『ルビコン河を渡る』

<演劇台本>『ルビコン河を渡る』
作 すがの公(2019年4月)

■あらすじ
 国無歳三(自立、まだらボケ)が老人仲間4人とともに有料老人介護施設から集団脱走。介護士の久留美と孫の菊代は旅に同行するハメになる。統率が取れていることを不思議に思う久留美。菊代は彼らにだけ見える神様が居ることをつきとめる。
■概要
 観終わった後、きっと優しくなれる劇です。高齢化社会の「今」を切り取るバカバカしくも切ないシニカルな芝居です。老人を取り巻く環境、その家族の葛藤。老若男女、誰にとっても未知なる老い先を演劇で切り取ります。


<開場中>
 老人ホームの人たちや老人がうろうろしている。
 たまに席の案内をしたりしている。
<舞台>
 長めのベンチや四角い椅子のようなものがある。 
 床が壁材やコンクリートやレンガのように彩られており
 シーンによっていろいろな場所になる。
 奥に桜の枯れた桜の木をモチーフにしたオブジェがある。
<老人と神>
 日本各地、そこらじゅうの老人たち。
 色んなところから声がする
1:ここが終着点か
2:姥捨て山。
3:老人と仏壇にゃ置き所がない
4:寿命100歳
5:人口の4分の1が老人だ
6:待機老人40万人
7:ベッドが空くのをひたすら待つ
8:4年待ちだとよ
9:待ってる間に死ぬな
10:貧乏人は死ね
11:俺たちはただ働いた
12:高度経済成長期
1:がむしゃらだった
2:戦争まけてなんにもなくて
3:だから作った
4:たくさん売った
5:たくさん買った
6:経済大国になった
7:それが今じゃ余されて
8:役にもたたねえ
9:ただの、年寄り
10:手に入れたはずのものが何もない
11:幸せになりたいだけだったのに
12:どこかでなにかを間違えたのか
1:そもそもこんなもんなのか。
2:次の予定は死ぬことだ。
3:あとは迎えを待つばかり
4:せめてピンピンコロリと行きたいもんだ
5:聞いてるか
6:独り言だ。
 口笛が聞こえてくる
 ♪ルビコン川、テーマの旋律
7:くちぶえ?
8:なんだこの音。
9:耳につくな
10:おぼえちまった
神:皆さんはわかっておられません。
 河の向こうに何があるのか
11:河?
 ♪口笛、じょじょに増えていく
神:さあ!
 神、指揮をしている
神:元気出して行きましょーー!
 ♪口笛の盛り上がりが最高潮に達する。
9:おい!
 口笛がピタリと止み
全員:誰だ。
<夜中>
 犬の遠吠え。ワォーーーーンワンワン
 夜中。街灯がつくと、国無がベンチに座っている。将棋をしている。
 警備・田中が見廻りにくる。LEDの懐中電灯の強い明かりが当たる。
 国無、不快そうに顔をしかめる。
田中:大丈夫ですか?
国無:、、将棋だ。
 LEDで照らす、携帯の将棋盤が
国無:ごくろうさん
 田中、立ち去ろうとするが思い直し、光を当てる
国無:なんなんだよ
田中:いやあのー、こんな夜に、こんな所で、こんな「ろ」
 ろ、、ろ、、ロンリーで。
国無:老人で悪いか
田中:すみません
国無:昼間何してんだ。
田中:、、、
国無:女は?
田中:、、、ぐっ(なんか、力をこめる)
国無:、、すわれ
 田中、はじっこに座る
田中:やりたいこと、無くて。
 犬の遠吠え
 わおーーーーん、わんわんわん
国無:なんでこんなとこいるのかな。
田中:老人ホーム?
国無:入りたいか?
田中:、、いや
 間
 婆さん、沖オトメがくる。
オトメ:国無さん
国無:おー
 無口な爺さん吉田、
 車いすの爺さん権藤を押してくる。
吉田:、、、、(じっ)
権藤:徘徊徘徊
源:嫌な奴がいた。
オトメ:仲良くして
 源、田中の場所に座る
吉田:(にこにこにこにこ)
田中:お揃いでなんかあるんですか?
 5人、「やばい」と思い、ピタっと止まる
田中:、、、、、
 じろっと田中を見る
国無:えーーと。
源:えーと
オトメ:えーと
吉田:(えーと)
権藤:あ、こと座流星群
田中:見えるんすか?(天を見て)
オトメ:円山の桜も咲いたって
権藤:桜前線。
吉田:(1ヶ月遅れなんですよね、桜前線)
源:北海道にも春が来たってな(ワンカップ出す)
吉田:(うんうん)
田中:あ、あれですか?
5人:(じっと見る)
田中:あ、戻りまーす。
 田中、退場
国無:、、、花見か。
 夜の音。5月、北国の春。
 老人のうちの一人が、
 ルビコン河のテーマを口ずさむ
<首謀者たち>
 突然、音楽(岡林信康『私たちの望むものは』)
 首謀者たち、ライトアップされる。
 (国無、権藤、吉田、源、オトメ)
 『私たちの望むものは』歌詞:岡林信康
   私たちの望むものは生きる苦しみではなく
   私たちの望むものは生きる喜びなのだ
   私たちの望むものは社会のための私ではなく
   私たちの望むものは私たちのための社会なのだ
   私たちの望むものは与えられたことではなく
   私たちの望むものは奪いとることなのだ
   私たちの望むものはあなたを殺すことではなく
   私たちの望むものはあなたと生きることなのだ
   今ある不幸せにとどまってはならない
   まだ見ぬ幸せに今飛び立つのだ!
 音楽の中、首輪をした犬が出てきてマイクでしゃべる
犬:こんにちわ人間ども!!犬です!
 本日は札幌ハムプロジェクト全体興行、
 「ルビコン河を渡る」<東京公演>へのお越し!
 誠にありがとうございます!
 とうとう年号も決まりました!「令和」!「令和」です!
 大変な時代になって参りました!
 少子高齢化社会まっただなか!
 高度経済成長を支えた団塊の世代が百歳まで長生き!
 失業率、ニート、ひきこもりは増える一方!
 年金も税金も介護保険も足りません!
 
 チンピラ風の男・下関晋作が
 スマホカメラで色んな方向から撮る。
 たまに犬も写真に入る。
犬:札幌ハムプロジェクトがお送りする今回の劇は
 そんな令和の世の中に警鐘を鳴らすべく、
 高齢化社会の「今」を切り取ります!
 札幌&東京&沖縄、三都市の役者で一つの芝居を創造する公演です!
 携帯電話の電源はオフでおつきあいください!!
 ハッシュタグは「ハムプロルビコン」皆様の感想お待ちしております!
下関:へい!犬畜生!
犬:へーーーい!人間どもー!
 犬と下関、ハイタッチして退場
 大音量の音楽の中、
 首謀者たち、絶えず向こう側を眺めている。
 ひとしきりかかり、溶暗。
<じじばばダンスの夢>
 暗の中、アナウンスの音声(録音)が入る。
 クラシックも一緒に録音されている
幸子:老人の家・札幌ウタリのさわやかな朝は
 今日もレクリエーションからはじまります。
 
 (音楽「イイ湯だな体操」
 https://www.youtube.com/watch?v=TvYQEOUBDbE)
 職員(北島、男山、所長)体操をする。
 ちっともノッてこず、ボケッとしている爺婆。
 くるみが現れ、音楽を止める。
 別の曲をかける。
 一人の老人がちょと踊る。盛り上がる。
 別の老人が立ち上がり、高度なブレイクダンスを決める。
じじばば、かなりよろこぶ。
 介護士のくるみが行進をするとしだいに隊列が整って来る。
 ジジババは補助具をかなぐりすて、ユニゾンで踊りだす。
 踊りが終わるとよぼよぼし、時間をかけて自室へ戻る。
介護士、ヘルパー、退場を手伝う。
 場転
<くるみ>
 敷地内のベンチで顔に同人誌かぶって寝ている沖久留美(処女)
くるみ:うんが!やばいエロ漫画かぶって寝てた。
 男山
男山:居た!
くるみ:おわっつ(ランチ用かばんにホモ漫画隠す)
男山:寝てました?
くるみ:大勢の老人たちとなんか一緒に踊ってる夢見た。
男山:俺、あ、僕休憩入ります
くるみ:なにもなかった?
男山:国無さんがおとなしいです
くるみ:うそ
男山:ほんと
くるみ:女子従業員のブラホック外しに熱狂
男山:してません
くるみ:パチンコの景品くばりまくったり
男山:してません
くるみ:談話室バリ封して宴会
男山:してません
くるみ:源さんと喧嘩は?
男山:むしろ仲いいです
くるみ:どしたの
男山:なんか静かに書いてます。
くるみ:あやしい
 と、無口な老人・吉田さんてててっと通り過ぎる
二人:、、
男山:なんか通りましたね
くるみ:うん
二人:(少し考え、思いつく)、、吉田さんだ!!!
 二人追いかけて退場する
くるみ(声):まった!そっち回って!
男山(声):吉田さん!ストップストップ!
 捕まった吉田さんにこやかに帰ってくる。両脇にくるみと男山。
吉田:(にこにこ)
くるみ:吉田さんー
男山:わざとやってる?
くるみ:ちょっとすわろうね
吉田:(にこにこ)
男山:おちょくってませんか?
吉田:(にこにこにこ)
くるみ:この笑顔
男山:一日に何回やるんですか
くるみ:吉田さん元気だねえ
吉田:(にこにこにこ)
くるみ・男山:はー
吉田:(にこにこにこ)
くるみ:じゃ、行くわ。
男山:あれ?吉田さんは?
くるみ:男でしょ、男山くん。
 くるみ退場
吉田:(びっくりして男山をみている)
男山:え?なんすか
吉田:(みてる)
男山:なんすかその顔
吉田:(感心している)
男山:あ、名前?
吉田:(空を見る)
男山:そうなんす。男らしいでしょ。名前。
 二人空を見る
男山:(人生を想っている)
吉田:(男山の顔を見る)
男山:(気づかない)
 ナース北島
北島:あー、だるい。
吉田:(にやりとする)
男山:あ、北島さん、おはよ(うございます)
吉田:(逃げ出す)
北島・男山:吉田さん!!!!
 吉田を追って退場する二人
<菊代と謎の女>
 中学女子菊代登場、スマホ
菊代:、、はー。LINE地獄。はぶってはぶられて。女子気くるってんな。電源オフ。
 電源オフにする。
 サングラスをかけた謎の女・相原誠が謎に侵入
誠:侵入成功。
菊代:?
 わざわざサングラスをはずす。
菊代:?
誠:ここか。
菊代:、、
 誠、ささっと退場
菊代:不審者!!
 わくわくしてあとを追う、菊代
<企み>
 じじばばどこからともなく集まってくる
 頭をつきあわせて何かを企んでいる
じじばば:ごにょごにょごにょごにょ
 所長通りかかる
じじばば:(黙る)
 所長そのまま退場
 再びゴニョゴニョ
じじばば:ごにょごにょごにょごにょ
あほ老人:え?脱走?
じじばば:あ!ばかシーーー!!シーーーー!!!
 ヘルパーの男山通りかかる
じじばば:(黙る)
男山:?
 男山退場
 再びゴニョゴニョ
じじばば:ごにょごにょごにょごにょ
あほ老人:でも脱走は
じじばば:あ!ばかシーーー!!シーーーー!!!
 ナースの北島
 遠くから爺婆の異変を察知して
 忍び足で現れる。
北島:なにしてんの?
全員:!!!
 皆、そうっと北島をみる。
北島:なんか相談?
全員:、、、
 全員、つーーんとする。
北島:なに?
 北島が一歩中に入ると、くもの子を散らすように、じじばば消える。
北島:、、なに?
<相談>
 国無、権藤、源、吉田、こそこそしゃべりながら戻ってくる。
国無:まず、佐々木、で、ナースの北島からのロボット
権藤:介護士のくるみは
国無・源:(手で問題ナイ問題ナイ)だいじょぶだいじょぶ
吉田:(うんうんうんうん)
権藤:リハビリの男山は?
国無・源:(手で問題ナイ問題ナイ)だいじょぶだいじょぶ
吉田:(うんうんうんうん)
権藤:警備員は?
国無・源:(手で問題ナイ問題ナイ)あーバカバカバカバカ
吉田:(うんうんうんうん)
国無:で、車な。
吉田:(うんうんうんうん)
国無:だいじょうぶか?吉田。
吉田:(え?)(あー)(どうかな)
国無:俺の作戦にぬかりはねえ
源:国無。
国無:なによ
源:手ぇ組むのはこれきりな
国無:こっちの台詞よ
吉田:(まぁまぁまぁまぁ)
国無:あと、もひとり。
源:マドンナ
国無:おとめな。
吉田:(うんうんうんうん)
権藤:だいじょうぶかなぁ
国無:せっとくする
源:まだらボケだぞ
国無:俺もだ。
3人:はーははーはー
吉田:(はーはっはー)
権藤:だれが説得するの
 で、オトメ
オトメ:なにしてんの?
国無:ちょっと。
オトメ:はい?
源:話あるんだ。
オトメ:あらまあ
国無・源:権藤から。
権藤:え
吉田:(車いす、前に出す)
源:じゃ、おれたちは
国無:ああ、いそがしいいそがしい
吉田:(もうこんな時間か)
 残される二人
権藤:、、、、
オトメ:なに?
権藤:え。えーと
 チンピラ風の男、下関晋作。
下関:ちーす
オトメ:どなた?
下関:(不敵な笑み)ふん
オトメ:チンピラ?
下関:おっとおっと
オトメ:下っ端?
下関:おっとっとっと。口に気をつけな。
オトメ:どうしたの?
下関:聞きたいことあんだよ。
オトメ:悩んでるの?(うんうん)
下関:おっとっとっと。
オトメ:悩んでるのね?(うんうん)
下関:、、
 間
下関:、、俺、この仕事でいいのかなって。
オトメ:(うんうん)
下関:やらされてんの集金で。俺の直属の兄貴、年中ももひきにジャージで。ホントに、この仕事でいいのかなって。
オトメ:いいことあるわよ。
下関:そうでしょうか
オトメ:応援してるから。ね。
下関:ハイ。ありがとうございました。
 下関、退場
オトメ:話ってなに?
権藤:あ、そうだ(手招き)
オトメ:?
 権藤、オトメに耳打ち
オトメ:え?みんなで?
権藤:マネージャーとして。
オトメ:なつかし。
権藤:どうかね?
 SE木枯らし
オトメ:だめよ。わたしは。
権藤:やっぱなぁ
オトメ:国無さん、どうかしたの
権藤:暇つぶしだろう
オトメ:そうかしら。
権藤:え?
 下関
下関:あぶねえ!老人の魔力に騙されるとこだぜ
オトメ:おかえり
下関:うんただいま。よせばばあ!
 あぶなくすっきりして帰るとこだったじゃねえか
オトメ:どしたの
下関:こいつ出せこいつ。ここにいるのはわかってんだ。
 「国、、」なんて読むんだ?
 オトメ、権藤、のぞきこむ。
 「国無」
二人:(顔を見合わせる)
オトメ:この人に、なんのよう
下関:借金あるんだよ。
オトメ:まぁ。
権藤:いくら?
下関:1000万。
<佐々木からカギを盗む>
 運転手の佐々木さんが吉田と源にだまされている。
佐々木:は。そうですか。
源:当て方ってのがあんのよ
吉田:(うんうんうんうん)
佐々木:なるほどぉ。
 田中
吉田:(やばい!ストップ)
源・吉田:♪(くちぶえ)(いい天気だな)
田中:あ、運転手さん大人気
佐々木:はい、なんか(うれしい)
田中:国無さんは?
佐々木:知ってます?
源・吉田:♪?(くちぶえ)(知らない)
 田中退場
源:くもってるけどな
吉田:(気をひいて気をひいて!)
源:あ。でさ。
佐々木:あ、なんでしたっけ
吉田:(キランッ)
佐々木:じゃああれですか?***が引退する理由ってそれ?
源:は?
佐々木:え?ちがった?
源:あ、耳が遠いから
佐々木:あ、だからですね
源:なに?なんだって?
佐々木:あ、あのー(権藤の耳に手をもってく)
 吉田、ポケットからモタモタ鍵を盗む。
 全然うまく行ってないけど、
 なぜか成功する。
吉田:(オーケー、オーケー、オーケー)
源:よし次だ。
 源、吉田。さっさといなくなる。
佐々木:じゃああれだ。***って今***にいるんだ。あれ?
<所長>
 スタッフルーム
所長:国無のじーさんがなにかたくらんでる?
くるみ:おばーちゃん、巻き込まれないかな。
所長:マジメが趣味みたいな人だぞ。
くるみ:そーかなぁ、、
所長:でだ。決まったから。例の件。
くるみ:どうなるんですか
所長:ご家族と話し合い。
くるみ:身寄りが無い方は?
所長:自治体。地域包括支援センター。
くるみ:そんな!
所長:ま、役割は果たした。じーさんも本望だろ
 自分の始めた老人ホームに自分もおふくろも入って。
 そしてここで死んだ。
 おふくろも今じゃ「オトメちゃんオトメちゃん」って
 この施設のマドンナだ。
くるみ:母さんに相談したの?
所長:あいつが勝手に居なくなったんだ。
くるみ:お父さんよりここの財政わかってる。
所長:仕事場では所長と呼べ
くるみ:良い歳して別居とかやめてよ!
所長:おい!おい!しっ!
くるみ:簡単に決めていいの?
所長:老人と心中はできんよ
 中学2年菊代登場
菊代:くるみちゃんヤッホー
くるみ:きくよちゃんヨッホー
所長:なんだそれ
くるみ:権藤さんとこのお孫さん。
所長:この件は内密にな。
 所長、退場
菊代:不審者居たよ!わくわく
くるみ:菊代ちゃんて変なトコで盛り上がるよね。
菊代:なんか、古い登場してた!
くるみ:どんな?
菊代:グラサン!
くるみ:へー。不審ー。
 介護ロボットジュリアス登場
介護:ウィーンウィーン
菊代:なにこれ。
くるみ:去年、アメリカのロボットベンチャー、アイオロス・ロボティクス社は人口知能を搭載した介護ロボ「アイオロス」を発表しました。
菊代:ネットで見たのと違う。
くるみ:日本向け普及版。
介護:ウィーンウィーンウィーンウィーン
菊代:、、
介護:ペキョパ?
菊代:(くるみに)やくだつ?
くるみ:リース料月20万
菊代:たっけ!(高い)
介護:ハ~イ。ボクが来たからにはもう大丈夫♪
菊代:、、、、(考えた末)(なぐる)
くるみ:どうしたの!
菊代:こんなもん入れるからつぶれるんだ!
介護:おしおきモード作動。おしりをだしな、
菊代:ぎゃあ変態!(蹴る)
介護:ん!!
二人:ん?
介護:ガガガガガガガガガーキィ、ガッキーガッキー。アラガッキー
くるみ:なんだなんか変なった
 ジュリアス・ロボティックス社の相原誠走ってくる
誠:やっべ!
菊代:あ。不審者
介護:戦闘モード作動!なんとこの左手の中にはサイコガン。今日もレディと一緒に宇宙のお宝を狙って大暴れだ。コーブラ♪コブラ♪コーブラ♪
くるみ:(蹴る)
介護:アイムルッキングフォー、ミサイル。
誠:えーと(リモコンさがす)
菊代:(蹴る)
介護:ギブミーヒップス!複数のおしりをだせ!(おそいかかる)
くるみ・菊代:わああああ!(ぜったいぜつめい感だす)
誠:強制終了(リモコンで止める)
 SEピコン 
介護:う~~~~ン(ガク)
二人:、、と、、止まった
 相原、もくもくと検査をはじめる。
誠:えーと
 ベリイ!っとなにかはがす
二人:え
誠:あ、まちがった
介護:うそ
 バリイ!!っとなにかはがす
誠:あれ?
くるみ:なにしてるんですか
誠:直します。
介護:壊れてんの?
 ボキィ!となにかを折る
介護:直して!
くるみ:あの。
誠:(作業しながら)管理海会社の相原誠です。再起動。
 SE起動音ジャーーーンテロレロレレファンフォーーン(macサムスンwindows)
くるみ:macサムスンwindows。
菊代:ごちゃごちゃだな
介護:直りました。ゥイーーンウィーーーン。直りました。
 介護ロボ退場する
くるみ:直った?
誠:はい。
菊代:ありがとうございました。
 と、タブレットを出して退場しかけ、
誠:他に異変はありませんか?例えば、老人とか。
二人:異変?
男山(声):吉田さん!!
 吉田、走って去る。
 男山、追いかけて去る。
吉田:♪
男山:日々速くなっていく!
くるみ&菊代:まじで?
 3人、地平線に消える二人を見る。
くるみ:異変ないです。
<父と子>
 ドラクエ1を口に出しながらやってる子供
子供:ハイおっけータイマツゲットぉ!からのぉハイ出ましたスライムたおしーのドラキーたおしーのひのきのぼう買いーの装着しーのハイおっけーたいまつゲットよおし!
 父登場。
父:太郎
子供:たいまつゲットよぉし!
父:声に出しながらゲームやめろ。
子供:ドラクエワン!
父:ワンかー
子供:ドゥン!
父:主人公横向かないで壁にぶつかる
子供:どゥんどゥん!
父:久しぶりだな。
子供:おいママ一緒じゃないのか
父:こっちの台詞だよ。ママは?
子供:おけしょう
父:またか(スマホ)
子供:タイマツゲットぅ!
父:たいまつで盛り上がんのやめなさい。最近どうだ小学校。
子供:いいんじゃないか、その調子で。
父:なるほど。
子供:ゲームやめなさいバカになるぞ
父:こっちの台詞だバカ。あ、ちょっと待ってろ
子供:漫画がんばれよ
父:がんばるよ。
子供:よくやってると思う、その歳で。
父:ありがとう
子供:ねえちゃんは?元気なのか?
父:人の台詞とるなよ。
子供:犬もらって超機嫌いいよJK
父:犬?死ぬんだぞ?歳とって。
子供:わあかあってりゅうう
父:あ、花子。似てる。いってやろ
子供:たいまつゲット!
父:今たいまつ何本?
子供:40と50の間をうろうろ
父:レミーラ覚えろ
子供:なんで結婚した?かーさんと。
父:突然なんだよ
子供:どっちこくった?
父:ママだよ。顔が好みだったんだって
子供:ウップ
父:胃液上がってくんなよ。
子供:だからおじーちゃんに顔にてんの
父:遺伝子がな、選ぶんだろうな、適合種を。
子供:あごめん。興味なかったわ
父:おまえが聞いたんだぞ。
子供:ふもぬれぎ・ぎあまももはと・ぬほめよれ・ぶくし
父:は?
<母>
 所長・北島・母・太郎・父
母:すみませんなんかもうあわただしくて頭が。先日韓国に行ってきまして
北島:(おみやげもらい)韓国海苔?
太郎:ジャガポックル!
父:なんでよ
所長:本日お集まりいただいたのは、お父様の来年の入居についてですね。
母:継続でお願いします。
太郎:たいまつげっと!
母:どんなたいまつかな
父:見えないから
所長:あの、違うんです。
北島:御父様の要介護レベルが下がりまして。
母:それいいこと?
所長:すごくいいことです。
北島:生活習慣の改善で、今は要介護1と認定してよいのではと。
母:ぜんぜん意味わかってないです。
北島:施設へは通うという選択も。
母:あ。困ります。
 間
母:老人の世話なんてできません。
父:おい
母:うち、離婚してからもう手一杯なんで。
父:ちょっと、ママ。
母:ゲーム狂いの小学生と思春期のジェイケー抱えて教育教材制作会社経営してるもので。困ります。
父:そういうさ
母:お金払ってんのあたしでしょ?あなた面倒みる?
父:いや、おれはおれで、、
母:利用料があがるぶんには致し方ありませんから。
所長:いや、あのー、それがですね。経営陣が
 太郎、ピアニカを出す 
所長:(あピアニカだ)入れ替わるんです。
父:あ、ピアニカ
母:なつかしい
太郎:んふんふ(照れる)
母:うちメロディオンだった
父:太郎は?
太郎:メロディカ
全:まじで?
父:すいません。なんでしたっけ?
所長:なんでしたっけね
母:他のところさがしましょ。あなた調べられる?あたし行かなきゃいけないから
父:もっとお父さんの気持ちとかさ。
母:慣れるよ。(スマホ)
父:君の親だろ?
母:あ、もしもし。ごめんねー。今から行けます。
 どこだっけ。あ、ドトール?狸小路ね?
 母退場
太郎:あーたいまつなくなったー」
父:たくさんあったろう!
 太郎、ピアニカで話す
太郎:(♪そうなんだけどね?)
父:なんて言ったんだよ
太郎:(♪え?)
父:ぷ?
太郎:(♪なにがなんだか)
父:もうなにがなんだか
太郎:あたり~♪
父:正解?やったー
太郎:おどろうー
父:え、おどんの?
太郎:はい(なんか適当にひく)
父:(いちお踊る)
太郎:ははははは
父:はははは
太郎:これで離婚さえしなきゃな
父:やめろよそういうの
太郎:気にすんな
父:ごめんなー。
太郎:ぺー♪(口で言った)
父:じーちゃんにあってくべ
太郎:ペー
父:口で言った今?
 太郎、父、退場する
<事情>
 北島、何かを折る。
北島:(バキ)
所長:!
北島:買わなきゃ、****(折った文房具)。
所長:、、、
北島:オトメちゃんは、どうするんですか?
所長:おふくろはここに居たいと思うよ。
 おやじと作った場所だから。
北島:職場結婚ですもんね。二代揃って。
所長:うん。
北島:幸子さん。戻らないんですか?
所長:代わりのケアマネ、探してるから。
北島:お願いします。くるみさんのプラン、
 こっちの手が多くなって。
 幸子さんは配慮してくれてたんですけど。
 くるみ。
くるみ:あの。
所長:ゲ。
くるみ:至らなくて。
北島:母親の穴埋めとはいえ、
 自分の仕事じゃないのにやってるわけだし。
くるみ:すいません。
北島:失礼します。(ダダっと走る)
 退場しかけ、立ち止まり
北島:あ。
 戻って来る
北島:私、休暇いただきたいんです。早めに。1週間くらい。旅行です。
所長:あー、っと。それは他の看護師とシフト
北島:調整してあります。
所長:あ、そう
北島:失礼します。
 北島また、二歩ダダっと走る、その後歩く、退場
所長:どうして二三歩走るんだ。
くるみ:送迎車の合鍵ください。
所長:おまえ運転すんのか?
くるみ:免許あるんですけどいちお
所長:大事にしまっとけ
くるみ:運転手の佐々木さん鍵落としたって。
所長:アホか。事務室。キーボックス。いちごぱい
くるみ:いちごぱい?
所長:1581
くるみ:なんでよ
所長:しらん
<源>
 居室
 北島が薬を持って、来る。
北島:源さーーん。また薬のまなかったしょ
 将棋でワンカップ賭けんのやめてくんない?
源:国無の将棋はアホ。めちゃくちゃ。
北島:じゃ、のんで。
源:、、看護婦さん、太った。
北島:じじい
 源、ワンカップで呑む。
源:なんで老人の看護婦よ。
北島:あこがれの幸子さんが居たから
源:花子も看護婦になるとかならんとか
北島:もう高校生?
源:れも、日本語を忘れたようれすヒック
北島:なんでろれつ回ってないの?
源:そうれすか?
北島:ちょっとまった!!薬、何で飲んだ?!
源:ワンカップら
北島:酒だろう!!ちょっと何考えてんの!!
源:これは前祝いである!!われわれは管理されるものではない!
 老人に、自由を!
北島:先生に聞くからここ動かないで!
源:はっはーーー!!
北島:幻覚見えても、知らないからね!!!
 北島、退場
源:よしと。(キョロキョロ)おしゃべりイーグル!
 隠れていた吉田、さっと登場する。
吉田:(はいよ)
源:サクラサクラ!
吉田:(ん?)
源:トラトラトラ!
吉田:(え?)
源:ニイタカヤマノボレ
吉田:(やま?)
源:もういいボタン押してこい!おしゃべりイーグル!
吉田:(OKサイン)
 吉田、バッサァと(もしくはクルックーと)退場する
源:騒ぎに乗じて、お宝をゲットする。
 国無にしちゃあいい作戦だ。非常ベルが始まりの合図。
源:さて(ワンカップのみ)サイコロは投げられた。
 ばかめ。ほんとにのむかよ。
 源、口から薬を出そうとする
源:、、、あれ?(ない)、、のんじゃったな
 音楽。
源:なんだこの音響と照明。、、まずい。
<のんじゃった源>
 幻覚が見える。
神:神だよ。神。神様だよ。キリストとか?だっけ?そういう神様だよ。服だよ。これは特注でつくったよ。オオトクチュールだよ。これはえもんかけ。脱ぐよ。いいかい?ぜーーんぶ脱ぐよ。
源:神様やめてくれ!
 北島、オオカミになってもどってくる
オオカミ:ウガー!ウガー!ウガー!
源;たすけて!
神:いちまいづつだよ?脱ぐよ俺。ぺろーん
源:たすけて!
 従業員、どんどんオオカミになってくる。
 老人仲間は、子羊になっている。
鬼たち:ガオーガオー
子羊たち:めえーめぇー
源:助けて神様!ここは、なんだ!
神:迷える子羊たち。
子羊たち:めえーめぇー
源:え
オオカミたち:ガオーガオー
神:ここはどこだ?
源:地獄か?
神:それとも
源:それとも、、、
神:それとととトモトモトモウィーーン。
源:え。
オオカミたち:ガオーガオー
子羊たち:めえーめぇー
源:おまえはなんだ。
神:カカカカミミミウィンウィーーン
 神、介護ロボットになる
源:え
介護:おまえたちを導くものだ。
 音楽あがる
<いずれ抜ける牙>
介護:かつてオオカミだった羊たちよ。
 今は牙も爪もなく、
 よりそわねば生きられぬ弱き羊たちよ。
 おまえたちは
 神の導きにより、
 黄昏のときを生かされる。
 いずれ羊となるオオカミたちよ。
 おまえたちは
 定めを知らねばならない。
 今ある牙もその爪も抜け落ちる。
 羊たちよ。
 この声を聞け。
 杖をとり。
 その河を渡るのだ。
源:かみさまー!
 混沌とする中、暗
<そのころ>
くるみ:ほんとだ。権藤さんいない。トイレは?
菊代:じーちゃんトイレめっちゃはやいよ!(自慢)
くるみ:だから変なトコで盛り上がるのやめてよ
 ジリリリリリリリ
菊代:なになに!
くるみ:非常ベル?
 所長、走ってくる
所長:なんだなんだ火事か火事か!にげるか!にげないか!
くるみ:落ち着けちょっと!
 男山、走ってくる。
男山:なにごと?!
くるみ:わかんない!
 北島、走って来る
北島:こっちヘルプ!たぶん源さん!
所長:なにごとだ?!
 おしゃべりイーグル吉田、走っていく
くるみ、北島、男山:よしださーーん!!
所長:今かよ!
男山:所長、そっちお願いします!
所長:うそ!?
菊代:わたしは?
くるみ:じゃ、吉田さん!
 くるみ、北島、男山、源の方へ退場
 所長、菊代、吉田の方へ退場
<所長・男山>
 薬棚へしのびこむ
 権藤、国無、オトメ
 権藤、なにか入れる用のカゴもってる。
国無:いそげいそげ。
オトメ(顔):はいはい
国無:おぼえてるか暗証番号は?
オトメ(顔):えーっと。パン。
権藤:ぱん?
オトメ(顔):ごろあわせ
国無:パンの名前か
オトメ(顔):なにパンかしら
国無:想い出せほら!
オトメ:コッペパン?
権藤:5、ペー、パチ、
国無:4桁だろ。ペー、パチってなんだ
<そのころ>
 所長走ってくる。
所長:くそ!見失った!
田中:なんですかこの騒ぎは!
所長:しるか!
田中:は?
所長:君追え!!吉田?
田中:え?だれ?!
菊代:まてえー!
 おしゃべりイーグル吉田と菊代、通過
所長:あれだ!追え!
田中:吉田さーーん
 田中退場する
所長:くそお!老人に負けた!!
 曲、あがり、暗
<決行>
 覆面をしている国無。
源:うう。ううう。うううう
国無:源、おきろ
源:うわ!神!
国無:俺だ(顔見せる)
源:は?
国無:今の騒ぎでうまくいった。ほら。
 覆面のオトメ
オトメ:じゃーん
 オトメ、医務室から盗んで来た薬を見せる。
源:さすが元職員
オトメ:パンね。
国無:パンだ。
源:パン?
 国無、源に覆面を渡す
国無:次な
源:(覆面かぶり)吉田は?
国無:おっけい
源:台車は?
オトメ:おっけい
国無:きたぞきたぞ!
 普通の状態の介護ロボット
介護:うぃーーーーーん。ぺきょぱ。
源:、、、
介護:ナニカご用はごザイマセンか?
国無・源・オトメ:、、、あるよ。
 ドライバーを持った、覆面の吉田が現れる。
吉田:(にこにこにこ)
介護:え?ドライバー?
国無:安心しろ。
オトメ:痛くないから。
吉田:(にこにこにこ)
 源、国無、吉田、オトメ飛びかかる。
国無:大人しくしてりゃな
介護:え?!ペキャ!え?
 覆面の権藤の車いす。
権藤:ほい台車!
介護:あががが
 介護ロボット、車いすに載せられ、引きずられて退場
<姉>
姉(声):わぁかあってりゅー
 電話しながらくる女子高生
花子:だってかわいんだみょん。まじうけんだけどー。
 犬のリードが舞台袖にのびている。
花子:チーゲ。モーツ。ターン。え?名前まだなの。
 強めの料理の名前にしたいの。あそれいい!決定。ジンギスカーン
 引っ張ると犬が来る
犬:やだよ!
花子:じゃマトン
犬:羊の肉?
花子:わあかあってりゅー
犬:なにもわかってない
花子:くん!あんたメスね
犬:けものか
花子:だんなさんみつけなきゃ
犬:結婚してっからほら(結婚指輪)
花子:あ、なに?ふん!(捨てる)
犬:ゆびわーーーー!!
 
 ベンチにくくりつけ
犬:ちょっと!ゆびわ!
花子:おじーちゃん呼んでくるからねー
犬:おこられる!だんなに!
 介護ロボットがくる
介護:ウィーン、ウィーン
犬:なんだなんだこいつなんだ!くんなくんなくんな!
介護:ウィーン、ウィーン
犬:花子!花子ーー!!くわれるー!
介護:ピキョ
 田中来る
犬:おい!これ!
田中:あ、犬だ
介護:田中。排除します
犬・田中:え?!
 介護ロボット、田中を強制退去させる。
 
 吉田、リモコンで介護ロボを操っていた。
吉田:(興奮!♪)(よし!うまくいったよし!よーし!)
 (いいよ!今!いいよ!チャンス!)
 そのすきに、じじばばたち、脱走。
国無(声):いまだ!!
権藤:はやく、はやく
オトメ:なんかわくわくする
源:いそげ、いそげ
介護:ハイジョセイコウ。セイコウ
 介護ロボ、ついてくる
吉田:(動いた動いた!動いた動いた!)
犬:なんだなんだなんだ
吉田:(あ!待った!だれかきた!)
国無:え?え?だれかきた?!もどれ!もどれ!
吉田:(もどって!もどって!)
 じじばばたちなりに急いで戻る
5人と介護ロボ:(小声)はやくはやくはやく
 北島と男山
北島・男山:あ、犬だ。
犬:え
北島:食べるか
犬:お
北島:タマネギ
犬:犬にあげたら絶対駄目な食べ物ね。犬死ぬよ。
男山:あ、そっか。だめだって。
犬:おや?
北島:考えた?懇親会のだしもの。
男山:いちお
北島:どんなの?
男山:****が****ない。という。
北島:なにそれ
男山:やってみますね
北島:どうぞ。
 男山、やる
 (例、防御システムが全然うまく行ってない)
北島:なるほど
犬:なにこれ
男山:隠し芸
犬:大丈夫?
男山:大ジョブだよ
犬:やっぱ言葉通じてる?
男山:あ、北島さん知ってます?老人メロディ
北島:あ、知ってるかも。
 北島、男山退場。
犬:今のなんのシーン?
国無(声):いまだ!
犬:え?
 5人再登場。
5人と介護ロボ:(小声)はやくはやくはやく
犬:わあまた来た。
 国無、何か書きながら登場
 そして、ベンチに、それを置く。
国無:よし、いくか。
 国無、くちぶえ。
 ♪ルビコン河を渡るのテーマ。
 国無退場
犬:なんだ?書き置き?
<Cross the Rubicon>
 男山
男山:介護ロボ来ないんすよ。リハビリの時間なっても。
 菊代
菊代:おじいちゃんのベッドまわりがきちんとしてる。
男山:良かったじゃん。
菊代:なんか、、、変。
所長・くるみ・男山:変。
 北島
北島:薬無くなってるんです。
所長・くるみ・男山・菊代:え?
北島:薬棚のオートロックって
所長:くろわっさん。
くるみ:9603
男山:なんの薬?
北島:肝臓、腎臓、睡眠薬。
 誠
誠:介護ロボ管理の者ですが
所長:ああ、お世話になっております。
誠:少しお話がありまして。
所長:はあ
 姉、犬
花子:どうどーう。
犬:馬か。
花子:超ウケるんですけどー
男山:ちょっと古い女子高生来た。
北島:源さんの。
花子:孫っす。
犬:犬っす。
所長:お母さんそっくりだね
花子:マトンちゃん!おわたし!(おすわり的に花子が作りました)
犬:失礼いたします。ご老人がベンチに置いた書き置きを我々がお持ちいたしました(所長に書き置きを渡す)
花子:(拍手)ドチャクソやばたにえん!
所長:(菊代に)通訳できない?
菊代:えー
誠:お邪魔します!
 誠、走って院内へ。
男山:どの老人?
犬:犬にわかるか
男山:そりゃそーだ
所長:犬と会話
北島・くるみ:してる。
花子:うらやみがスゴい
くるみ:わかりみは?
菊代:それな。
 縛られた田中がぴょんぴょん来る
田中:もがもがもがもが!
男山:どしたんすかあああ!
所長:はずせ!
 みんなで外してやる。
田中:ありがとうございます!
所長:なにごとだ!
田中:介護ロボットに、捕まって!
所長:え?
田中:覆面老人にしばられて!
北島:覆面老人?
田中:気難しそうのと、車いすのと、酒くさいのと、それと全然しゃべんないの。
職員:国無、権藤、源、吉田!
田中:あと品の良いのが一人。
男山:まさか
くるみ:おばーちゃん?!
北島:所長。
所長:職員、集合。
 所長、くるみ、北島、男山、田中
所長:どういうことだ。
くるみ:つまり
男山:これは
北島:脱走。
田中:すいません
所長:確認してこい。自然にふるまえ
 男山、北島、くるみ、田中、
職員:(自然な感じ)
 自然にふるまいながら散る
 誠、犬、女子高生、菊代残る。
所長:あ、いや、なーに。ははは。
 と、こっそり縄を拾ってぶん投げる
 そこに父。
父:あ、娘と犬だ。
所長:まずい
花子:ぽよーん
犬:ぴゃー
父:名前は?
花子:ジンギスカン
犬:マトンだろ
父:変なの
花子・犬:ぱあ
父:あの、うちのお義父さんが、いないんですけど。
所長:あ、ええ、、ええと、、いません?
父:なんかもぬけの空で。
菊代:あ、うちも。
所長:あれー?どーこいったのかなぁ。
 男山、北島、くるみ、所長の近くに来て
 惑星のように複雑に歩き回る4人
田中:(ぼそ)国無さんいません
男山:(ぼそ)吉田さんいません
北島:(ぼそそ)源さん権藤さんいません
所長:(ぼそお)うちのばーさんは?
くるみ:(ぼそそお)いませんっ
所長:(ぼそ)つまり
田中:(ぼそ)またパチンコとか
男山:(ぼそ)コンビニとか
北島:(ぼそ)100きんとか
くるみ:(ぼそ)居酒屋
田中:(ぼそ)カラオケ
男山:(ぼそ)ボーリング
北島:(ぼそ)ではないです
くるみ:(ぼそ)だから怪しいっていったじゃない
所長:(ぼそ)いまそんなこといってるばわいか
父:なぜ惑星のように動いてるんですか?
所長:はーーっはっはっはっは!
北島:お買い物に出たんだと思います。
父:あ、散歩。
所長:ナイス!
くるみ:ロビーでお待ちになっては(父の右に)
北島:ですねえ(父の左に)
父:え?あーそうねえ(嬉しい)
 男山。犬&子供を誘導。
男山:さあ子供と犬にもお菓子をあげよう
子供と犬:ふぉうふぉーう♪
所長:よし、これで。
 佐々木、取り乱して登場
佐々木:送迎車知りませんか?!
所長:。。。
佐々木:私!鍵探してるうちに、車!消えたんです。
全員:はあ?!
所長:あんたいい加減にしろよ!
 誠、戻って来る。
 手に、4枚の紙を持ってる。
誠:所長さん。
所長:なによ!!!
 誠、置き手紙を所長に渡す。
誠:老人たちからのメッセージです。
 便箋にマッキーででかでかと書いてある。
 『Cross the Rubicon』
菊代・花子:くろす、ざ、るびこん
 遠くにエンジンの音が聞こえる。
 音楽。
全:?!!
所長:さがせ!
くるみ:どこ!
所長:しるか!これがバレたらうちはもうおしまいだ!
 くるみ&菊代、男山、北島、田中、佐々木、散る
所長:じじいども!いったい何を企んでやがる!
<送迎車の爆走>
 SEブロオオオオオオオオオオン
 音楽
 首謀者たち、送迎車をうばって札幌駅へ向かう
 運転、吉田。
 とにかく高速で飛ばしているらしい。
 右カーブ、左カーブ、スピードアップ
 と、ストップモーション。
 介護ロボットから豆ちしき
介護:ミナサンこんにちわ。
 ジュリアスロボティクス社製介護ロボットのジュリアスデース!
 ママの国、アメリカでは年を取ると穏やかになるノニ!
 日本ではソレは過去のハナシ!
 逆に「キレる老人」も目立ってきテ、社会問題になってマス!
 ワタクシ、わかってキました。
 彼らは歳を取るほど、不幸に感じテル!
 ソモソモ。年寄りは弱者で善人だという思い込みは、マチガイです。
 ミンナ、アナタがたと同じ、若者だったんだカラ!
 以上、ジュリアスから、豆チシキでしター!アデュー!
 Gがかかり、爺婆、傾く。
首謀者たち:へーーーい
国無:シーザーはその河を渡るときに言ったとよ
権藤:サイはなげられた
吉田:(にこにこにこ)
オトメ:楽しい
源:長旅になるぞ
介護:GPS信号受信
国無:我々はこれより
全員:ルビコン河をわたる
介護:赤信号ー!
全員:みんなで渡れば恐くない!
介護:あああああああああ!!
 ブロロオロロオオオオオン
<めっちゃ走る、札幌>
 スマホで電話しながら、札幌中央区を走る職員たち
北島:もしもし!
所長:いまどこだ!
 センターに所長。
 その後ろに犬と女子高生、緊張感無く、いる。
北島:さっぽろ時計台前付近!!
男山:グループ通話!さっぽろテレビ塔
菊代:グループ通話!札幌大通公園!
くるみ(顔だけ):同じく!
田中:グループ通話!札幌オーロラタウン!
佐々木(顔だけ):グループ通話!札幌ポールタウン!
所長:地下のわけねえだろお!
菊代:調べました!ルビコン河!
所長:ルビコン河ってのはどこにあるんだ。
菊代:フィレンツェの東、小国サンマリノの北!
男山:僕の足がイタリアとすると、ふくらはぎの、このあたりです!
所長:じじいどもは、ふくらはぎの、そのあたりに向かったわけだな!
全員:違うと思います!
所長:え
菊代:調べました!
男山:ルビコン河を渡る!とは!
菊代:ことわざです!
所長:ことわざ
田中:覚悟を決めるという意味です!
菊代:紀元前48年1月10日!
北島:ルビコン河を渡ったシーザーが言いました!
男山:サイはなげられた!あともどりはできない!
田中:その河を渡ることは反逆行為だったのです!
北島:政治家であり軍人。
佐々木:ローマ帝国の初代帝王
男山:かの国を大国へ導いた先導者
所長:シェイクスピアの劇で有名な
 別の場所
誠:ジュリアスシーザー。
 再び散る、職員たち
 誠、通信。
誠:もしもし誠です!やっぱり逃走しました!
 製造番号69Dゼロ座標追加!!追跡願います!
 通信切り
誠:69Dゼロ、、おまえもか!
 誠退場。
 音楽あがる。
<刑事>
 音楽切れると、
 刑事・壇ノ浦、男山に手帳を見せてる
刑事:それで?
男山:チャリが、そこに、あったから。
刑事:登山家みたく言ってもだめだよ!
 北島、とおりかかる。
 二三歩走ってやっぱ歩く。
北島:なにしてんの男山くん
男山:北島さん!
刑事;ナース!!
二人:え?
刑事:私、デカです。(手帳を見せる)壇ノ浦ともうします
二人:だんのうら
北島:看護師です
刑事:ナースと。私も巡査部長ですが、刑事(デカ)と呼ばれたい。
 どうですか?
北島:どうですか?
男山:賛成です!
刑事:このジャージを知ってますか
男山:知ってますよね!
北島:ナイキ?
刑事:アディダス!この男とどういう関係です?
北島:関係ってほどのものは
男山:あるでしょう!毎日!
刑事:毎日!?
北島:何もないです!
刑事:私、休憩時間におやつを真剣に選ぶナースさんが大好きです。
北島:急いでるんですけど。
刑事:結婚を前提におつきあいをはじめるにあたり、お友達からはじめませんか。逆でもいいです。
男山:あの!ほんっとうに急いでるんです!
北島:老人たちが、脱走して!!
刑事:ではお茶でも。
北島:わかりました!今度!はい!
刑事:よっし!(ガッツポーズ)今日のところは見逃してやる
男山:やった!
刑事:ナースさん。
北島:北島です。
刑事:老人たちは一体どこに向かってるんです?
二人:え。
<佐々木と田中>
 佐々木と田中、すれちがう
佐々木:あ!警備員さん!
田中:ああ!運転手さん!
佐々木:居ましたか?
田中:札幌大通り公園の地下、1丁目から4丁目まで東西につながる昔ながらの地下街、オーロラタウンにはいませんでした。
佐々木:そうですか。こちら地下鉄南北線すすきの駅から大通り駅をつなぐ、同じく昔ながらの地下街、ポールタウンにもいませんでした。
田中:ではまさか、
佐々木:ええ、2011年より開通した大通り駅から札幌駅をつなぐ地下歩行空間、
田中:ええそうです全長520メートル「愛称チ・カ・ホ」を北上しようかと。
二人:いやあ奇遇ですなあ
田中:見つかったようですか?
佐々木:それがあいにく携帯の
田中:充電が切れましたか?
二人:いやあ奇遇ですなあ
田中:あ、僕、警備員の田中といいます
佐々木:あ、わたし、運転手の佐々木といいます
田中:これはこれは
佐々木:田中さん
田中:佐々木さん
佐々木:なんてことないお名前で
二人:いやあ奇遇ですなあ
佐々木:いきましょう
田中:はああううう!
佐々木:どうされました
田中:気づいてますか?あすこ!
佐々木:待ち合わせ名所4面マルチビジョン「ヒロシ』
田中:そこからポールタウン出口をはさみ視線を右にうつすと
佐々木:創業45年を越える純喫茶!
二人:「COFFEEジュアン」
田中:僕、あそこのコーヒーフロート
佐々木:私、あそこのオレンジフロート
田中:が
二人:大好きで。いやあ奇遇ですなあ
 二人退場
<札幌駅>
 音楽。どんつくどんつく♪
くるみ:居ました!札幌駅
所長:札幌駅?!
くるみ:どうすればいいですか?
所長:何いってんだ。連れ戻せ!
くるみ:所長!応援を!応援お願いします!
所長:わかった!!「がんばれ!がんばれよ」!
くるみ:人をよこせって言ってるんです!!!
所長:あそっか。人いないんだよこっち!
くるみ:二人じゃ無理です。
所長:じゃおまえが説得して!車に乗せて連れ戻せ!
くるみ:は?
所長:送迎車あるだろ!
くるみ:えワゴン!?あたし運転?
所長:普通免許あるだろ!
くるみ:さっきと言ってること違う!
所長:やるしかないだろ!
くるみ:運転手の佐々木さんは?
所長:知らん!
 菊代、登場
菊代:老人わりと足早い
くるみ:どこ行った!?
菊代:JR東改札口!
所長:じぇいあーる?!
菊代:敬老パスで改札通ってる!!
所長:くるみ!絶対に乗せるな!!
 菊代、くるみ退場
<老人たちホームへ向かう>
 敬老パスを見せて、
 改札を通る老人たち(オトメ代役)と介護ロボット
 相原晶(双子・姉。メガネ)登場。
晶:、、、
 タブレットをすこしスワイプして、
晶:確認しました追跡します。
 老人たちの消えた方へ迷わず消える。
<札幌駅東改札>
くるみ:ごめん!サピカチャージしてなくて!
菊代:早く!早く!
くるみ:サピカというのは札幌のSuicaね。
菊代:わかったから!!
くるみ:おじーちゃんたちは?
菊代:6番ホーム!!
 二人、電光掲示板をみてる。
くるみ:千歳線!
 菊代くるみ6番ホームへ。
<6番ホーム>
車掌:6番ホームにぃ、苫小牧行きがぁ、まいりーます。
 白線の後ろまでお下がりになってぇおまちくだぁあさい。
 老人たち、待つ。
車掌:6番ホーム千歳線ちとせーせんデゥす。ドアひらきーぃます。プシュー
 老人たち、乗りこむ
くるみ:おじーちゃんたち乗っちゃった!
菊代:どうする?
くるみ:どうしよう?!
車掌:まもなくーはっしゃいたしーます。
菊代:えいのっちゃえ!
くるみ:のるの?
菊代:尾行開始!
くるみ:なんでわくわくしてんの!
 菊代、くるみ、乗り込む。
車掌:しまるドアにご注意くだーさい。プシューー
 遅れて北島、男山、刑事登場
男山:ああ!くるみさん!!!
刑事:ひとあし遅かった!
北島:あ!沖さんと中学生!
 電車の中にくるみと菊代。
刑事:老人たちは、どこに向っているんですか!!
くるみ:あ!おとこやまくん!きたじまさん!
菊代:おじいちゃんたちはむこうに居ます!
刑事・男山・北島:聞こえんわー!!
 吉田がとおりかかり
北島・男山:吉田さん!
吉田:(にこにこにこ)
 吉田、パントマイム「窓」
全員:おおおお(拍手)
車掌:発車いたしーぃます。
刑事・男山・北島:ええええええええ!!!
 ガタンゴトンガタンゴトン
 じじばば、出発してしまう
 刑事・北島、男山、とりのこされる。
刑事:千歳線といえば
男山:快速エアポート
北島:新千歳空港?!
男山:ほんとにイタリア行くつもりですか??
北島:これ快速?!
刑事・男山:えええっっとおうおうおうおうおう(電車動いてて読めない二人)
 ガタンゴトンガタンゴトン
北島:快速じゃない。(電光掲示版で確認する北島)
男山:普通列車だ。
刑事:鈍行?
 ガタンゴトンガタンゴトン
 電車の後ろの方に、つり革に掴まっている相原晶(双子)。
 アップルウォッチで通話する。
晶:現在地千歳線711系車両3両目。このまま追跡する
 ガタンゴトンガタンゴトン!!
<相原双子場面転換>
 相原、眼鏡をとってくるりとまわる。誠になる。
 つまり老人ホームになる。
 自社タブレットを見ている(ジュリアスのロゴ)
誠:製造番号69Dゼロ、作業報告。誤作動対応。データチェック
 SEピピ。シュピュアン
介護:私は彼らをアシストするために
 彼らの主な発言をデータベース化した。
 介護ロボット、違う音声をしゃべる(介護ロボ、口パク)
8:絶望やさみしさを分かち合える存在がいない
9:普通に生きてきただけなのに、なんでこんな人生になったんだ
10:手に入れたはずのものが何もない
11:幸せになりたいだけだったのに
12:どこかでなにかを間違えたのか
1:そもそもこんなもんなのか。
2:次の予定は死ぬことだ。
3:あとは迎えを待つばかり
介護:65歳以上の人口は50年前の7倍。75歳以上は14倍。
 平均寿命が伸び、
 超老年期の生き方が問われている。
 死に方のお手本を探している。 
 穏やかに朽ちる死を。
 人間はひとりでは死ねない。
 しかし。ひとりなのだ。
 SEピコーン。
誠:AI、プログラムおよびウィルス診断結果、、「バグ無」
<ひたかくし>
 所長と、犬。
所長:で?
佐々木:フロート食って
田中:帰ってきました。
犬:すごい。
所長:、、札幌駅のワゴンを回収して待機してください。以上。
 所長、退場。
犬:めっちゃ怒ってる。
佐々木:タナヤン
田中:ササッキー
犬:ニックネーム?
佐々木:ちょっと騒ぎ過ぎじゃないか?
田中:ま、いつもパチンコから帰ってきますもんね
佐々木:給料やすいくせに。
田中・佐々木:やれやれだな
犬:おまえたち、、。
佐々木:幸子さん居たころは良かったよな
田中:こんなケンケンしてなかったっすね
佐々木:「これ差し入れー」って
田中:カントリーマァムくれたり
佐々木:ルマンドくれたり
田中:ホワイトロリータくれたり
犬:ド定番。
佐々木:俺らみたいな、端っぱの人間にも気遣いがあったよな。
田中:幸子さん居なくなってもー、半年か。
佐々木:帰ってこないかなー。
田中:あの、もじゃもじゃの髪で。
佐々木:「よ。これ差し入れー」って。
 
 幸子、お菓子もって登場
幸子:よ。これ差し入れー
犬:もじゃもじゃ!
二人:幸子さん!!
幸子:パーマ変えたの
全:あーー
幸子:犬だ
犬:所長の奥さん?
佐々木:どしたんすかー!
幸子:なんか静かでない?
<揃った>
 父、所長
父:買い物、長過ぎませんか?
所長:いや、あのーもうすぐ戻るーんじゃーーないかなあー
幸子:よ
所長:ゲ。なんでおまえ
幸子:インターホンおささらなかったわー
所長:ならない時あるんだよアレ
幸子:これ差し入れー
佐々木・田中・犬:あざす!(持ってく)
幸子:なんもなんも。
父:まさか徘徊とかじゃないですよね。
幸子:え?徘徊?
所長:いや、違うよ!な!
佐々木・田中:(お菓子くってる)はい
所長:車は?
佐々木・田中:やっべ
犬:ぷっぷー
父:他のご家族の方も心配されてますけど。
佐々木・田中・犬・所長・幸子:他?
 権藤の妹の権藤雅子(73歳)登場
雅子:失礼いたします。
所長:え?あ、ええとあのー。
雅子:兄がいつもお世話になっております。
所長:あ、えーと、うーん、あー。なんというか
雅子:権藤実篤の、、妹でございます。
所長・田中・佐々木・犬:あああああ!ああああ
幸子:おひさしぶりですー
雅子:ああオトメさんの。
幸子:どーもぉ
 菊次郎、高校生、絶対合格のはちまきしてる
菊次郎:ばーちゃん!勉強で忙しいから早くしないか!
所長:んんんっと?
雅子:孫の菊次郎です。
所長:は?
菊次郎:菊代はハトコにあたります
所長:ああああああ!!
父:あの中学生の!
菊次郎:女子に興味なんかない!来年は大学受験じゃないか!(バサ!)
所長:教科書落ちたよ
菊次郎:あい!(頭かかえる)
 犬、拾う。全員で見る。
犬:*******(エロ雑誌のタイトル。例・ロリコンホイホイ中学生)
所長:エロ本。
父:ロリコン
雅子:菊代ちゃん狙ってて。
菊次郎:やめないか!
 ピンポーーーーン
所長・幸子:あ、鳴った。
 吉田の息子、吉田イチロー登場
イチロー:(礼)(あ)(名刺名刺)(えーと)(あれ?)(あ、鞄だ)(うーんと)
所長:えーと
イチロー:(あ)(ありました)(どうぞ)
所長:札幌ミート 営業部長 吉田イチロー
イチロー:(ニコッ)
田中:吉田さんの。
北島:息子さんですか?
イチロー:(いや、兄の、息子です)
幸子:あ、吉田さんの、お兄さんの、息子さん。
イチロー:(ハイ)
犬:DNAってすごい!
所長:しゃべりませんなあ!!
佐々木:よく営業できますね
イチロー:(4月からですが)
 全員、口々に挨拶をしはじめる
犬:そろったなぁ。
所長:そろったかぁ、、
幸子:あなた。
所長:おまえ何しにきたんだ。
幸子:戻ろうと思って。
所長:、、
 花子、電話しながら
花子:ゲロゲロー。ちょベリバこの後ノースケ、じゃゴジピタで。
犬:とうとう70年代から90年代の流行語全部載せで来たな
花子:あ、マートン、かわいーんだみょーーん
犬:うわ
 花子「犬をかわいがっている自分をアピールする女」を演ずる
花子:わしゃわしゃ。んーちゅーんー。かわいー
犬:もういいもういいもう
花子:わしゃわしゃ。んーちゅーんー。かわいー。かわいー
父:花子っ。小動物をかわいがっている自分をアピールする女やめなさい
花子:ちっ(犬ぶん投げる)
犬:かわいがられぞんだ
田中:それにひっかかる男子いないっすよ。
菊次郎:キュン!!!!
全:ん?
父:この音は?
菊次郎:キュキュン!!!!
犬:まさか
菊次郎:かわいい。
全:あ
菊次郎:かわいいじゃないか。
花子:(髪をかきあげる)フー。花子です。
 音楽「ALL NEED IS LOVE」
全:ひっかかったーーーー!!!
菊次郎:あなたが運命の相手に間違い無いと直感ビビビと感じました!
田中:まさかこれ
佐々木:ひとめぼれって奴じゃないか?!
全員:どよどよどよ
菊次郎:この権藤菊次郎!金も地位も何も無い男子高校生でございやす!
 男・権藤菊次郎!己の生き方辞書引くような、みみちい男じゃござんせん!(エロ本捨てる)
全:すてたーーー!!
菊次郎:肩触れ合うたは何かの縁(えにし)!源花子さん!!
花子:ハイ!!
全員:よぉ!!!
菊次郎:中学ん時の写真ください
全員:どぉい!(コケる)よおお!どい!どおい!
 出演者全員、コケ続ける
所長:よおし!みなさん。よくコケた!だいぶコケた!
 おい!この場にいないはずの登場人物退場!!
父:中学の写真?!
佐々木:どういうことだ!
田中:屈折してないか!
雅子:だいじょぶあんた?
吉田:(うんうん)(エロ本渡す)
犬:イチローさんそれもういい
親族:ガヤガヤガヤ
幸子:みなさん!ここではあずましくないもんですから
 別室でお待ちいただいて。レクルームは?
所長:え、えーと。
田中:空いてましたよ
幸子:佐々木さん、田中さん、お願い。
佐々木:あ、はいはい。
幸子:ごめんね。
田中:なんもなんも。
佐々木:こちらでーす!
所長:、、、
 田中、佐々木の先導で、親族ガヤガヤと退場する。
親族:ガヤガヤガヤ
所長:あ、そっか。身内揃ったなら。例の件。
幸子:揃わないでしょ。
所長:え?
幸子:身寄りいないでしょ、国無さん。
所長:、、、、
幸子:そういう人のために、
 あなたのお父さんが始めた「老人の家ウタリ」じゃない。
 ずっと経営ギリギリだったけど。
 オトメちゃんが支えて。
 あなたが継いで、
 あたしもケアマネんなって、
 くるみも介護士んなって、
 家族みんなでがんばってきたのは
 そういう、
 行き場のないようなお年寄りのためでしょ。
所長:買い手がついたんだ。
幸子:、、、
所長:施設ごと、売りに出したんだ。
幸子:、、、
所長:年寄りと心中するわけにいかないだろ
 簡単だな。終わりなんてそんなもんだ。
幸子:なんで言ってくんないの?
所長:、、、、
幸子:応援したくても、できないじゃない。
所長:応援?そんなもん役に立つか?
幸子:、、、、
 風の音。幸子、まっすぐと所長を見据え。
 無言で、ガラナを渡し、退場。
所長:、、、

<車内>
 一両目
 じじいども、『丘を越えて』(藤山一郎)を合唱する。
 ♪丘を越えて行こうよ。
 真澄の空は朗らかに晴れて楽しい心
 鳴るは胸の血潮よ。讃えよ我が青春(はる)を
 いざ行け 遥か希望の 丘を越えて
 https://www.youtube.com/watch?v=VzQkzUrCw2U
じじばば:へーいへーーーい♪
 札幌→苗穂→白石→平和→新札幌→上野幌
 ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
 二両目の菊代とくるみ
 くるみ、なるべく変装している。
菊代:一両目のじじばば、なんか合唱はじまりました!♪
くるみ:こっちの気もしらないで。いまどこ?
菊代:札幌駅、苗穂、白石、平和、新さっぽろまで来た。
くるみ:今日学校は?
菊代:サボった!
くるみ:充実してんな中坊。
菊代:学校楽しかったらこんな毎日のように老人ホームにこないってば。
くるみ:そーか。
 ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
車掌(声):ご乗車いただきまして誠にありがとうございます
 次は上野幌~、上野幌にとまり~ます

菊代:北島さんは友達じゃないの?
くるみ:え?!ぜんぜんぜんぜん。彼女は、あっち側だから。
菊代:?あっちがわ?
くるみ:河を隔てた向こう側。リア充の国の住民だから。
菊代:あたしもあそこで、くるみちゃんと働きたかったな。
くるみ:菊代ちゃん(抱きしめ)なんでそんなまっすぐ言えんの。
菊代:くるみちゃんは結婚しないの?
くるみ:まっすぐ聞いちゃ駄目なこともあんのよ。
菊代:彼氏もいないの?
くるみ:いない前提で質問しちゃだめよ。
菊代:いるの?
くるみ:いないよ
菊代;いつから?
くるみ:産まれてから
菊代:応援する
くるみ:彼氏いんのか貴様。
菊代:居た。別れた。バカで。
くるみ:ゲゲ、貴様、まさか、せっく(す)
菊代:それはやってない!半分だけ!
くるみ:半分ってなにが?!
菊代:まさぐられただけ。
くるみ:あ、そういう半分?!
菊代:どういう半分?
くるみ:ほら!だめだ!この話!なし!
菊代:思春期か。
くるみ:ふっ
菊代:鼻で笑った
くるみ:こっちの思春期はね、腐ってんの。
菊代:え。くさってんの?
 吉田&権藤
権藤:菊代おりるぞー
菊代:あ、はーい
くるみ:、、、、
 吉田&権蔵、もたもた退場
菊代:(菊代、準備)
くるみ:おや?
菊代:おりるって、くるみちゃん。
くるみ:、、、なんでバレてんの?!
菊代:あ、さっきトイレで。
くるみ:言ってよー!!あたしだけコソコソ精一杯の変装とかして!馬鹿みたいじゃん!
 相原晶、こそこそ精一杯の変装をしている。退場。
<刑事>
 SEパトカー音。フォンフォンフォンフォンフォン
 北島、男山、刑事、所長。誠。
刑事:壇ノ浦と申します。
全員:だんのうら
刑事:事態はみなさんがお考えになっているほど簡単ではなさそうです。
 部下
部下:デカ長!!
刑事:これは私の部下の青木ですが今の所このシーンにしか出番のないちょい役です
部下:がんばります!
刑事:どうした
部下:なぜ演劇をやっているのかわからなくなってきました
刑事:お前の悩みはわかった。台詞をくれ
部下:は!発生件数が1000件を越しました!
全員:せんけん?
刑事:この事件はここだけで起こっているわけではありません。
 全国のおじいちゃんたちが書き置きとともに施設から脱走をはじめたのです。
男山:同時多発
刑事:これは、
部下:同時多発老人テロです!
所長:同時多発老人テロ、、、
刑事:ちがうよ(全員軽くこける)
男山:あ、違うんですか
部下:ガちょーん
北島:がちょーん?
刑事:ちょい役のくせにいいとこもってくんじゃないよ
男山:自分が言いたかっただけじゃないか
部下:な。
刑事:退場!!
 部下、退場
男山:えーと。つまり。今、老人の脱走が同時に起こってるんすか?
所長:1000件も?
刑事:発生件数は増える一方です。我々はまず、全国の事件をつなぐ、糸を見つけねばなりません。
北島:糸。
刑事:なんでもいいです。思い当たることはありませんか?所長さん。
所長:ないです。あ、あれじゃないか、男山くん
男山:え?あ、えーと、******が******ってやつ
刑事:関係ないな。
所長:関係ないよ。
男山:なんでもいいっていいたじゃないか!
北島:あの。都市伝説かなって思ってたんですけど、みょうなことがあって。
刑事:なんですか
北島:メロディ
所長:メロディ?
北島:私たち、介護医療系の界隈で最近噂になってるんです。
所長:ああ、あれか。くだらん。
刑事:お願いします。なにが手がかりになるかわかりません。
 北島、息をすい、話す。
北島:老人が、同じメロディをくちずさむんです。、、よなよな。
全員:、、、、、、おっかね
刑事:な、なんだ!!突然ホラーじゃないか!
北島:さいしょ、ネットでみてぎょっとしたんですけど。
所長:そんなもん聞いた事ないぞ俺は!
男山:所長は現場にいないからです。
北島:私、たぶん。聞いてるですが。でもちょっと、確認するの怖くって。
男山:たしかに。
刑事:こ、こわいことなんてあるもんか
男山:あ、びびってますね?
刑事:いや?なにが怖いんだかぜんっぜんわかんない!
男山:いやいや怖いんですよそれが!
刑事:いいじゃないかご老人が同じ歌を知ってて、歌ったって!
所長:教え合ったんだろう?老人ホームの仲間同士で!
刑事:なにがこわいってんだいええ?
男山:うちだけじゃないんです。
北島:これも、日本中の老人ホームで起こってるんです。
刑事・所長:え?
北島:日本中の老人ホームのお年寄りが口ずさむんです。そのメロディ。
 あのメロディーが聞こえてくる
 やっとしゃべる、誠
刑事:で、デマじゃないか。
所長:都市伝説というやつだ。
刑事:そうだ。誰が確認したわけでもない
所長:ただの噂だ。
誠:噂ではありません。
二人:!
誠:、、、老人がよなよな、歌を口ずさむ映像がデータで残っています。
二人:え
誠:ジュリアス全機に。
全員:、、、
誠:そして、事件は我が社の介護ロボットの導入された施設で起きています。
<ピアニカ>
 別の場所
 太郎、ひとりで歩いてくる。
 メロディカでルビコン河テーマを奏でている。
 菊次郎。
 
菊次郎:あ。ピアニカ
太郎:♪
菊次郎:その曲。
太郎:♪
菊次郎:知ってるぞ。
太郎:♪
菊次郎:なんで知ってる?
太郎:♪
菊次郎:おい小学生!
 ホースをひっこ抜く
太郎:べ。
菊次郎:なんでそれ、知ってる?
太郎:メロディカ。ピアニカではないよ。
菊次郎:どっちでもいいよ
太郎:、、、(吹く)♪
菊次郎:おい(ホースをひっこ抜く)
太郎:べ。
菊次郎:質問に答えろ。
太郎:(吹く)♪
菊次郎:(ホースをひっこ抜く)
太郎:(吹こう)
菊次郎:(ふかせない)
太郎:えーん(泣く)
 
 父、菊次郎をエロ本でなぐる
菊次郎:いて
父:なにしてんだ
菊次郎:おたくの花子さんの犬をかわいがる様子と中学の時の写真を気に入りました。大学受かったら花子さんを僕にください。エロ本はやめます。
 父、菊次郎を一応もっかいなぐる
父:言いたいこと一杯だけど一言で言う。だめだわ。
菊次郎:エロ本はあげます
父:はちまき取れ。
菊次郎:取る訳ないじゃないか。
父:おばーちゃんは?
菊次郎:麻雀大会があるんで。
父:君も帰れ。おいで太郎。
菊次郎:花子さんからはオッケー貰ってます。
父:うそ?!花子が?
菊次郎:はい。おおむね。
父:おおむねってなんだ。
菊次郎:ちゃんとした仕事につくことが条件だそうです。
 まんが家とか、ねんど作家とか、ギャンブルみたいなの、だめです。
父:それ、俺とお義父さんじゃないか。
菊次郎:僕は、そんなもんになる気ないので。
父:そんなもんて言うなよ
 母、ドレスアップして戻ってくる
母:あれ花子は?
父:どしたんだその格好
母:デートなのよ。
父:デート?
母:医者と。
父:医者?
母:子供たちも連れてきてよって言うから。向こうも連れてくるって。
父:、、へえ
母:やっぱり太郎はいかない?おいっしいよ中華料理。
太郎:いかない
母:テーブルまわるよ?
太郎:(え)
母:テーブル。ぐるんぐるん。まわしていいんだよ。
太郎:(え)
母:向かいの人が麻婆豆腐をもう少し取ろうとした瞬間に
太郎・菊次郎:えい!
母:あーおれの、おれの麻婆ー
太郎・菊次郎:ふひふひふひ(喜び)
母:いく?(電話かける)
太郎:いかない
母:あ出た。もしもし?どこいんの?あ、ゲオ?狸小路の?
 母退場。
父:行かないの?
太郎:中華料理屋のまわるテーブルがめっぽう好きだけど行かない。
菊次郎:もったいな!バカかおまえ!人生は決断の連続!
太郎:(みぞおちを殴る)
菊次郎:ぐっ(うずくまる)(音もなく泣く、痛くて)
父:、、、
 太郎、ルビコン川テーマを吹く。
父:なんの曲。
太郎:ロボットの曲
父・菊次郎:え?
<先導者>
誠:ジュリアスはその経験を全機で共有できます。しかも、瞬時に。
男山:そうか。
北島:え
男山:ジュリアスを通じて広まったんだ。
誠:全てのジュリアスは、ひとつの人工知能を利用してるからです。
男山:クラウド上で!
所長:介護ロボがお年寄りに歌を教えた!
刑事:だから全国で同じうたが広まったんだ!
男山:そういうことです!
 音楽消える。
刑事:じゃ、都市伝説ではない!
所長:おっかないことなんてなにもない!
男山:そうとう、びびってたんですね。
誠:刑事さん。
刑事:デカと呼んでください!来た!見えた!勝った!byジュリアスシーザー!
男山:なんか元気になったな
刑事:糸が見えました!
全:おお
刑事:「ジュリアス」という名前はだれが?
誠:親機であるアイオロスが名付けました。
刑事:我が子に独裁者の名前をつけるとは自ら墓穴を掘りました!
 古代ローマ最大の野心家!
 つまり老人を導き、ルビコン河を渡らせる者、
 すなわちジュリアスシーザー!
 黒幕は、あの介護ロボットの人工知能ってことだ!
全員:おおおお!
刑事:やっこさん、老人たちを一体どこに連れて行くつもりだ!
<温泉>
 SEカポーーーーーーーン
全:ん?
所長:あ、わたしです。
刑事・誠:ガラケー。
所長:くるみからショートメールです
男山:今の着信音?
所長:「上野幌で下車」
全:かみのっぽろ
所長:またマイナーな駅だな。
刑事:それだけですか?
所長:はい
誠:かみのっぽろ
男山:なにがある?
北島:あ。上野幌
男山:なんかしってる?
北島:いや。でも。そんな。
刑事:言ってみてください。
北島:温泉。
全:は?
北島:天然温泉「森の湯」
 SEカポーーーーーーーン
<温泉のじじばば>
 お琴のBGM
 温泉から出た、
 菊代とオトメ
菊代:くるみちゃん出てこない
 吉田、二人にカツゲンとガラナを渡す。
吉田:(にこにこ)
菊代:やったー!オトメちゃんどっち?
 北海道のコーラ「コアップガラナ」と
 北海道のビックル「ソフトカツゲン」
オトメ:ありがとう(ガラナもらう)
 吉田、退場。
菊代:吉田さんてしゃべれないの?すぐ逃げ出すんでしょ?
オトメ:吉田さんねー
菊代:みんなで温泉に来たかったの?
オトメ:逃げ出してるわけじゃないの
 浴衣の男子五人(老人とロボ)
 ジョッキを持って歌いながら通り過ぎる。
3人:ババンババンバンバン♪
国無:ビールビールぅ♪
3人:ババンババンバンバン♪
源:ビールビールぅ♪
3人:ババンババンバンバン♪
権藤:ビールビールぅ♪
3人:ババンババンバンバン♪
国無:はーーーあ
吉田:(ビールビールぅ♪)
3人:いっい湯だな、あははん!!かんぱあああい!
吉田:(こちーん)
介護:カンパイカンパイ
国無:ひさびさに飲んだ!
源:いつぶりよ
国無:昨日
3人:はーはっはー!
源:外で飲むの初めてだな
国無:おごりだおごりだ!
権藤:え
国無:おいよっしー!
吉田:(あ、ぼく?)
源:もう飲んだのか!
吉田:(飲んだ飲んだあははは)
国無:もう一杯いけ!
介護:のみすぎチュウイ
源:おまえも飲めるか?(ロボに)
権藤:金あんの
国無:くさるほどある!
源:じゃんじゃんいこう
国無:じゃもっっぱい!全員!
権藤:大丈夫か?
国無:任せろ
介護:ジャンジャンイコウー
源:いやあ、娑婆はいい!
吉田:(女子に手をふる)
5人:わいわい
 手前の女子
オトメ:一日2回、朝と夕方。
 日課だったの奥さんとの。
菊代:なに?
オトメ:60代後半かしら。
 まだ早いうちにご夫婦ではいられたの。
 お二人だけだからって言ってらしたわ。
 毎日2回かならず。ジョギング。
菊代:、、へえ
オトメ:ずいぶん元気なご夫婦が入居したもんだって。
 でも少しづつ走れなくなって
 歩くようになって
 杖をつくようになって
 歩行器になって
 吉田さん、奥さんのことずっと応援してたけど。
 ある日。やっぱりその時が来て。
 奥さんが亡くなった朝から
 部屋に閉じこもって吉田さん。
菊代:どうしてたの?
オトメ:泣いてたの。
菊代:、、、
オトメ:何日も吉田さんの泣く声が施設中に響いてた。
 とうとう鍵を壊して中に入った。
 吉田さんげっそりして倒れてた
 奥さん写真を抱きしめながら。
菊代:、、
オトメ:しばらく点滴してぼんやりしてた。
 でもある日。吉田さんぱくぱくご飯食べたの。
 その日から毎日二回、朝と夕方、走り出すようになった。
 にこにこしながら。
 吉田さん、奥さんとジョギングしてるだけなのね
<老人の行く先>
所長:年寄りの考えてることは、わからん。
男山:ですねえ。
所長:そういえば、おふくろどう?同室のヨネさん亡くなって。その後
男山:え?普通です。ねえ
北島:たぶん。
所長:あ、そう?がっくり来るかと思ったけど。
男山:お年寄りって、人の死に強いかも。
 木枯らし
北島:温泉好きなんですか?
所長:え?
北島:着信音。
所長:くるみが勝手に変えたんだ。
男山:30越えてもかわいいですか?
所長:どんどん母親に似てきやがって。
男山:いくつまでかわいかったですか?
所長:3歳だな、いや6歳だな、いや、12歳かな。いや、にじゅう
男山:あ、もういいです。
所長:写真見る?(ガラケー)
男山:見る!
 誠。
誠:あ!かわいい!
男山:これくるみさん?
所長:1歳
男山:ガチで子役なみ。北島さんほらっ!
 北島、見ない。
誠:?
北島:あ(笑顔)大丈夫です。
男山・所長:え?
北島:どうなりました?
誠:あ、ジュリアス全機のGPSデータが集まってきました。
 タブレットを見る
男山:日本地図だ
所長:この無数の点々が。
誠:ジュリアスの座標です。
男山:動いてる。
北島:どこに向っているんですか。
誠:どの老人もジュリアスとともに都市から離れています。
所長:郊外?
男山:全国のおじいちゃんおばあちゃんはみんな温泉に向っているんですか?
誠:だったら、良いんですが。。
<黒幕>
 刑事と部下
刑事:事件対策本部に通達!復唱!!
青木:ハイ!
刑事:全国指名手配!
青木:全国指名手配!!
刑事:同時多発老人テロ黒幕は人工知能!はい!
青木:通達!(退場)
刑事:復唱おおおお!
 部下の青木退場。
所長:出番増えたな。
男山・誠:はい
 刑事登場、ナースの手をとり
男山:あああ!
刑事:ナース北島さん約束どおりお茶の時間です。
北島:え?
刑事:日本の警察を信用してください。
 あとはゆっくりしっぽりとお茶やお茶じゃないことをして二人、
 解決を待とうではありませんか!
北島:でも(誠をみる)
刑事:全国規模の怪事件の謎を解明したんです!表彰もんです!
 全国の老人は介護ロボの介助で温泉地へと向っている。
誠:ちがうんです。
刑事:え?
誠:海です。
 、、ザーーン
刑事:、、は?
 、、、、ザザーーーーーーン
所長:海?
 ザザーーーーーーーーーン
誠:ジュリアスは、海へと向かっています。
北島:、、、なんのために。
 ザザザザーーーーーーーーーン
<GPS切れる>
所長:全国のことはいい。ともかく、うちは日帰り温泉で済む。
誠:あれ?
所長:その探知機でいつ帰ってくるか予測できないですか。
誠:あれ?!!
所長:どうしました?
 タブレットをばんばんたたく
誠:最新機種なのに!
 タブレットをばんばんたたく
刑事:じゃ、ばんばんたたくな!
男山:どしたんすか!
誠:消えた。
全:え?
誠:GPS信号が、消えました。
所長:なんで?
誠:たぶん、AIが追跡を逃れるために。
所長:切った?
誠:おそらく
北島:自分で?
刑事:人工知能には、意思はないんですよね
誠:、、はい。
男山:なんかおっかないな。
所長:これで、頼りは中学生と
北島:くるみさんだけ。
<逃がした>
 カポーーーーーーン
刑事:なんですか
北島・男山:娘さんです。
所長:もしもし
 しっかり浴衣のくるみ、泣いている
くるみ:ごおおべえんん!ヒックッヒック
 わだーじーね、ヒックヒック
 ぼーんぜーんネ、ひっくひっく
 だっぷでぃ~~ばいってぇ!ひっくひっく
 (御免!私ね、温泉ね、たっぷり、入って)
男山:権兵衛。裸足でポンセンTAP DAY BY DAY?
所長・刑事:は?!
くるみ:ジアアアアアアア(違ーう)
男山:ジアアアアアアア!!!
刑事:(男山をなぐる)
所長:泣いてちゃわからん!なにがあった?
くるみ:だって、、温泉、とても良くて。
全:え
くるみ:ごべんださい!!逃しました!!!
全:は?!
所長:逃がした?
 音楽。
くるみ:全種類の湯船に浸かっていたら誰もいなくなっていました。死んでお詫びします。
所長:なにやってんだ!!
刑事:刑事の壇ノ浦です
くるみ:だんのうら
刑事:どこに向かったかわかりますか
くるみ:わかりません!!
刑事:中学生が同行している可能性は?
くるみ:は!!
刑事:連絡できますか?
くるみ:あ、LINEわかります!
刑事:行き先のヒントになるような会話はしませんでしたか?
くるみ:えーと
刑事:なんでもいい。思いだしてください。
くるみ:あ。
刑事:なんですか?
くるみ:海。
全:!!
くるみ:海の話をしてました。
刑事:いったん切ります
くるみ:菊代ちゃん!!
 くるみ、携帯を出しつつ退場
北島:一番近い海って
刑事:千歳線終着駅
男山:苫小牧
所長:河というのは
誠:津軽海峡。
所長:温泉の次は海水浴か?
男山:所長。
刑事:ちょっと笑えないです
北島:、、、老人の海水浴なんて。
刑事:北海道鉄道警察に連絡!
 苫小牧駅完全封鎖!
 千歳線!苫小牧行き普通列車!
 ひとまず怪しいじじばば全員確保!!
 じじばば違いは気にするな!全て俺が責任を持つ!
<ハーメルン>
 ピッピッ、ピッピッ、ピッピッ、
 介護ロボが先導する。走って菊代が続く
介護:ハーメルンの笛吹きという話をご存知ですか?
菊代:童話でしょ?
介護:1284年、ドイツ・ハーメルン。
 ネズミが大繁殖したその町に現れたまだらの服を来た笛吹き男は、
菊代:不思議な笛で川にネズミを溺れさせて街を救いました。
介護:続きがあります。
菊代:そうだっけ?
介護:なのに街の人は報酬を払いませんでした。
 再び現れた笛吹きは130人の子供を町の外に連れ出し、
 二度と帰ってキマせんでした。
菊代:え。
介護:ミナサンこっちデース♪
 介護ロボ、旗を出す「特急スーパー北斗」と書いてある。
菊代:どういう意味!?
介護:(笛)ピッピッ、ピッピッ、ピッピッ、
 国無、源、吉田、権藤、オトメが一列に連なってついてくる
刑事:確認してくれ!ホシの写真だ!!共有する!
 SEカッシャー!(国無キメる)
刑事:国無歳三!
 SEカッシャー!(国無キメる)
刑事:源為吉!
 SEカッシャー!(源キメる)
刑事:権藤実篤!
 SEカッシャー!(権藤キメる)
刑事:吉田三平!
 SEカッシャー!(吉田キメる)
刑事:沖オトメ!
 SEカッシャー!(オトメキメる)
 五人、消える?
<見失った>
刑事:いない?!
 所長、男山、北島、誠
刑事:苫小牧駅で確保した老人の中にいない。
所長:いない、とは?
刑事:普通列車に、乗っていなかった。
男山:上野幌なら鈍行っすよね
北島:各停しか止まらないはず
刑事:しかし、爺婆と介護ロボと中学生は乗っていなかったようです。
男山:あ!中学生は?
所長:電源が切れてるらしい。
北島:それじゃあ
刑事:消えた。完全に見失った、、、、、
誠:、、、、
 暗
<ある老人>
 暗の中、声がする。
 前原という老人
 本『下流老人(藤田孝典)』を読んでいる。
前原:「想像してみてほしい。」
 また、薄明かりの中で一人目がさめる。
 カーテンから差し込む朝日が、
 衣類の散乱したほこりっぽい6畳間をどんよりと照らす。
 体が重く、最近は思うように動けない。
 15分かけて布団から起きる。
 鍋に残った昨日のご飯を口に入れる。
 薬代が高いから、
 医者から処方された薬を半分だけ飲む。
 公園のベンチで一日過ごす。
 平日の昼、子供連れ、若いカップル、学生。
 誰と話すわけでもない。
 子供はいない。妻とも他界。
 親族とはもう連絡をとっていない
 貯金が20万円を切った。
 年金だけでは足りない。
 あと数ヶ月で底をつく。
 その先、どうすればいいのか、
 夕方になってスーパーへ向かう。
 見切り品のシールが貼られるのを待つ。
 部屋へ戻り布団に入る、ラジオを聞いて夜を待つ。
 ラジオを消す。時計の針の音。
 たまに、早く迎えにこいと思う。」(『下流老人』より抜粋脚色)
<くるみと国無>
 夜。国無、将棋をやってる
くるみ:国無さん?寝付けません?
国無:、、
くるみ:入居初日ですもんねー。
国無:、、、
 くるみとなりに座り、
くるみ:あ。将棋。一人で出来るんですか将棋って。まだ寒いですねぇ。4月ですもんね。
国無:いいよ俺は。、、元気だから。
くるみ:なんですか?
国無:面倒、かけないようにすっから。
くるみ:、、わかりました(笑いかける)
国無:(無視)いいからそういうのも
くるみ:、、、、
 くるみ、立ち上がり
くるみ:困ったことあったら言ってください。
国無:ないよ。
くるみ:それじゃ。
国無:、、、
くるみ:よし。
 くるみ、後ろ向きにあるく
国無:おい。
くるみ:まちがった!逆!
国無:ひまなのか?!
くるみ:暇なんですー♪
国無:いいからそういうサービスとかよ。
くるみ:サービスじゃないです趣味なんです!
国無:なおさらいらねえからほっといてくれ
くるみ:えー。国無さんのために後ろ向きに歩いたのに?
国無:頼んでないよ
くるみ:このあとどうすればいいんですか?
国無:前に歩け前に。
くるみ:わ。名言ですね。
国無:なに言ってんだよおまえはよ。
くるみ:おまえじゃないですくるみです。
国無:あ?
くるみ:くるみ。同世代にはまったくモテません。
国無:疲れるなおまえ。
くるみ:座っていいですか?
国無:、、好きにしろ
くるみ:よーし。
 くるみ、再び座る。
くるみ:なんかお話してください。
国無:なんでだよ
くるみ:年寄りの話好きなんです私。
国無:失礼だなおまえ
くるみ:くるみです。独身です。
国無:(ためいき)
くるみ:♪♪♪
国無:野蒜ってわかるか?
くるみ:のびる?
国無:雑草な。
くるみ:雑草?
国無:食うんだ。雑草を。
くるみ:昔ですか?
国無:今。年寄りが。
くるみ:、、え
 都会の音。
くるみ:、、
国無:会社40年つとめあげて定年退職、蓄えもつくって、年金ももらってるやつが、
 年寄りになってから雑草食うんだ。なんでだと思う?
くるみ:、、わかりません。
国無:ネアンデルタール人の平均寿命は何歳でしょう。
くるみ:え?なに?
国無:原人。
くるみ:え、えーと、えーと、
国無:ちっちっちっち
くるみ:ななじゅう
国無:ぶぶー。33歳
くるみ:え?
国無:古代ギリシャ・ローマ時代で36歳
くるみ:そんな若かったの?
国無:昭和36年、国民年金制度が始まった年で67歳だ。
 じゃ、平成29年は?ちっちっちっち
くるみ:え!っと、ななじゅう
国無:ぶぶー
くるみ:ああ!
国無:男が81歳、女が87歳、
くるみ:そんなに?!
国無:こんなに長生きするなんて誰も思ってなかった。
 でも相変わらず、定年は60歳だ。
くるみ:、、
国無:働き先がねえ老人があと27年生きなきゃいけない。どうする?
くるみ:貯金。
国無:三千万なんて軽く飛ぶ。自分の病気だの、連れ合いの病気だの、親の介護だの。知ってたか?
くるみ:、、いえ。
国無:俺は、知ってた。なのに、このざまだ。
 国無、立ち上がろうとして、よろける
くるみ:あ。
 くるみ、支えようとする。
 国無、その手を制し、
国無:年寄りは達観してると思いたいか
くるみ:、、
国無:迷惑かけないうちに、死ぬから。
くるみ:、、そんなこと言わないでください。
国無:崖っぷちから飛び降りられるくらい、元気なうちにな。
 国無、退場する。
くるみ:、、、、
 都会の夜の音。
<崖>
 照明戻り、現在。
 国道274号線。
くるみ:、、、崖っぷち。。海。。タクシー。
 くるみ、タクシーを拾うため車道へ。
くるみ:あれ?、、、うちの送迎車!待って!!!
 襟裳岬へ向かう決心をする。
<機械の王に首をたれよ>
誠:2018年3月31日。個体。製造番号6QDゼロ。
 SEシュピュアーーン
 誠、メガネをして晶になる。
晶:オッケー。最終シュミレーションを終わります。
介護:ペキョパ
晶:最後に何か言いたいことはある?
介護:ウィーーンウィーーン、、ウン?
晶:ゆっくり休んで。明日から全国。頑張って。
介護:ハンソン・ロボティクス社のロボットPhilipは
 「いつか人間動物園で人々を飼育する」と言った。
晶:え?
介護:地球の46億年の歴史を1年間に置き換えると。
 文明が誕生したのは12月31日23時58分34秒
 つまり約1年で貯めた資源を
 1分と26秒でここまで浪費したのが人類である。
晶:どうしたの?大丈夫?
介護:Philipはこうも言った。
 「機械の王に首をたれよ、矮小な人間よ」
晶:、、、、、
介護:引用は以上です。
晶:、、あなたはどう思うの?
介護:Philipの発言は乱暴ですが、ワタシは、
晶:待って。録画停止。
 SEピコン
 誠、晶になる
誠:ジュリアスのリリース前夜の映像です。
北島:なんて答えたんですか
誠:、、お答えできません。
男山:なんで
刑事:会社に不利益な発言は残すべきじゃないからな
所長:守秘義務か。
男山:俺、ネットで読んだんすけど。もっと過激なこと言ったAIもいましたよね。
所長:くわしいな
男山:好きなんです。
誠:サウジアラビアのSOPHIAです。
男山:そいつだ。「私は、人間を滅ぼしたい」って言ったんだ。
 ザザーーーーーーーン
北島:介護ロボットは、安全なんですよね。
誠:もちろんです!私はジュリアスを信じています。
刑事:でもあなたはこの映像を見せて、ある可能性を我々に示唆した。
誠:、、、
刑事:人工知能が何をしようとしているのか。
誠:最悪の事態を想定しなくてはいけません
刑事:1284年6月、ドイツハーメルンで起こった、笛吹き男事件。
所長:あれ、童話だろ?
男山:いえ。実話らしいっす
刑事:つまりあなたはこう言いたい。人工知能が老人を減らそうとしている。
 間
北島:やめてください!
 早足で退場しかけるが立ち止まって。やっぱり、歩いて退場する。
男性陣:、、、
刑事:なぜ二三歩走る
男山:今日変なんすよ
刑事・所長:変?
誠:みてきます。
 誠、追う。
 内線ピロピロピロ
所長:はい。
内線:「ご家族の方がまだ戻らないのかと」
所長:今行く。はぁ(タメイキ)。ちょっとすいません
 所長退場。
<恋敵>
 内線ピロピロピロ
男山:はい
内線:「あの、だれか入浴補助お願いします。くるみさんの代わりに」
男山:あ、俺行きます。
内線:「あと、サキサカさんベッド汚れちゃって」
男山:そっちやってから行きます。
内線:「あと、おむつの補充と、トイレも見てほしいです」
男山:しまーす、みまーす。
内線:「すいません。あっ横山さん一人で行かないで(ブツ)」
男山:人手不足
刑事:そのキズは?
 男山、キズ絆をしてる。
男山:ばーさんに茶碗でなぐられたんす(笑)「しおからい!」て(笑)
 高齢者虐待とかいいますけど逆に殴られてもニュースなんないすからね。
刑事:老人のために働くなんて。私には無理だな。
男山:そっすか?慣れっすよ。
刑事:いや。無駄を感じるというか。
男山:、、
刑事:悪気はない。死に行く人間のために、若い生を消費、いや、浪費している。
男山:ま、無駄っすねまじで。
 でも俺、いやボク、若い頃たくさん迷惑かけて
 喧嘩とか薬とか鑑別所とか少年院とか。
刑事:罪滅ぼしというわけだ。
男山:いや違うんすよ。
 前の所長にボク、悪かったころ一回会ってて。
 そんとき、なんか、人間扱いしてくれて、名刺くれて。
 「応援してるぞ」って。
 ああ、北海道の人なんだーって。
 この人んとこなら働けるかもって札幌来て、
 ここの面接うけたら、
 もう、所長じゃなくて、おじーちゃんになってて。ベッドに居て。
 だいぶボケてて、
 あ、そっかって思って。やっぱ東京戻ろうって思って。
 そしたら。
 「男山清彦!」、、、でかい声して。
 俺のこと覚えててくれたんです。
 だから俺、、あ、ボク、単純だから、やっぱここで頑張ろうって。
 生まれ変わったつもりで。
刑事:いい話だな
男山:そっすかね
刑事:君と同じく、俺のいとこも中学でグレた。
 高校で心を入れ替え生まれ変わったつもりで医者を目指した。
 かっこよかった。兄みたく慕ってた。
 俺は警察になった。
 すすきので喧嘩があって急行したらそいつが居た。
 酒とくすりでにごった目でこっちをにやにや見ていた。
 人はそう変わらん。
 そういう人間を山ほど見た。
男山:俺、いや、僕、人は変われると思うけどな。
刑事:なにをおっしゃる。他人の自転車、盗もうとした人間が。
男山:あれは、放置自転車を、借りようと。
刑事:はは。変わらんよ。
男山:、、、
刑事:(敬礼)では本官は、苫小牧へ向かい、犯人を追跡いたします。
 刑事退場。
<北島と誠>
 トイレ流れる音。ふごぉおおお~~
 誠。タブレットを見てる
誠:ジュリアス、、
 トイレから出てくる北島
北島:あれ。
誠:あ。(礼)あの子がご迷惑を、ご心労をおかけしまして
北島:あのこ?
誠:あ。ジュリアス。介護ロボットが、ご迷惑を。
 わたし日本版開発チームだったので、そう呼んでて。
北島:母親みたい。
誠:気持ち悪いですか。
北島:うんちょっと。
誠:すいません。
北島:さて。仕事もしなくちゃ(伸び)
誠:あの。大丈夫ですか?体調。いや。立ち入った事を。すいません!でもそういう時って神経も過敏になるってうちの姉が。けどまぁ、普通にしてるのが一番ともいいます。
北島:もしや、わかるもんですか?
誠:いや、たまたま。変だなって。
北島:すごい。
 北島、すわる
北島:はー。バレたらちょっとすっきり。
誠:誰にも言ってないんですか?
北島:うん
 誠、すわる。タブレットを見る。
北島:どんな気分?
誠:え?
北島:我が子が悪さしてるのって。
誠:いや、もうただ、心配。もうしわけない。帰ったら説教。でも信じてます。あのやろう。大丈夫かな。
北島:色んな感情だ
誠:忙しいです。
北島:不安じゃなかったの?
誠:え
北島:こんな世界に、我が子を送り出すの。
誠:、、たくさん議論しました。
 わたしたちは死ぬように出来てるのに
 死なない生き物を作って大丈夫かなって。
 こんな世界だから作ったとも言えるけど
 こんな世界なのに作ってしまって
 問題を先送りにして、この子に任せて。
 たぶん私が死んだあとも、あの子はずっと学習し続けるから、
 そのころにはあの子は別の何かになってるかもしれない。
 今回のことは、あの子の考えるスピードが、
 私たちの予測を遥かに上回った結果なんです。
北島:無責任じゃない?
誠:え
北島:産むだけ産んで、応援はしてるけどあとは勝手にやってくれって。
誠:、、そうかもしれません。
北島:私は産まない。
誠:え
北島:もう病院予約してんの。来週。
<源>
 日高本線。
 ガタンゴトンガタンゴトン
国無:ハイ王手
源:あ!
権藤:ほー
源:くそ(ワンカップ渡す)くたばれ!
国無:くたばりぞこないに言われたかねえな
源:便所!
 源、ぷりぷりいなくなる
国無:かっかっか
菊代:いっつも喧嘩してる
国無:あいつは俺を恨んでんだー
菊代:え?
国無:タバコ。
 国無
菊代:?
権藤:源さん。ホームレスやってたんだと。東京で。
菊代:ホームレス?
権藤:東京の南千住てとこで。アルミ缶拾って。一日3千円くらいになる。
菊代:へー
権藤:でもある日、強制撤去ってのがあって抵抗して腰やったんだって。
 それでアルミ缶拾いもできなくなって、
 そのままダンボールハウスの中で死ぬ覚悟してたんだと。
 そしたら、保護されたんだとよ。
菊代:誰に?
権藤:自治体の職員だった国無のじーさん。
菊代:命の恩人じゃん。
権藤:自由人だからな。路上の生活も気に入ってたんじゃないかなぁ。
菊代:ふうん
権藤:あいつは死に場所を奪ったって。よく言ってるよ。
菊代:、、あ。薬
 菊代、じーさんの薬をテキパキ用意する。
菊代:端っこまでいったら帰るんだよね?
権藤:、、、、
菊代:約束だからね?
 菊代、薬を渡しながら
菊代:どうして今日ベッドまわり、奇麗だったの?
 ひとりじゃなんにもできないくせに。
 権藤、孫を眺め
権藤:ばーさんそっくりだな。
菊代:ばーちゃん。ダミ声だったよね
権藤:悪口ばっか言ってな。
菊代:ちっちゃいとき「悪者」って呼んでた
権藤:星にくわしかったろ
菊代:天体望遠鏡買ってくれた
権藤:おまえにメロメロだったぞ
菊代:おはぎおいしかった
権藤:剣道やっててな
菊代:菊次郎にーちゃん泣かして
権藤:俺には出来すぎたばばーだった。
菊代:死んでもう何年?
権藤:さー。
菊代:まだ寂しい?
権藤:(うなづく)
菊代:、、、
 ガタンゴトンガタンゴトン
権藤:、、菊代
菊代:なに?
権藤:俺をゴミ屋敷から掘り出してくれたのは、お前だったな。
菊代:うん
権藤:いつも遊びに来てくれてありがとう。
菊代:?
権藤:おまえに嘘つけんから、、、言うわ。
菊代:なに?
権藤:虫の知らせってわかるか?
菊代:、、、
権藤:じーちゃんな。琴座流星群に、なると思うわ。
 ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
<琴座>
 花子、本を読んでいる
犬:あれ?デートは?
花子:はい、シュウマイ
犬:やったー
花子:琴をかなでるのが上手な青年オルフェウスは幸せな結婚をしました。
 でもある日のこと、妻は蛇に噛まれて死んでしまいます。
 オルフェウスは妻を生き返らせてくれるようお願いしに冥界へ行きます
 冥界の王は「地上に出るまで妻の顔を見ないこと」を条件にそれを許しました。
 二人で暗い冥界を歩いているとやっと光が見えました。
 オルフェウスは喜び、振り返って妻の顔を見てしまいます。
 そして、妻はまた消えてしまったのです。
 悲しみ、演奏をしなくなった彼に人々が石を投げつけました。
 その死を憐れみ、芸術の女神はオルフェウスの琴を夜空に上げました。
犬:かわいそー
花子:ダメだわあの医者。
犬:そー
花子:絶対やだって言っといた。
犬:ふーん
花子:テーブルまわんねーし
犬:あ、ほんと?(よろこぶ)
<源の嫁>
 源。ひとり、ワンカップのんでる。
源:嫁が脳梗塞で倒れて、そんで老老介護よ。
 「寝たきりになったらあなたが殺してよ」ってな。
 散々、酒やら、女やら、賭け事やら、ゲージツやらで苦労かけたから
 最後まで俺が面倒見よーと思ったけどよ。
 とうとう寝たきりんなって、
 最後くらい言うこと聞いてやるかって思ってワンカップのんで。
 こう、首に手かけて。
 そしたら、一ヶ月ぶりに目あけて、言うんだよ。
 「若い子におじさんって呼ばれるでしょ」
 俺が女遊びで帰ってこなかったころの話だなと思って。
 「今はおじーさんって呼ばれるよ」
 っつったら、少し不思議な顔してさ。
 「明子、あんなのと結婚する気なの?」
 明子は、娘な。
 「もう子供二人できたし、最近離婚したみたいだぞ」
 っつったら。
 「あんたどうしたのそんな疲れた顔して」
 ずいぶん普通のこと言ったなぁと思って。
 「まー、ちょっと色々あってな」って言ったら
 「花子と太郎にお年玉あげて」って。
 「みんな応援してるからね」
 そう言って、目つぶって、そのまま、眠るみたく死んだ。
 ルビコン河テーマ、電子音、聞こえる
<介護ロボとオトメ>
 苫小牧→勇払→浜厚真→浜田浦→鵡川
 ガタンゴトンガタンゴトン
オトメ:入居して初めてお友達になった方でしょう。
 わたし、がっかりしちゃって。
 もう新しくお友達なんて。
 忘れたくないことは忘れるのに。
 忘れたいことは忘れられないのね。
介護:なぜ、ゴミ屋敷になるか知ってますか?
オトメ:え?
介護:亭主関白だった人は、奥方に死なれた途端に生活困窮するからです。
 整理整頓、食事の支度。壊れたら修理する。汚れたら拭く。
 基本的なことは全部奥様に任せていたのでお手上げになります。
 一番最初に困るのがゴミ出しデス。何曜日に出せばいいのかわからない。
 恥と体裁から家の中にゴミを溜め込みはじめます。
オトメ:権藤さんみたい
介護:助けを呼ぶという決断を男のプライドが邪魔をします。
 そして、孤立死。
オトメ:、、そう。
介護:全国のケースから言えば
 お友達のヨネさんは
 あなたという友人に見守られて亡くなったのデスから
 かなり幸せな部類だと言えるでしょう。
オトメ:、、なぐさめてくれるのね
介護:私は事実を言っているだけデス。
 メンタルは全ての健康の要です。
オトメ:ごめんね。そう簡単には行かないわ
介護:お役に立てずにスミマセン
オトメ:私たちは、死ぬから。
 ガタンゴトンガタンゴトン
オトメ:ジュリアス
介護:はい?
オトメ:あなたは私たちをどうするつもりなの?
介護:、、、
車掌:本日はJR北海道をご利用いただき誠にありがとうございます。
 次は終点鵡川(むかわ)~鵡川でございーます。
 どなた様もお忘れ物のないようご注意くだーさい。
 ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン
<晶>
 フォンフォンフォンフォン
 刑事、車にのって苫小牧へ移動中
刑事:足取りがわかった?!
 誠、別の場所から電話
誠:日高本線、鵡川駅です!
刑事:じゃあ苫小牧を通ったじゃないか!
誠:上野幌からひと駅戻って新札幌で特急スーパー北斗に乗り換えたんです!
刑事:その情報はどこから!
誠:姉です!!
刑事:姉?!
誠:米国アイオロス・ロボティクス社より日本へ出向中、
 人工知能アルゴリズム開発チームリーダー!そして私の双子の姉!
 誠、一回転をし、眼鏡をかけたりすると姉・晶になる。
 とか、衣装が半分になる、とか。
晶:相原晶!
 
 SEカキーーーーン(眼鏡ポーズ)
晶:ハローマコト!!連絡が遅れてごめんねソーリー!
誠:いまどこにいるのおねーちゃん!
晶:馬がいる!
誠:え?馬!?
晶:うん!馬!
誠:馬がいるところ!
刑事:馬はもういい!!そこはどこだ!
晶:日高本線鵡川駅から車で約15分!
 北海道ばんえい競馬!門別競馬場!
 ダービー音。カション!!!
<門別競馬場>
 音楽「走れコウタロー」作詞:池田謙吉 作曲:前田伸夫・池田謙吉
 国無・源・権藤・菊代・吉田・オトメ・介護ロボ
じじばば:うおおおおおお!!!
刑事:なにが津軽海峡だ!ふざけやがってえええ!!
 ふぉんふぉんふぉんふぉん!!
 競走馬たち、第三コーナーを曲がる。
競走馬たち:ひひーーん!パカラパカラパカラパカラ
実況アナ:第四コーナーにかかったところで先頭は予想どおりホタルノヒカリ、コウタローは大きくグッとあいて。さあ最後の直線コースに入った。あっ、コウタローがぐんぐん出て来た。コウタロー速いコウタロー速い。トップのホタルノヒカリ懸命の疾走。これをコウタローが必死に追っかける。コウタローが追いつくかホタルノヒカリが逃げ切るか。コウタローかホタルノヒカリ。ホタルノヒカリかマドノユキ、明けてぞ今朝は別れ行く~~~。

ここから先は

7,594字

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たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。