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父の記憶

朝、起きたら会社に行く前に、洗濯物を干していた父。

それを横目で見ながら、手伝おうともしなかった僕。

休みの日に朝から起床ラッパを歌っていた父。

休みの日にはかならずどこかに出かけようとしていた父に反抗していた僕。

僕が大学に行かなくなって、自堕落な生活をしていたのを咎めに来てくれた父。

いつまでも借金を繰り返して心配をかけていた僕。

学生時代に見た映画の記録、スクラップを大事にとっていた父。

いろんな古い映画をみることができた僕。

子供の頃からの大量の漫画を持っていた、大人になっても共有してくれた父。

好きな漫画を父とたくさん共有した僕。

嫁は可愛い子がいいなと言っていた父。

愛する人を実家に連れて行って自慢した僕。

病気になって、病院で寝たきりになって、食事もまともに取れなくなった父。

下の世話を、大変だなと思いながらも、してあげられることが嬉しかった僕。

家に帰ることができたけど、たった3日で逝ってしまった父。

父があっという間にいなくなったことについて、そんなに悲しいと思っていなかった僕。

父はなにを思って生きていたのだろうか。本当のところを、僕は聞いていなかったように思う。いつも、表面で取り繕っていた。父にもそんなところがたくさんあるんだろう、だからコミュニケーションも上手く行かないんだ、と相手のせいにもしていた。

今になって、父は僕を愛してくれていたことが、本当によくわかる。

父と息子という関係ではあるけれど、少し友達のように接してくれたところもある、ひょうきんな父。

お前は、俺とよく似てる。だから心配なんだ。よく言っていた言葉。あんなに真面目な父と似ているなんて、思ってもいなかった。

でも、あれは本当のことだったのだと、いまならわかる。本当は意志が弱い、人間らしい父。でも父は、大切なものがあったから、自分の人生を楽しめたんだ。僕にも、大切なものをつくって過ごしてほしいと思っていたんだ。

死ぬ時に、心残りはたくさんあるけれど、後悔はないと言っていた父。素晴らしい人生だったんだろうな。そう思ったら、悲しいでもなく、涙が出てきた。

親子というのは、素晴らしいなと思う。父がいたから、僕は素晴らしい人生を過ごせている。

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