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mofu mofu 開発プロジェクト

mofu mofu ?それはなに? モフモフとした触り心地、まあるいステージ、まあるい収納ケース、それがmofu mofuです。まいにち身に着けるジュエリー、アクセサリー、小物たちを収納するだけでなく、お気に入りのものたちを飾っておくことができる、お部屋のなかの定位置。大好きなものたちをそこに集めて、いつも飾っておけば、忙しい生活のなかで、いつも存在を感じることができて、慌てて探したり、服との組み合わせを迷うことも少なくなります。

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mofu mofuのネーミングの由来であるモフモフ・フサフサとした手触り、これは”植毛加工”というジュエリーケースをつくる伝統的なの技術で作られています。ベースになっているアルミの筒、これは”ヘラ絞り”という技術で、いぶし銀の職人さんが1つ1つ手作業で作っています。華やかでリズム感のあるアルミのカラーは、”アルマイト染色”という技術で、町工場の男たちが大きく身体を使いながら、たくさんの工程を経て、とりどりのたのしい色に染めあげます。

この3つの町工場が集り、それぞれの技術をもち寄って、ひとつのものを作りあげました、それがmofu mofuです。加工技術について興味のあるひとはどうか遠慮しないで聞いてください。なんせ、職人たちは、それぞれの加工技術について話だすと止まりません、いつでも声をかけてくださいね。

技術をもった職人はそれぞれ、微妙な差異を判断する目と、それを調整してコントロールできる腕をもっています。積み重ねてきた経験と技術を、これからもさらに積重ねて、磨いていきたいといつも意気込んでいるのですが、小さな町工場には、もう待っているだけでは十分な仕事がこないという現実が、共通の課題として横たわっています。

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これまでぼくらは、”これを作ってほしい” と頼まれるものを懸命に作ってきました。出来上がった製品を納めにいくと、”足りないからもっとたくさん、はやく作って納めてほしい”という声がかかったものでした。それがうれしくて早足で工場にもどり、疲れも忘れてもうひと頑張り、そんな時代がありました。日本中の職人たちがそんなふうに働いているうちに、やがて安くてべんりなものを好きなだけ選べる、快適でモノがあふれる時代になりました。

そんなふうになっていま、ぼくらはこれから、自分の技術で何をつくったらいいのか、どんなものをどれくらいつくれば、だれが喜んでくれるのか、そんなことを、立ち止まって考えを巡らせています。

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mofu mofu をつくるこのプロジェクトは、大阪の堺市でジュエリーケースをつくる三栄ケース株式会社が主体となって立ち上がりました。私の会社である三栄ケースのさいきんの歩みについて、少しだけお話しさせてください。

中国企業がモノづくりのすべてを覆いつくすほど勢いを増した1990年代半ば以降ずっと、植毛ケースの出荷減少を喰いとめようとすることで精いっぱいという時期を過ごしました。流れが変わりはじめたのは、中国の人たちがコツコツとしたモノづくりの仕事に、いままでほど貪欲でなくなってきたここ数年のことです。苦しい時期に積み重ねてきたいろいろな工夫が、ようやく実を結ぶようになり、ジュエリーケース業界という小さな世界のなかでは、たくさん相談をいただけるようになっています。

それまではとにかく、ジュエリーケースの製造を継続していけるように売上をあげること、それ一点にすべてを集中させてきましたが、その次を考えられるようになったとき、このまま立ち止まらず、前向きに仕事を続けていくために、何をすればいいのかをという問いが生まれました。

考えぬいた結果、頼まれたものを作るだけでなく、自分たちの力で必要とされるものを、できることならジュエリーケースという付属のパッケージを超えて、そのものが主役になる製品を企画してつくれるようになりたい。という想いに気づきました。ただ、そんなことができるようになるために、なにから始めればいいのだろうかと、モヤモヤした気持ちを抱えながら過ごしていました。

クリエイティブディレクターの浪本浩一さんに出会ったのは、そんなふうにしていたころでした。今回のmofu mofu開発の共同プロジェクトを発案して、チーム全体をリードしてくれたぼくらの先生、そしてパートナーです。この出会いをきっかけに、創業以来卸売りを専業としてきた三栄ケースは、あたらしい世界に足を踏み入れていくことになります。

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出会ったころは、”クリエイティブディレクター”という言葉の意味もその仕事も、全然わかっていませんでした。製作されたというwebサイトを視て、目標に近づく糸口をみつけるために、まずこの人に相談してみようと感じました。当時はデザイナーという職業に関して、”派手なファッションで、こだわりが強く、弁が立つ、どことなく胡散臭い” 、というイメージがありましたが、(そんなイメージのデザイナーをみつけるほうが、いまは難しいのかもしれませんが…)浪本さんはどれにも当てはまらない、物静かで理知的な雰囲気から、抱えている課題の解決に応えてくれそうだと感じました。

道頓堀のちいさな居酒屋で会って、デザインについて学びたい、会社がさらに成長する糸口になる気がしている、業務に取入れて使いこなせるようになりたい、会社で自分とみんなにデザインについて教えてほしい、こんなお願いしたことから新しいチャレンジがはじまりました。2017年の秋ごろのことです。

定期的に会社に来てもらい、就業時間に社内勉強会をひらくことから始めました。当時、業務をこなすだけだった職場に、学びの時間と場を設けること自体、会社の全員に奇異に映っていたと思います。そんな場が社内で根付くようになるまでかなり時間がかかりました。

ぼくらは、この活動をSCP(三栄ケースクリエイティブプロジェクト)と名付けました。 ”クリエイティブな力を身につけて、仕事に活かせるようになろう” という目的を見失わないようにするために、いつしかこう名付けたのですが、このSCP活動をいまも継続させています。

ぼくらの先生は、自分の知っている知識や知識を教え授けるという指導はせずに、参加者それぞれが、自分の頭で考えて、自分で学びを深くしていける方法を身につけさせようとするスタンスで一貫しています。デザインについて、情報と知識をどんどん吸収していくセミナーのようなものを、最初はイメージしていたので、僕らの頭はとても混乱しました。
学びの深さと大きさは自分のかかわり方次第で決まるものだと理解できるようになるまでは、不可解とつまづきの連続で、何度もくじけそうになりました。
浪本さんの思い描く設計が共有できるようになるまで、ずいぶん時間がかかりましたが、このSCP活動のおかげで、お客様、協力会社、社内の仲間、それぞれに向き合い、それぞれをとりまく環境と心理を共有して、問題点をみずから見出さそうとするアプローチが、少しずつ身についてきたように思います。これに平行して、クリエイティブのささいな作用が、梃子の原理のように会社にもたらすことのできる力を理解できるようになってきた気がします。

mofu mofuは、モノづくりメーカー3社の技術を合わせて作りだされますが、原点となるコンセプトは、このクリエイティブの力が加わらずには生まれませんでした。少しばかりクリエイティブに関する勉強しただけのぼくらでは、プロジェクトチームを立ち上げて、推進するにはまだまだ力不足で及びません。そこで今回は、浪本さんの紹介で、プロダクトデザイナーの中井詩乃さん、コピーライターの田中有史さん、お二人に加わっていただきました。

中井さんには、数々の製品開発に携わってきた経験で、3社それぞれの持ち味を引き出し、それがカタチを持って1つに統合されるようなデザインワークをしてもらいました。プロデザイナーの審美眼だけに頼らず、調査やロジックを交えながら商品のカタチを決定していく企画の手法を共有させていただいたことは、これまで自己流の商品企画しかしたことのなかった自分には、大いに刺激を受け学ぶところがありました。

田中さんは、これから作ろうとするものがそもそも何なのか、何のために作るのか、という商品の核となるコンセプトを確立させる過程で、たくさんのアイデアと着眼点を出していただきました。田中さんはコピーライターなので、はじめは商品のプロモーションでお手伝いいただくのかなと思っていましたが、企画のスタートから参加していただき、ときに厳しい諫言も交えながら、チームワークの在り方、進め方に関してたくさん助言をいただきました。考えや想いの共有がチーム内でスムーズに進まず、重い雰囲気になることもありましたが、そんな局面でもチームの熱が冷めることなく維持されたのは、田中さんが引いた目で見て、ときに厳しく方向を問いただしてくれる安心感があったからだと感じています。

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じつは、mofu mofuはまだ完成には至っていません。ここから使ってもらえるユーザーさんの意見をお聞きしながら、さらに磨きをかけて完成させます。

なぜこんなものを作ろうと思ったのですか?アクセサリー用の収納箱やジュエリーボックスなら、ネットで検索したら数えきれないほどでてくるのに? このような質問をされることがあるかもしれません。たしかにそのとおりです。

でも、ぼくたちはそれぞれモノづくりをするなかで、どこかでずっと思っていました、身近にいる大切な人たちに自信をもってプレゼントできるような商品をこれまでまだつくってないねって。いままでは、人から渡された図面をカタチにしたり、ヤマカンでそれっぽい商品を自分たちなりに作るばかりでした。

mofu mofuは、ぼくたちがこれまでとは違う視点で、新しく価値のあるものを模索し、生みだそうと真剣に向き合って開発した自社商品です。宝石箱につきものの、窮屈で出し入れのしにくい、お仕着せのような仕切りや引き出しはありません。お気に入りのジュエリーやアクセサリー、小物たちは、暗い引出しの中で窮屈なマスには押し込められることなく、モフモフとしたステージの上でじっと佇みながら、次の出番が来るのを待ってくれます。

朝、身に着けて、鏡の前でこれでよし、いいね。出先では鏡の前に立ち乱れていないかをチェック、よし、大丈夫よね。家に帰って、ようやく身から外して、はい、今日もご苦労様。ここで休んでいて、明日もよろしくね。
お気に入りとの毎日がそんなふうになり、それがお気に入りであり続け、それぞれとの時間がていねいに積み重さなっていく… そんな暮らしってなんだかいいなと思います。

mofu mofuはとくべつ便利な発明品ではありません。アナログなモノづくりを一心につづける小さなメーカー3社がそれぞれの技術を集めてできた素朴な商品です。暮らしのなかの美しさ豊かさに想いを馳せることのできるクリエイターたちの力を借りて、お部屋に違和感なく溶け込むかわいらしいデザインに仕上がっています。

mofu mofu それは、みなさんが大切にしているモノ、これからも大切にしつづけようと決めて買ったモノとあなたの関係をつないでくれるモノです。試しにあなたの大切にしているものたちを、モフモフとしたその上に置いて飾ってみてください。



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