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風景の一部でいられる場所

中田島砂丘を撮り始め通っていたころ、一人で海を見に来る女性をたびたび目にしました。真冬なのにナース服のまま病院を飛び出して来たような女性、トレンチコートを着こなした女性などいずれも悲しい想いを抱えているように私には見えました。

その佇まいが美しかったことから「さようなら中田島砂丘」と題して写真を撮ろうと決めました。

悲しい気持ちや怒りを鎮められる場所が都市の身近にあるってとても大事だと思います。この場所で水平線を見ていれば古代の人間が見ていた風景と同じ、風も波の音のリズムも何も変わっていない。だからこそ、心を鎮めてくれるのでしょう。

そのうえ、砂丘は適度な広さと人出があり、孤独を感じることがなく、自分自身と向き合える空間でもあります。安心してその場に浸っていられるんだと思います。

この場所が例え砂丘の看板を下ろしたとしても、今後も多くの人々にとって心を癒してくれる場所であり続けることを願っています。

さようなら中田島砂丘
ひとりで来ても孤独ではない


砂丘フォトグラファー 浜松を代表する風景のひとつ、中田島砂丘消失の記録