土地とお酒

一か月前まで住んでいたポルトガルでは、昨年の大病?の影響もあってかあまりお酒を欲さず、それでも諸々の手続き上のストレスから赤ワインを炭酸で薄めて飲んでいた。

所変わってスペインでも、最初は赤ワインを炭酸で割ったのだけれど、炭酸水ごとに微妙に異なるフレーバーが施されていてどうもおいしく感じられない。まっさらな炭酸水を求めるのも面倒になって、普通に赤ワインを飲んでいたらビックリ。全然飲める。結局一日一本を健康的に嗜むことができた。

そしてスペイン短期滞在を終え到着したギリシャ。割りと遅い時間に着いたけど、投宿先の隣にコンビニ(ミニスーパー?)があったので飲料水を求めて入り、ワインのお値段をチェック。予期していた通り、ポルトガルやスペインと比べるとお高い。使用通貨が共通だから比較が単純に済んでありがたい。毎日お酒を欲するようになってしまっていたため、どうするか少し検討し、とりあえずお店に並んでいるギリシャのビールを一つ一つ試すことにした。ただビールだからなぁ。お酒を飲むという感じがしない。

やや悶々と過ごしていたところ、定住先に決めたアパート近辺を不動産屋さんに紹介してもらっていて、胸がトキメいた。田舎に行けばどこにでもあるようななんでも屋さん。食料品(牛乳他乳製品、肉(主に加工肉)、野菜、果物、ジュース、お菓子)、日用品などなど。店内も田舎のなんでも屋らしい薄暗さで、ぱっと見たところそれほど魅力的なお店でもなかったのだけど。

レジの向かいに銀色をした縦長のタンクが2台据え付けられている。地元の爺さんが、プラスチックボトルにそのタンクから透明の液体を詰めてもらい、お店の人と何やら交渉っぽい話をしている。
気になって、不動産屋さんに「あれは?」と尋ねると、ニヤリと笑うので何となく察しがついた。お酒だ。
不動産屋さんはそのお店のお馴染みさんらしく、お店の人にお願いして、少々試飲をさせていただいた。
予告してくれていた通り強い。香りも特徴的。ウォッカのようにはあっさりしていない。ジンやラムというよりも、仄かにコーリャン酒っぽかった。チプロというらしい。
その日はアパートの下見だったので、心密かに「しめしめ。ギリシャでのお酒が決まったな。」とほくそ笑みつつ、ホテルへ帰った。

二日後アパートに入り、建物出入り口のカギの問題でさらに二日ほど閉じ込められたけれど、くだんのなんでも屋さんへ行き、早速購入した。タンクが2基で、それぞれお酒の種類が違うということだったので、両方買った。500㏄のボトルもくれて、各々3.60ユーロぐらい(微妙に値段は違ったが、どっちがどっちかまだ分かっていない)。

チプロじゃない方はラキという。ラキと聞くと自分はトルコのお酒?と思ったけど、名前は同じでまあまあ似ているらしいが、お店のものはギリシャのものとのことであった(他にもアルバニア産があるらしい)。香りは似たようなものに感じたが、チプロのような甘い感じはしなかった。

上記二種類に加えて、アパートに閉じ込められていた間に不動産屋さんが持って来てくれたウーゾ(オゥーゾ)。これが私の中のギリシャのお酒無色透明三兄弟(ウーゾはロックにしたら白濁したけど)。皆同じぐらいのアルコール度数で、異なるのはそれぞれの香り。味もそれぞれ違うけど、「これじゃなきゃ!」というほどの違いはなかった。これは否定的な意味ではなく、どれもこれもギリシャのお料理にピッタリ。

ここにはお仕事がある限り居続けたい(長期戦になる)と思っているので、お酒が決まっただけのことなのに、なんだか嬉しい。その土地で飲みたくなるお酒。あると相互に受け容れ合ったかのようだ。ギリシャ語はチンプンカンプンなんだけど。。。

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