんは違う事務所で俳優さんとして活躍されています(ふたりのファンミも行きました!また日本に来てね!)。そして『SOTUS』以来、たくさんの素晴らしいタイBLドラマが生まれました。わたしにとってもみんなにとっても、すべての始まりの作品。きっとこれからもいちばん好きな作品だと思います。


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