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【花嫁へ、心を込めて、シャネルを。】

大学時代の親友から久々の、突然のLINEが
『結婚しました』
だった。

ここ2年ほど会っていないうちに
お互いの状況すら分からなくなっていたとは。

***


どれくらいのオトモダチかというと
知り合ってから10年以上。

学生の時は、同じバイト先で働いていて、暇を見つけては店長に隠れてくだらないおしゃべりをしたり。一緒に海外旅行も行ったり。

大学を卒業してお互い社会人になってからも、しょっちゅう飲みに行っては
お互い現在進行形の恋の報告をしたり。
過去完了形の恋に囚われて、もがいた悩みを共有したり。

たまたまカバンの中に入っている小説が全く一緒だった、みたいなこともあったり。
どことなく、私と見ている景色が似てるのかな。共有できる価値観が山ほどあった。

彼女の纏う空気感は、いつも角がなくてまろみがあって。一緒にいると落ち着く、と一言でまとめればそうなのだが。絹豆腐のように白い肌の彼女は、心も豆腐の如く柔らかで、他人を上手く包むのだ。


4-5年前に、彼女は、情熱を注いでいた大恋愛を手放した。それ以降、私が見る限り彼女は恋に対してあまり労力を注がず、キャリアに心血を注いでいたような、気がする。
もちろん素敵な女性だから、常に恋人は居たけれども。20%の恋人、15%の恋人、みたいな感じを淡々とこなしていたような、気がする。

***

途中経過もなくいきなり結婚の報告が来て驚いたが、とにもかくにも、友人が花嫁になると聞いて、久しぶりに心にぽっと火が灯るように温まった。


何かお祝いをせねば。


しかし、もはやここ数年は私の周りも落ち着いてきてしまい、何をあげたら新婚カップルが喜ぶかサッパリわからなくなってしまった。自分達の記憶ももはや思い出せず…(夫に聞いても『何が喜ぶかね?』『何だろね?』の堂々巡り…)

食器?いや一人暮らし歴がそれなりにあったらある程度は揃ってるから不要でしょ。
お酒?いや相手が飲まない人の可能性もあるでしょ。

と1人脳内会議を済ませ、全私取締役の決議の結果、

『夫婦向けの物ではなく、花嫁が喜ぶ美容グッズにしましょう』となった。


花嫁の喜びは、花婿の悦びでもある。

と、少々強引に結論づけ。

***

からりと晴れた日に銀座へ向かう。

銀座三越を徘徊する足取りは、久々に軽かった。本当に久しぶりに、『大切な誰かの喜ぶ顔が見たくて』モノを選びに来た気がする。

私は昔から百貨店という存在が好きで、用がなくてもデパートで時間をいくらでも過ごせるタイプなのだが(大して売上には貢献してませんが)、
コロナ禍、そもそもデパートに行く機会も減ってしまい、プレゼントをあげるようなパーティーも無いから、最近は大体の用事が
『ネットで調べたデパコスをさっさと購入だけしにいこ』『疲れたから何か甘いものを物色しよう』と、自分本位の買い物のためのデパート。だった。

"誰かの為を想うモノ探し"は、いつぶりだろう?

CHANELの前で足が止まった。
おシャネル様の白と黒を基調とした店舗をぼんやり眺めた。買うものは決まってなかったけど、もう頭の中では漠然とCHANELの何かにしようと自分で思ってたんだろう。

花嫁となる友人は
特にシャネラーではないが、
かつて見たある光景を思い出したからだ。

それは、2人で卒業旅行に行った時、
免税店で彼女がCHANELのアイシャドウを買っていた時のこと。
『CHANELの化粧品は初めてだ』
『これから社会人になる自分にプレゼント』
と、彼女は言っていた。

"就職"という、人生のフェーズが変わるその時に、CHANELが力となり、寄り添ってくれるだろう
と信じて彼女は選んだのだろう。

だから私は思った。
また、人生のフェーズが大きく変わる
"結婚"というタイミングで、
またCHANELが彼女の力になってくれますように、と。

私は普段、店員さんに声をかけられるのがあまり得意では無い。静かに自分で決めたいタイプだ。だが今回は色々話を聞きたい気分だった。たまたま目があった店員さんが付いてくれた。予算や、用途なんかを簡単に話し、何か良いものはないか、尋ねてみた。
その方の接客がとても素晴らしく、本当に心から満足する接客ってあるんだなぁと、また違う意味で百貨店の醍醐味を再確認した。

結局、プレゼントに買ったのは
『ガブリエル』のシャワージェルだ。

ガブリエルはココシャネルの本名であり、ガブリエルシリーズは割と新しいシリーズだそうな。

ホワイト フローラルの香りのシャワージェル。4つの白い花々のブーケから成るコンポジション。クリーミィで、包み込まれるようなやさしさと、エキゾチックな魅力があふれるジャスミンと、グリーン&フルーティなイラン イランの輝き。そして、はじけるようなオレンジ ブロッサムの香りの中に、極上の美しいドレスを思わせるようなグラース チュベローズが顔をのぞかせます。


華々しくて、でもイノセンスな感じが漂う。
花嫁にぴったりだ。そう思った。

品物自体は割と即決したのだが、
店員さんから他にもいくつか紹介してもらう中で、さりげなくシャネルの歴史や、長く使えるようTPOに即した使用方法を会話に織り交ぜつつ、新商品の宣伝もする。持つ知識を、必要なタイミングで適切な量だけ、会話のエッセンスにひとさじ、まぶす。あっぱれ、素晴らしい、としか言えない接客だったなぁ。

店舗を去るその瞬間まで、
心が満ちていっぱいになり、
すっかりこの人のファンになり、
また今度、買いに来ます、なんて言って去ってしまった。

あぁ素敵な買い物時間だったぁ。

三越のライオンを横目に、帰路についた。

今度、彼女に会いに行こう。
CHANELのはなむけを持って。


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