みけのあんだせーたー
ちょっと待て。俺が分からなくなった。
だから、劇場にはそもそも何も問題がないということになる。
つまり運営のおばさんたちにも問題はないし、吉川君にも問題はない。いつもボテ前田が「吉川君って問題ですよね」とおばさんたちに電話するから、「吉川君って、どうして問題なの?」とおばさんたちが攻撃するようになる。
ボテ前田の言うことを鵜吞みにしないで、おばさんたちも自分たちの目で確かめてから、吉川君は問題なのか、そうではないのか。そういう所は確かめて欲しかったが、バカなおばさん、そういう所はまあいい。
事務所でおばさんたちも、吉川君もうっとうしそうな顔でお互い神経戦を繰り広げている。何が悪いのか分かりゃしない。そういう場面をボテ前田は「クックック……」と笑っている。
吉川がバカバカしくなって、劇場に出てこなくなったら、ボテ前田が電話してきて「吉川さあ、俺が悪かったよ。これからも劇場運動頑張ろうぜ!」とゲキを飛ばしたものだった。頑張るべき劇場運動とは、あれだったのか。
吉川君って、何が問題だったの?
「ミケの編んだセーター」
吉川君が問題だったんじゃなかったらしい。
数えてみたら、ミケ、ユッコ、エリ、モモちゃん、とか。
劇場の中で、友達はたくさんいた。
どっちかと言えば友達が集まりやすい方だったかもしれない。
それがボテ前田には狙いだったんじゃないか?
だから、吉川に集まってきた友達が、まるで「餌によって来た魚」のようで、次から次へと釣り上げてしまえばいい。
「俺がほかの女とデートすることを許さない奴は、俺の彼女じゃない」
ボテ前田はそう言って、こういった女子たちとデートを繰り返していた。
そうしたら、ボテにはハッチという彼女がいたんだけれど、「じゃあ、別れる」と言って、ハッチは他に彼氏を作ってボテ前田とは別れてしまった。
ボテ前田は、ハッチが静岡の海岸へ海水浴に行ったところを、国道一号線をずっと乗って、千葉から追いかけて行ったけれど、ハッチは目も合わせようとはしない。
静岡の砂浜は白かった。
劇場は中高生の女子が多くて、そういう女子を連れて企画をやっていると、街では「ロリコンか?」と言われることがあった。
そういえば、この構図はどう見てもロリコンだな?
19歳の男が何人かで、女子中学生たちをぞろぞろ、引率しているのだが、なんだか怪しいタレント事務所のお兄さんと言う感じだった。
この子たちを使って、一体何をしようとしているのだろう。
彼女と言うものを作らなかった。
そう言う彼女と言うものを作って、みんなが遊んでいるときに時期に「劇場運動」とか言って、こう言ったことをやらされて、気が付いたら、何もかもが人生おしまいになっていた。
ミケも、二十六歳まで前田に騙されていたらしい。
「ミケさあ、俺と付き合っていたらさあ、絶対に吉川を彼氏にしてやるからさあ、結婚させてやるからさあ。だからミケ、俺とドライブしようぜ」
おまえバカか? と思うんだが。そんなミケと誰が結婚するのか。
「ミケ、どこの高校に行ってるんだ」
「親友が知ってるよ」
「し・・・?」
まあ、おめでたかったのである。
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