バイト先の社員さんのはなし

月曜日に、今週は毎日note更新すると決めて、今日は土曜日。

今週というものの解釈ですが「月~金」までなのか「月~土」なのか。サボりたい癖のある僕は、昨日まででなんとなく目標を達成したつもりになっていますが、せっかくなので今日も書いてみることにします。

「月~日」という選択肢をハナから入れていないあたり、自分の楽したい癖がにじみ出ています。


今日はモミヤマさんの話でも書こう。

僕が昔バイトしていた某ファミレスの社員、モミヤマさん。

空手をやっているらしく、ガタイも良くて、北斗の拳の世界から飛び出してきたような見た目の人でした。

モミヤマさんはキッチンが非常に強くて、ランチのピークタイムでも、ディナーのピークタイムでも潰れたことがなかったのです(オーダーを捌ききれなくなることを、キッチンが潰れると表現していました)。バイトの新人である僕と一緒にキッチンを回しても、僕のフォローをしながら、悪夢のような量のオーダーをバリバリとこなしていた猛者でした。

しぱらくしてバイトに慣れてきたら、モミヤマさんの強さの理由も分かってきます。

モミヤマさんは独自の調理法を用いていたのです。マニュアルでは、1つの鍋では2人前づつしかチャーハンを作ってはいけないのに、オーダーが入れば5人前でも一気に炒めていました。並みの腕力では、とても鍋を振れません。また、ラーメンだって1度に6人前の麺を茹でて、盛り付けして、フロアに提供します。もちろん麺のゆで時間もマニュアルである2分から±1分くらいの誤差はお手のもの。油通ししてから煮込む料理だって、最後に煮込むから一緒、という考えのもと、油通しを省いたり。トングや手袋をはめて触る食材だって、火を入れれば大丈夫だからと、思いっきり素手で掴んでいました。

また、キッチンに入るときには、僕たちバイトは石鹸で手をあらい、ブラシで爪の間を磨き、逆性石鹸液に手を浸すという、手洗いだけで1分半の時間をかけるのですが、モミヤマさんは10秒ほどでキッチンに入ってきていました。

そして仕事が終われば学生バイトたちを連れて飲み歩く、僕たちバイトに人気のある豪快な人でした。こういうときに漢(おとこ)と書くのかな。中には10代の学生バイトもいたかもしれませんが、そんな小さなことは気にしません。

カバンの中にはいつもヌンチャクが入っていて、飲むとヌンチャクの技を見せてくれたりしました。空手でヌンチャクを使うのかは知りませんが、空手以外にも武道をやっていたようです。もちろんヌンチャクなんて職質されたら一発アウトだと思うのですが、モミヤマさんなら法律ごとぶっ飛ばしてしまいそうです。

よく言えば豪快でおおらか、悪く言えばノーコンプライアンスな漢でした。

そんなモミヤマさんに仕事を教わった僕たちバイトも、キッチンが強くなりました。もちろんモミヤマ流調理法によって。

今考えると、よく一度も食中毒出さなかったなと思いますけども。

僕がバイトで入ってから半年ほどでモミヤマさんは退職されたのですが、のちに聞いた退職の理由も漢でした。

とある武術大会に出場するために、仕事の休みを申請していたのに、その日に急に人手が足りなくなったから出勤してくれと言われ、仕事よりも武術大会を選んだそうです。

モミヤマさんがいなくなり、新しく入った社員さんの前で、僕たちバイトがモミヤマ流の調理法をしていたら、引くほど怒られました。なんなら、朝の仕込みの方法や鍋の洗い方すらマニュアル違反でした。僕たちモミヤマチルドレンは、また一から仕事の覚え直しになりました。

モミヤマさんがいなくなって数週間。ちゃんとしたマニュアルで仕事を覚え直した頃、フロアのバイトの子が料理を食べて「あれ?味変わった?」と言っていました。いえ、変わったというか正しい味に戻っただけです。


モミヤマさん、今なにやっているのかなー?


※登場する人物は仮名かもしれないですし、そうじゃないかもしれません。エピソードも大きく脚色されているかもしれませんし、そうじゃないかもしれません



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