試論:essay / diet: ダイエット

この世界にはある妖怪が徘徊している。- ダイエットという妖怪が。それは資本主義/共産主義が永遠に見る夢である。それは果たしてなぜか?

……Google曰く、ダイエットの語源には次のようなものがあるという。

- ギリシャ語「生活様式」の意
(デンマーク・スウェーデン・ハンガリー・日本などの)国会,議会 (cf. parliament 1a,→congress 1a).
- ラテン語「(会議の)指定日」の意

つまりダイエット(diet)は、 day(日常)やdate (日付)に意味的には近い。

date. デート。スケジュール。カレンダー。
スケーターのように可憐に走り抜けたい。でも、なぜか、太りやすい体質という人は、一定量存在する。僕も、あなたも、そうかもしれない。

これは進化生物学的には明確に整理されている。

人類の歴史を紐解こう。まず、穀物の栽培という「第一次革命: 農耕革命(日本でいえば稲作:弥生時代)」の到来が決定的な分水嶺となった。これが決定的に、ダイエットが必要なヒトとそうでないヒトを、分けてしまった。

それはなぜか。それまでの縄文的、つまり狩猟採集生活的なヒトは、狩りや釣りに成功しないときもあるわけだから、すぐに食べたら脂肪として栄養を蓄え、水と塩さえあれば2日3日はいくらでも集中して獲物を狙えるだけの体制、attitudeをまさに体現する遺伝子が残った。つまり、太りやすい体質であることが生態学的な意味で「最適」だったのである。

しかし農耕革命はその条件/環境を変えた。

いつでも、穀物/炭水化物/糖類をたくわえ、独占し、配り、ときに政権がゆらぐようになった。貯蓄と権力の誕生。これは日本史の最初期に出てくる話であるから、特に注釈は不要だろう。

さて問題は、では、現代において縄文の血を引く人間が、いかにしてdiet(日常生活)すべきかである。すぐに脂肪として蓄えようとする腸内フローラ(腸内細菌の生態系)と、どう折り合いをつけるのか?

...私はそれをこの数ヶ月実践した。基本線は3つある:

1.一食、一汁一菜(漬物)でよし
2.家庭料理としてのカレーは適当でよし
3.梅干し最高

詳述する紙幅はないが、先日、NHKBS「ワイルドライフ」をみていて思ったのは、ウミガメがガシガシとクラゲを食い喰む姿であった。

毒をあえて食べる。
腸内で「飼いならす」。

ドゥルーズ=ガタリが「襞」と呼んだように、口から胃を経て肛門まで続く腸内というのは、人間にとって、それは内部なのか、外側なのか、区別がしがたい。というより、つねにすでに、ミトコンドリア誕生、あるいはそれより前からして、生物というのは、ルーマンがいうような中/外の差異を検出/算出しつづけるオートポイエティック・システムとしての側面、いや襞-面(インフラマンス)/ インタフェースとしてある。

私たちはまだそのインタフェースを、iPhoneのようには使いこなすことができない。目にも見えないし、触れることもできない、体内にあるからだ。私達はそのディラックの海のごとき不可知の自意識の球体へといかに侵入すればよいのか?
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物事を判断する際の「ものさし」。
目の前にいる人間が美しいのか醜いのか、つまるところ自分よりも上なのか下なのか。その価値観というのは絶対的ではなく、時代や状況、文化や土地によって変動するナマモノであり、それぞれが持つものさしに依ってジャッジメントしてゆくことになる。
むろん流行というのはものさしの内容のことであり、女性のものさしは特に入れ替わりが激しい。
かくいう私も女性であり、女性同士の会話の渦中に身を置いて実感するのは、女性の判断基準というのがあたかも◻︎をレ点で埋めていくかのようなチェック項目形式の「ものさし」を採用していることだ。
2017年現在「かわいい」のチェック項目内容はおおむね以下のようなものである。

◻︎足がめちゃくちゃ細い
◻︎腕がめちゃくちゃ細い
◻︎腰がめちゃくちゃ細い
◻︎顔が小さい
◻︎目が大きい
◻︎色素が薄い
◻︎髪が綺麗
◻︎蒙古襞がない
◻︎幅広の平行二重
◻︎肌が白い
◻︎長い睫毛(マツエク)
◻︎最新のファッション(ラルム系など)
etc…

このチェック項目を抑えてゆくのは厳しい戦いであるが、全体観やバランス感覚を多少失っていても項目さえ抑えればある程度の評価を得れるという点で、ある意味では易しい評価基準だとも言えるのかもしれない。
流行の女性像が最も見えてくるのは高須クリニックが発表する「この芸能人の顔にしてくださいランキング」だ。
(参考: https://www.google.co.jp/…/…/drmikiya/entry-12234522262.html
ここに君臨する女性たちはいずれもそれぞれの個性の中で上記の条件を満たしていることがわかる。流行がありありと現れて面白い。私はいつも心から楽しみにこのランキングの発表を待っているのだ。
さて、この項目の中で最重要となってくるのは〝いかにめちゃくちゃ痩せているか〟である。
その項目を満たすため、女性たちは年中ダイエットに勤しみ、ダイエット特集のananは飛ぶように売れ、オリジナルのダイエット方法がツイッターで何万といういいね・リツイート数を稼いでいる。
かくいう私もダイエット関連商品にはいくらつぎ込んだかわからないほどだ。
このダイエット戦国時代、めちゃくちゃ細いことが持て囃される時代の理由について書かれた考察は数多く存在すると思う。しかし私が考える「なぜ現代はここまでダイエットが重要なのか?」その極めてシンプルな理由は以下のとおりである。
2017年現在、我が国日本は飲食店やコンビニなどの過充実により「美味いものへの距離が最も近い国」であると言っても過言ではない。
少し歩けば、少しお金を払えば、ほんの少し、たった少しで美味いものに手が届いてしまうという何とも素晴らしい世界なのだ。
だからこそ項目「めちゃくちゃ細い」を満たすことは、最強レベルに困難な闘いになる。
目は詐欺メイクで大きくできるし、撮影にはsnow(自動で目を大きくし顎を小さくしてくれるカメラアプリ)を使えばいい。髪型や睫毛やネイルを整えることなんて金さえ積めばいくらでも可能だ。
だがしかし「めちゃくちゃ細い」だけは小手先のテクニックが全く通用しない。
目の前に陳ぶ美味いものをどれだけ耐えられるか。スタバの新作フラペチーノ、ゴントランシェリエのパンオショコラ、ラデュレのサントノレローズフランボワーズ。ラーメン、カレー、カツ丼、ピザ、チャーハン、パスタ、etc、etc…

そのすべてがほんのちょっと外出すれば手に入ってしまう、ここは空前絶後の飽食属性のフィールドなのである。
そしてこの飽食のフィールドにおいて最も突破することが難しい、女たちによる最上決戦の競技種目として、「ダイエット」という強固なラスボスが君臨しているのではないか。
だからこそ「ダイエット」を制した者は紛れもない勝者であり、敗者からの羨望の眼差しを受けつづけるのではないか。
敗者の視点からの考察である。
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Sより : 返歌
上記、芸能人の顔にしてくださいランキング2017を拝見した(この存在すら知らなかった。大変勉強になった、多謝)。

さて私はかつて、同リストにおける

3位齋藤飛鳥
12位白石麻衣

と乃木坂46の握手会で対面したことがあるが、率直に言って、あまり可愛いとは思えなかった(※あくまで個人の感想です)。なぜならば異様に細すぎて、血色が薄く、確かに儚いという意味では幽玄にして美麗ではあったが、私は好まなかった(また、なんなら掌も少しカサカサとしていて、あまり心地の良いものではなかった記憶がある)。あくまで男性目線での評価で恐縮ではあるが、私はこう思った。

自分にもし娘ができるとしたら、もっと健やかに、たくましく育って欲しい、と。

※ちなみに25位の西野七瀬ことなぁちゃんは本当にウルトラ可愛くて、血色もいいわ、顔だけ少しふっくらしてるのに体は支えてあげたくなるような細さだわで、私の中ではぱるること島崎遥香さんと匹敵するほどの握手会で本当に超絶可愛かったランキング不動のトップ2でした。蛇足&キモオタレポ失敬。

閑話休題。縄文の血を引く者たちよ。流行などに流されるな。そもそも私たちは、この島国に流れ着いた者たちの祖先ではなかったか。その足跡を思い出すのだ。岡本太郎に言われるまでもなく、土偶のように、路傍の石のように、どかっと座していればよい。爆発する必要もない。そう、写真はアプリでいくらでも盛れる。外向きの顔はそれで十分だ。

ただ、盛る/守るべきものがある。蓄えよ。腸内に、細菌を。自分が食べるのではない。腹のなかのフローラに、ご馳走してあげればよいのだ。さすれば脂肪という名の服を着る必要はなくなる。それが私たちの祖先の知恵である。

June 2017
S

ps
僕は日焼けしている女性のほうが、好きだ

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