夏が来る

疲れ果てた夜
風はいつまでも強く吹き続け
人は死ぬと青く燃えるって
たぶん本当なんだろうね
体中、蝋の匂いがしている
月のない夜
雲はただ黒く流れ
生暖かく風は吹いてゆく
今宵、誰が死ぬのだろうか
生まれてから運もなく
死んでいくまで運もなく
何のために生まれてきたのだろう
生まれてくることに
意味があると思うことが
何かの間違いなのかもしれない
もうすぐ夏が来る


 取るに足らない詩のようだが、隠された意味は深い。「浅田真央」みたいな名前をしたコードネームの正体不明の人物がずっと盗聴している。
 「わたしはただ聴いてるだけだよ、何も悪いことはしてないよ」。聴いていることが犯罪だということに、この人物は全く気が付かない。アタマがお花畑。
 いつまでも聴き続けている。いつまでも聴かれ続けている。
 聴かれていることは迷惑だよ、と言っているうちは、まだよかったのかもしれない。体中から油の匂いが漂い始めたことに、ぞっとした。
 人って、スマホで殺せるものかもしれないねと、友達に聞いてみたら、ストレスをかけ続けられて、結果として死んでしまったとしたら、もしかしたら本当に殺意があって相手は殺そうとしてたのかもね。だって。
 万が一、俺が死んだときはこのように殺されていったと解釈するのが妥当なのだろう。

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