見出し画像

リミテッド大予想「イニストラード:真紅の契り」#3 アーキタイプ編

概要

 この記事は、フルスポイラーが公開された「イニストラード:真紅の契り」(以下VOW)の全カードを眺め、リミテッド環境を予想するという、本実装が待ちきれない人間の熱量の袋小路です。
 前回の個別カード評価を踏まえ、この記事#3では、各2色の組み合わせによるデッキアーキタイプとその戦略(勝ち筋)を分析・予想します。

更新履歴

11/9 BR(黒赤)の吸血鬼一覧画像に抜けがあったため追加。

前提

・ドラフトルールに関しては、特記がない限り、MTG ARENAにおける「プレミア・ドラフト」を想定しています。
・この記事は、パック配信・発売が開始する前に書かれた記事であり、実際の環境についてなんら保証するものではありません。ふんだんに妄想が含まれる可能性もあります。
・リミテッド環境に対する考察であるため、レア・神話レアのカードは出現率が低いものとみなし、考察の対象はコモン・アンコモンのカードが中心になります。
・本ページに記載されている画像はすべて、マジック・ザ・ギャザリング公式サイト(https://magic.wizards.com/)を出典としています。特に、以下のページからの引用を含みます。

アーキタイプ

 3本目の本記事はいよいよアーキタイプ評価。プレビューの配信とカードリストより、各2色のアーキタイプを見ていきましょう。

友好色(つながり強め)        希少度分布(枚)
WU(白青):スピリット・オーラ
UB(青黒):ゾンビ・濫用
BR(黒赤):血・吸血鬼
RG(赤緑):狼・狼男
GW(緑白):人間(訓練)
対抗色(つながり弱め)
WB(白黒):ライフゲイン
BG(黒緑):タフネス
GU(緑青):自己切削
UR(青赤):非クリーチャー呪文
RW(赤白):アグロ

 今回は、多色カードの枚数がMIDより少なくなっています。前回は全ての2色にレア2枚、アンコモン2枚が存在していましたが、今回はどちらも1枚ずつに減少。その分、レアカードは単色に増えています。
 色の組み合わせとしては、MID同様、やはり対抗色より友好色※1の組み合わせのほうが、キーワードを共有するなど、つながりが強い印象です。ただし、レア2色土地はMIDの補完的意味合いから、対抗色のスロウランドとなっていますね。
 それでは、各アーキタイプに直接的に関わるカードと、アーキタイプにシナジーのあるカードを、順に見ていきます。そのうえで、各アーキタイプの「勝ち筋」も考慮していきましょう。まずは友好色から。

WU(白青):スピリット・オーラ

 降霊は降霊でもスピリットオーラ。まずは降霊持ちから。

画像6

 全体的には、裏面のオーラはどうしても効果に対して重めのコストのものが多い感じがありますが、トップコモンのおばあちゃんは軽く、「拘束の霊」「塩水漁り」は妥当ラインですかね。表面クリーチャーはマナレシオ1は限られるものの、とても弱いというわけではありません。これらは2回使えるカードとしての調整というところでしょう。
 次に、降霊ではないスピリット及びオーラ。互いに互いへのシナジーを持つカードがいくつか存在しますね。

画像6

画像5

 アーキタイプの戦略とシナジーのあるカードはこちら。

画像6

 最小青1マナで構えられる打ち消し「霊灯の罠」はぜひピックしたいですね。「嵐追いのドレイク」は、オーラをカード・アドバンテージに変える、アーキタイプの最重要クリーチャーになるでしょう。また、UR(青赤)アーキタイプとされている「非クリーチャー呪文」のシナジーカードは、オーラを多く用いるこのアーキタイプにも強力に作用します。
 また、多くなるので割愛していますが、GU(緑青)の「自己切削」も、降霊持ちクリーチャーを墓地に落として使用するのに寄与します。
 アーキタイプ単体で見た場合、勝ち筋は当然「強化して殴る」という形になります。そのため、アーキタイプ参入の動機は、「強化されて嬉しい、メリット能力または回避能力持ち」となります。中でも明確な動機になるトップクラスは以下の2枚。

画像7

 それ以外にも、軽い飛行持ちや、破壊不能付与持ちもおすすめ。降霊持ちの表面スピリットにも、飛行ではないとはいえ、回避能力を持っている子が結構いますね!コモンの「ランタンを携えるもの」「拘束の霊」、アンコモンの「排水路に潜むもの」「撹乱する霊」は点数高めにして良いでしょう。
 攻め以外の観点では、回避能力持ちで殴りつつ、自分はダメージを受けないという動きをつくるために、タフ寄りクリーチャーやタッパーで地上を止めたりバウンスでテンポを稼いだりといった動きも意識したい。
 また、オーラデッキの弱点として、「強化したクリーチャーが除去されると大損」というのがあります。そのため、呪禁付与の「安全の揺り籠」や、白の破壊不能インスタントで守れるようにしておきましょう。
 あと覚えておきたいのが、降霊はオーラとして使ったあと追放されるので、このカニ・ホラーがフィニッシャー採用しやすくなるという点です。コモンだし、単体除去対策に護法もついていて高評価。1枚ピックしたい。

画像8

UB(青黒):ゾンビ・濫用

 青黒はゾンビですが、腐乱ではなく濫用です。生け贄に捧げる関係上、腐乱が欲しくなりますが、そこ(VOW)になければないですね。

画像9

 生け贄を要求するだけあり、どれもボード・アドバンテージを失わない、あるいはそれをハンド・アドバンテージに変換するような能力となっています。濫用はメカニズムですが、「メリットのみの能力ではない」「使用しないことが可能」という点で、濫用もちだからというのは、採用理由としては弱くなるでしょう。なのでむしろ、「濫用によりアドバンテージを極力失わないこと」がデッキとして重要になります。そう考えると、唯一自分以外の濫用でも誘発する「髑髏スカーブ」がいかに重要かがわかりますね。それ以外で、濫用のアド損を減らしたりメリットに変えたりできるのは、以下があります。中でも左上の「悲惨な群れ」は、2マナ2/1と熊を討ち取れ、死んだら後続をサーチするので、100枚ピックしたいですね。(でも唱えるテンポ損を考えると程々に。)

画像10

 あと、他アーキタイプでは青にある「降霊」持ちは、濫用で能動的に墓地に送ってオーラ利用できるというのがいいシナジーですね。
 また、濫用持ち以外のゾンビは以下です(直上に掲載したものも含む)。中には、ゾンビで揃えることで濫用を手助けするようなクリーチャーもあります。

画像11

 しかしこれらのゾンビカード、ゾンビシナジーがそんなにない。そしてそれ以外のゾンビシナジーはこの1枚だけっぽい。まじすか。

画像12

 勝ち筋となると難しいですね……濫用で盤面を減らす関係上、面で攻める戦略は取りにくいため、相手の攻勢を濫用等で削ぎつつ、青の飛行や黒の威迫、青降霊の回避能力オーラで攻める感じでしょうか。地道なアドバンテージが大事なリミテッドで、自ら盤面を減らすというのが難易度高そうです。でかいの1体残して後は濫用したら、そのでかいのを除去られて攻め込まれる、という絵面が容易に想像できますので、ボードの管理はしっかりと。
 参入動機はこのあたりかな。でもあんまり入りたくない気がします。MIDで青黒がトップメタの一角だったことを考えると、雲泥ですね。

画像13

BR(黒赤):血・吸血鬼

 真紅の契りの主役、吸血鬼は、前回同様に黒赤に割り振られています。MIDでは「相手がライフを失っていた場合」のシナジーで、即ち速攻が求められるタイプのアーキタイプでしたが、今回は「血・トークン」。1マナで手札を入れ替える能力は、単体で見るならば、マナに余裕ができつつ手札の有効札を調整したくなる中・終盤に嬉しい能力と言えそうです。
 まず、吸血鬼を全てピックアップ。ほとんどが、血・トークンとのシナジーを形成しています。

画像31

 コモンだけでも、赤の「血花の祝賀者」(2マナ2/1先制)、「好戦的な客人」(3マナ3/2トランプル)、黒の「血に狂った社交家」(4マナ3/3威迫+2/+2修整持ち)と、優秀なクリーチャーだけでマナ・カーブが整っていますね。赤の優秀なコモン火力のサポートもあり、MIDのようなダメージ条件が無くとも、序盤からガンガン攻め立てていくデッキになりそうです。
 ルーティングとしてではなく、コストとしての血・トークン使用を考えても、上記3枚だけで、攻めきるまでの分は確保できそうな感じがします。アンコモンも、コストとしてはそう多くは要求せず、産出面では気軽に血を用意してくれる感じ(それに、ないならないで構わないくらいの性能)なので、以下のような血・トークン生成カードを無理して(正確には、「血・トークンの確保のみを目的として」)採用する必要はないですね。

画像15

 吸血鬼であることを参照するカードの中で最も重要なのが(アンコモンですが)「吸血鬼の復讐」。インスタントタイミングで、吸血鬼以外への2点ダメージ。デッキを吸血鬼で固めていれば、一方的に盤面を壊滅でき、大型クリーチャーも「血花の祝賀者」の先制攻撃射程圏内に落としたりもできるかもしれません。

画像16

 また、「血・トークン」とのシナジーという意味では、「手札を捨てる・手札から捨てられる」ことで機能するカードや、墓地にあって嬉しいカード(リアニメイト対象の大型クリーチャーや、色は違いますが降霊など)と相性がいいことは覚えておきましょう。
 勝ち筋は「アグロ戦略」ですね。さっさと展開してさっさと殴る、邪魔なクリーチャーは戦闘メリット能力や火力で乗り越えて、瞬殺しましょう。万一、中・終盤にもつれ込んだら、「血」を生かして手札の質で勝負。赤にはこの前のめりな戦略に相性のいい狼男やパワー修整があったりしますので活用を。逆に、赤でもUR寄りの「非クリーチャー呪文」シナジーは活用しにくそうです。
 コモンで手軽に構成できる強いアーキタイプですが、参入動機があるとすれば火力(特に軽量のもの)でしょう。中でも、「吸血鬼の復讐」はデッキ全体を吸血鬼で固めることに計り知れないメリットをもたらします。

画像17

RG(赤緑):狼・狼男

 MIDは主役だったのにリミテッドで泣きを見ていることの多かった狼男。果たしてVOWでは人狼はいかほどなりや?

画像18

 全部のせましたが、表裏があるのもあって情報量が多いので、まずはコモンから見ます。赤に2マナ3/2トランプル(実質)、3マナ2/3威迫、緑に4マナ4/4と、中々の攻め手を擁します。赤の4マナ2/6(困憊の在監者)も、序盤は止めつつ夜にできたらドカンと殴れておいしそう。一方で、ライフゲインだったりタフネス修整だったりマナクリだったりと、前のめり戦術とはベクトルの違うものもちらほら。(他アーキタイプ向きですね)
 アンコモンを見れば、育つ子狼に、ティム(火力を飛ばせるクリーチャー)、トークンを生むタイタン(アンコモンにですよ!)と強いカードはいます。特にティムは、接死付与の蠍「毒蠍」と組むことで1ターンのみ「接死ティム」が実現するので覚えておきましょう。今回は、PTの分布や除去を見る感じやや遅そうではあるので、狼も中速くらいで十分強く動けるかもしれません。

画像17

 挙げたカードの中には、狼で固めることで嬉しいカードはいくらかあります(下に再掲)。「飢えた峰狼」「ルーン縛りの狼」「群れ歌の子狼」「狼族ののけ者」……どれも中々強力なシナジーですね。ただ、このためにデッキ戦略に合わない狼男を入れるほどではないかと。むしろ、これらは同胞が1体だけでも機能するものが多く、程々に狼を集めたらあとは汎用カードを優先する形でまとめるのが強そうです。

画像18

 シナジーにこだわらなければ、赤には吸血鬼で、先ほども挙げた優秀なコモンクリーチャーが存在します。低マナ域のアタッカー確保しつつも、タフ4あるコモンでアグロを受け止めて、「中速にサイズで押し切る」勝ち筋が見えますね。ただ、中速というのはマナカーブに沿った動きができないと押し切られたり押し切り損ねたりがあります。参入動機としては難しいですが、中速アタッカーとマナクリが肝ですかね、1ターンでも速く重いクリーチャーが出したいので。

GW(緑白):人間(訓練)

 勝てなきゃ死ぬ。勝てば生きる。戦わなければ勝てない。そんな人間たちの本気のターンです。
 まずは訓練持ち。あれ?思ったより少ないです。

画像19

 全てパワー2以下。確かに、訓練持ちばかり多くて強くても師匠が不在になりますもんね。でもこの子たち、どの子もピックしたいかも。2マナ訓練持ちはマナレシオへの寄与が大きくて言うまでもなく、3マナコモン2枚はそれぞれ飛行とタフ4のおかげで攻撃に参加しても死ににくい、アンコモンフライヤー「騎兵隊」も同様、「補充兵」は師匠(豚)を用意するので完結している、「士官候補生」は(とても重いが)訓練誘発でドローがついてくる(しかも自身に限らないので出たターンに仕事をする)。
 では師匠枠を探してみましょう。基準はパワー3以上、その中でも軽めだったりして使い勝手が良さそうなもの(5マナまで)をピックアップ。

画像21

 アンコモンなら2マナ、コモンなら3マナから師匠がいますね。使い勝手のいい「胞子」はぜひ取りたいところ。また、条件付きであればコモンからも師匠になれる子がいます(「ドーンハルトの信奉者」)。訓練持ちと師匠のバランスは、集会ほど気を遣わなくても、マナカーブを考えたピックで普通にバランス取れそうな気がしますが、一応注意しましょう。多色アンコモンの「シガルダ教の聖騎士」は、師匠になることで自分もトランプル+絆魂になるという恐ろしい師匠ですので、アーキタイプ参入の動機になりますね。
 訓練誘発を狙うことから、単体強化の価値も少し上がります。特に、軽めのオーラや即用装備品が嬉しいか。衣装も軽いしいいんですが、タフネスが上がらないから採用は控えめになりますね。

画像30

 訓練シナジーとしては、訓練済みのクリーチャー限定の「無私の救助犬」がいます(ちゃっかり絆魂もついてくるので嬉しい)。また人間シナジーに、人間の死亡をドローに変えるエンチャントがありますが、ちょっと重いし実用レベルかは疑問視。僕としては「なし」寄りです。

画像22

 勝ち筋は当然、「訓練しながら面で殴る」。横並びしたクリーチャーのどれもが良質であるというのが理想的な戦況です。明確な参入動機は2色アンコモンの「シガルダ教の聖騎士」ですが、これは単体で機能するカードでも、引いたら勝ちのカードでもなく、もう1枚くらい動機がほしくなります。色評価の面からは緑がやや低なので、「序盤に2色アンコモン+どちらかの色の優良カードの2枚を確保した」というやや珍しいパターンよりは、「白をピックしていた→緑の優良カードが取れた/緑が空いていた」のパターンで参入することの方が多そうです。

 ここまでが友好色でした。次の対抗色は、つながりが薄めなのはMIDと同じですが、今回はマルチカラーアンコモンが各組み合わせに1枚ずつしか配られておらず、アーキタイプとしての繋がりが更に弱くなっています。シナジーカードを前回記事の色評価に絡めて、見ていきましょう。

WB(白黒):ライフゲイン

画像23

 ライフゲインをきっかけにメリットを引き起こすのは、この程度です。うーん、アーキタイプの動機がとても薄いですね……2色の「マルコフの浄化師」は、2マナ1ドローをできると考えたら強いですが、これがデッキの核となるかというと悩ましいです。強いて参入するとしたら、「浄化師」+レアにある「アジャニの群れ仲間」もとい「祝福されし者の声」(下段左から2番目)が早期にピックできた場合でしょうか?「希望の鷺」で1点増やすを重ねてめちゃめちゃライフを稼げば、勝ち筋を意識しなくても何となく勝てるかも。逆にライフ差を勝ちにつなげる以外が厳しそう。なので勝ち筋は「殴り合いをライフ差で制する」です。
 黒が色として心許ないので、他のプレイヤーも積極的には取ろうとせず、また白もライフゲインカードは白の友好色(降霊、人間)と強くかぶりはしないことから、総合的には集めやすい色の組み合わせかと思います。しかし、それでもデッキの形にするのは厳しいか。
 あと衣装セットがあります!目指せ+4/+4 接死、先制攻撃!

画像30

BG(黒緑):タフネス

 タフネス偏重。その事実自体は、なんの勝ち筋にもなりません。それを勝利につなげるには、明確なアーキタイプカードを必要とします。

画像24

 左上裏面「カタパルト隊長」の起動効果か、2色アンコモン「古きもつれ樹」と、タフネス13の「不浄なる密集軍」をあわせて、ワンショットキルを狙う感じでしょうか。コンボ寄りの動きかつキーカードがアンコモンなので、成立は難しい(上に即死20点ではない)ですが、まあ流石にPT13/13や13点火力は強いので、動機カードを複数取れたらワンチャンあるかもしれませんね。「密集軍」以外にも、コモンのタフ4は複数(実質を含む)いますし、タフ修整オーラもあります。ただ4点では圧が弱いので、メイン勝ち筋は「コンボによる13点攻撃または投げ飛ばし」でしょう。いや、普通にタフネスでアグロを受け止めつつ別の筋で勝つ、というのもやりたいですが、その別の勝ち筋が自明には存在しないんですよね。かといってこのコンボで勝とうと思っても、コンボなので確実性が低いこと、黒と緑がどちらも弱めであることからも、極力入りたくないアーキタイプです。でも決まったら超気持ちよさそう。

GU(緑青):自己切削

 自己切削により恩恵を受けるカード群はこちら。

画像26

墓地から回収する」「墓地に落ちたことを参照して誘発」「墓地をコストにする」「墓地の枚数で強化」あたりですかね。(墓地をデッキに戻す「未来の目撃」も、デッキ枚数が少ないリミテッドでは「回収」として使えるとみなしています。)「槍馬」「ヤスデ」「剥製師」あたりは、上振れ(早期の着地や十分な墓地枚数)を考えると強いですが、下準備にカードやマナを使うほどかと言われると微妙。でも、青には加えて「降霊」クリーチャーがいますので、切削から降霊をオーラとして使って戦線強化していくスタイルは悪くないかも?いや、MIDと違って「墓地からクリーチャーが出る」ことが無いのが厳しいですね。
 下準備する側のカードがどれくらい強いかというと……

画像26

「残酷な目撃者」は素で優秀な上に誘発で切削(諜報)でき便利ですが、それ以外のコモン・アンコモンは、非クリーチャー呪文でテンポを損するものが多い。クリーチャーでも、クリーチャーを捨てなければいけない「埋葬者」は不便ですし、「大群」は重くてアンコモンなので戦略に合いません。結構しんどそうですね。
 勝ち筋は強いて言えば、「PTやリソースの差で勝つ」。墓地回収で有用カードを使いまわしたり、墓地参照で大きくなるクリーチャーを使ったり、墓地から降霊したりして勝つ。でも、増えるリソースも、テンポ損に見合わなかったり、回収や降霊によって逆に「ヤスデ」らが弱体化したりと、プレイの難易度は高そうです。単純に、「地上を緑の良質クリーチャーで止めて、空から青で攻める」という戦略がとれるならそのほうが強いかも?

UR(青赤):非クリーチャー呪文

 URのアーキタイプは毎度のごとく非クリーチャー呪文シナジーですね。

画像27

 シナジーカードはどれも重め。しかも、「貯蔵スカーブ」「さまよう心」以外は、「シナジークリーチャーを出す」→「非クリーチャー呪文を唱える」という流れを要求するため、この重さはかなりしんどいです。それでも、赤の優秀な火力と青の打ち消しで相手の行動を阻害しつつ、それが更なるアドバンテージにつながるというのは、とても魅力的。
 ドラフトにおけるアーキタイプ参入の動機は、戦略に合致したカード・アドバンテージを連れてくる「さまよう心」かクロックを増やす「囁く魔術師」、あるいは赤の優秀な除去呪文が該当するでしょう。「炎吹き」は前回のアンコモン「熱錬金術師」よりはやや弱い※2 ですが、希少度がコモンであるという点で、アーキタイプに入ると決めた後からでも数を揃えられる可能性が高いです。それと、この子は赤のアグロ戦略と合致しないため、卓に他の赤がいても残りそうなのもポイント。勝ち筋は「相手を阻害しているうちにバーンやフライヤーで削る」というクロック・パーミッション的戦術になるかと思いますが、呪文の質が構築ほど高くないリミテッドではやや難易度高めかも。

RW(赤白):アグロ

 はい、アグロです。

画像28

 シナジーを考えるまでもないというか、マルチアンコモンに「飛行(回避!)速攻(速い!)・パワー修整(強い!)」とか書いてあったら、もう気分は全選手入場というか、裸がっぷり四ツ、強さを見せつけてくれいッ!となるに決まっている。この際人間とか吸血鬼とか関係ありません。来た、殴った、勝った。語る言葉はありません。
 いえ、実は語ることあるんですけど、この「マルコフの円舞手」、赤と白にシナジーだらけなんですよね。速い戦略に合致しているというだけではなく、パワー修整で「訓練の師匠を作り出す」「攻撃メリット持ち(先制、威迫等)をでかくする」と、単なる3/3飛行速攻よりもめっちゃ色に貢献する、見事なまでのアーキタイプカード。今回の2色アンコモンの中でも屈指の強さを誇ります。レアよりも強い※3。
 勝ち筋は「速く殴る」。単純明快なアグロです。アーキタイプ参入動機は、必ずしもマルチアンコモンではありません。軽くて強い白と赤のアタッカーを、両色の優秀な除去と合わせて十分確保できていれば、「円舞手」がいなくても強力なアグロに仕上がるでしょう。よって、どちらかの色でアグロよりのピックを進めていた、もしくは優秀な除去を確保できていた場合に、もう一色を並行してピックしていき参入する感じになるでしょう。

 以上が各アーキタイプの紹介でした。長い文章にお付き合いありがとうございます。残すは勢力図!

総括

 VOWの環境はこうだ!!(大予想)

WU(白青):スピリット・オーラ   ★★★★☆ (Tier2) 
UB(青黒):ゾンビ・濫用       ★★☆☆☆
BR(黒赤):血・吸血鬼        ★★★★☆ (Tier2)
RG(赤緑):狼・狼男         ★★★☆☆
GW(緑白):人間(訓練)       ★★★☆☆
WB(白黒):ライフゲイン       ★★☆☆☆
BG(黒緑):タフネス         ★☆☆☆☆
GU(緑青):自己切削         ★☆☆☆☆
UR(青赤):非クリーチャー呪文   ★★★☆☆
RW(赤白):アグロ         ★★★★★ (Tier1👑) 

 コメントしていきます。

WU(白青):スピリット・オーラ   ★★★★☆ (Tier2)
・コモンの有能なフライヤーがいるというだけでも十分戦えるが、それにカード損しないオーラが自然に採用されるというのが強い。アーキタイプシナジーのカードも多い。多少構築やプレイングのバランスを要求されるとは思う。また、青のパワーが低いため、訓練は期待しないこと。

UB(青黒):ゾンビ・濫用       ★★☆☆☆
・盤面のアド損が痛く、アグロが強そうな環境ではなおのこと不利と見る。黒という色の弱さも然り。ただ、濫用持ちは他のデッキではピックしにくいため、積極的にシナジーを組むことで強みを活かせるかも。

BR(黒赤):血・吸血鬼        ★★★★☆ (Tier2)
・コモンだけで完結する優れた戦線。アグロの息切れをルーティングで支えられそうなのも良い。そしてアンコモンとはいえ一方的全体火力の存在。しかし黒の弱さがやや足を引っ張るか。

RG(赤緑):狼・狼男         ★★★☆☆
・明確なシナジーを形成しないが、アグロを止めつつ質で攻められそう。赤の火力で露払いし、緑の良質クリーチャーで殴れ。昼夜参照カードが少なく、夜にすることが相手へのメリットが少なく自分だけ得できそうなのも、一方的に有利な戦況を作りやすいか。

GW(緑白):人間(訓練)       ★★★☆☆
・緑は今回やや頼りない色だが、師匠は確保できる。2色アンコモンが優秀なのもあり、結構戦えるか。除去を上手く取れればなおさら。後半に寄せると緑のデカブツの恩恵を受けやすくなる一方、訓練持ちは仕事しないかも。また、MIDのような全体バフがなく、横並びさせるメリットが薄めなのは逆風。

WB(白黒):ライフゲイン       ★★☆☆☆
・シナジーには期待しにくいとしても、白の通しやすさや強さ(オーラ強化)を生かして、殴り合いを仕掛けながらもライフは自分ばっかり多いという感じで勝てそうな気もする。マルチアンコモンやコウモリでカード・アドバンテージを取りたい。

BG(黒緑):タフネス         ★☆☆☆☆
・微妙な色ともっと微妙な色で厳しそうだが、ワンショットキルは一回してみたい。

GU(緑青):自己切削         ★☆☆☆☆
・遅いランプ戦術にした時の勝ち筋や明確なアドが見えないので、相当厳しい。地上を止めて飛行で殴れたらワンチャン。

UR(青赤):非クリーチャー呪文   ★★★☆☆
・アーキタイプカードがアーキタイプにやや合ってない(順序を要求するかつ重い)が、それはそれとして優秀な色同士の組み合わせである。フライヤーで殴りつつ相手を火力で止めている間に差を広げ、そのうちアーキタイプクリーチャーを展開してアド差を更に広げるという流れは十分見える。むしろ最初から前のめりの構成にしてシナジーはおまけくらいに考えていると、★4くらいの評価にはなるかも。

RW(赤白):アグロ         ★★★★★ (Tier1👑) 
・速くて強い、ボロスカラー。雑に除去って殴ってるだけで勝てそう。先攻を取ったら勝ち!コーナーで差をつけろ。
(環境にタフ寄りがそれなりに居て、アグロ戦術よりもWUのフライヤー戦術のほうが安定して勝てそうかも?とWUをTier1にしようかとも思ったけど、赤も白も除去が優秀なので乗り越えられるだろうということでこっちに軍配。)

 以上、今回はアグロが強い環境という予想に落ち着きました。MIDほど速い(1マナ域が重要になったりテンポ損が致命的だったり)わけではないと思いますが、マナカーブに沿って動けないと結構死ぬと思います。マナフラ受けは降霊以外に殆どないし、もしも遅い戦い方をするならしっかり理由が必要です。序盤を受けられるようタフ寄りを用意して、フライヤーや継続ダメージ等の明確な勝ち筋を確保しておくとか。

 それでは、実戦においてこの予想がどれほど合致するのか?環境初期はとりあえず殴るアグロが強くなりがちなので、アーキタイプ予想に近くなるかもですが、環境が成熟して変遷するのもまた楽しみですね。派手に外したらそれもまたそれ。
 更けきった夜もあと少しでおしまい。輝かしい夜明けでお会いしましょう。

画像31


注釈

 ※1 「対抗色」「友好色」の覚え方は、MtGのカードの裏面。五芒星の上で、色が隣り合っていたら友好色、離れていたら対抗色です。アリーナだから裏面をじっくり見ない?ではストリクスヘイヴンを思い出しましょう。ストリクスヘイヴンの学部の組み合わせは「対抗色」で、逆にそこになかったのが「友好色」です。
 ※2 MIDの「熱錬金術師」は「ケッシグの炎吹き」と比べて、「呪文を用意しなくても毎ターン1点飛ばせる」「任意のタイミングでダメージを飛ばせる」という点で圧倒的に優れている。特に前者でダメージ量を稼ぎ、後者はMIDの吸血鬼(相手のライフ失点を条件とする)と相性が良かった。しかし「炎吹き」は、「パワーが1ある」「防衛を持たない」「インスタント・ソーサリー以外でもダメージに変換できる」「レア度が低い」と数々の点で優れている。両方ぶっこんだバーンデッキが構築に出てきそう。
 ※3 赤白のレアは、なんということか、吸血鬼と化してしまったオドリックさん。絶望的なストーリーに、超かっこいいイラスト。性能は……

画像30

 単体だと3マナ3/3バニラ、良くて数個の血・トークン。オドリックさんは犠牲になったのだ。イニストラードの吸血鬼(・アーキタイプのためのカードデザイン)……その犠牲にな。

 なお、本記事における使用画像の結合には、以下のサイトをお借りしました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?