日本の卓球を支えてきた奇跡の同期トリオ~伊藤美誠・早田ひな・平野美宇

丁度、全日本卓球の大会期間中で、最終結果はまだ出てないが、女子五輪のシングルス出場枠2名がほぼ確定したとのことで、伊藤の涙の会見があった。



辛さは非常に大きいと思うが、人生はまだ長いので、続けるにしても離れるにしても、気持ちの整理をつけて再出発してもらいたい。


同期3人(平野、早田)の中で最も早くから五輪に出場した伊藤美誠は、リオで団体銀、東京五輪では水谷との混合で初の金メダル。

団体で銀、初出場シングルスでも銅メダルを獲得し、日本卓球界を牽引してきた選手として重責を果たした。

その第一人者の陰で涙を飲んできた2人―早田と平野―が、次は伊藤に代わって、五輪の舞台で初のシングルス出場となるだろう。


リオ五輪や東京五輪で、今回の伊藤と同じように出場機会を断念させられた二人は、その悔しさや不甲斐なさなどを糧として、今回の出場を掴み獲ったのである。
平野は東京五輪の団体で銀メダルを獲得できたので2度目の五輪出場だが、早田の場合は五輪出場自体が初めてなのだ。それも、日本の女子卓球界のエースとして。

伊藤にとっては、平野も早田も、長年のダブルスパートナーとして共にプレーしてきた。団体戦でも、組んで戦ってきた。
まだ中学生だった頃、「みうみま」で国際大会に出場して名を轟かせていた時代もあった。

が、いつしかライバル関係を意識してか、選手の事情などもあり、伊藤は早田とダブルスを組むようになった。当時、早田はシングルスでは依然として下位に沈んでおり、国際大会のメンバーからも漏れていた。

シングルス2枠の為、全日本などで優勝してた伊藤と残り1枠を巡って、石川佳純と平野美宇の激しい競争もあった。
リオ五輪後に福原が去った後、最年長リーダーとなった石川は、伊藤・早田・平野世代の挑戦を常に受け続ける苦しい立場だった。
が、団体戦では良いチームワークを見せて、勝利をもぎ取ってきた。恐らくリオ後に石川を強くしたのは、3人娘の存在のお陰だったろう。


伊藤はこれまで女子卓球界の先頭に立ち、厳しい環境の中で戦い続けてきた。特に対中国戦では、かなりの期待を背負ってきた。東京五輪での史上初の混合金メダルは、その貢献へのご褒美だったのではないかな。

だが、戦いに疲れることもあるのではないか。
この1年くらいの低迷や不調は、長年第一人者として在り続けた重圧や責任感などが蓄積した疲労として出たものなのかもしれないな、と。


今大会で見ても、初戦からフルゲームの大苦戦なんて、東京五輪前だとほぼ想定し難い話だったのでは?

相手に研究されてる云々以前に、伊藤自身が「うまくいかない自分」を過度に悲観してしまい、プレーに精彩を欠くということになってるのでは。


伊藤の敗退が決まった後、平野も思わぬ敗戦で五輪代表としては「勝負弱い」水準での敗退となったが、これも多分「プレッシャー」(とそこからの解放)による凡ミス・集中力のなさ、から来るものだったのではないかな。


伊藤は自分のシングルスの練習などを優先して、国際大会を回避したりしたのではないかと思うが、その間に早田や平野は勿論の事、若手の長崎・木原やチョレイ妹の張本美和などの台頭が顕著となった。

下の世代が国際大会の日本代表戦で揉まれたりして、かつての美誠ちゃんのように「怖いもの知らず」で好プレーや好成績を出しているのを見ると、一層焦りや辛さが募ったのではなかろうか。


伊藤にとってのライバルが、これまで戦ってきた平野や早田だけではなく、自身が若い時期から上の世代を打ち負かして行ったのと同じように、下の世代にも拡がっていたのだ。

そのことが、既に恐怖を生む要因になってしまった。
そういう戦いの場に立つ以前に、伊藤の敗退が決まった。


勝利した相手選手とて、長年卓球をやってきて、何度もダメで失敗して、人知れず努力を重ねてきた苦労人の選手だったのだろう(次の試合で残念ながら魔法が解けてしまったのかも。3-1から3ゲーム連取され逆転負けとの事。力はあれど勝者のメンタリティを持ってるとは限らない…)。

試合になれば、皆、死にもの狂いで挑んでくるに決まっているのだ。それが勝負の場だから。



当方には卓球が分かるわけではないが、長年見てきた伊藤の不調の理由というのは、主に気持ちの問題ではないかなと思う。

これまでにも、若手の挑戦を受け続けてきたトップ選手は大勢いる。中国でも厳しい競争がある。東京五輪で金を獲得した陳夢は、強豪ひしめく中で年長者のタフネスと技巧でメダルを獲った。若手のランキング上位選手は大勢いる中であっても、勝ったのは陳夢だったということだ。

成長は何歳になっても続けられる。
まだ若いので、どう生きるかは自由だ。やりたいようにやればいいと思う。
今後がどうなろうとも、伊藤が日本卓球界に残した足跡も、偉大なる貢献も決して色褪せることはない。それは確実だ。

戦場に戻れる気持ちが奮い立つのかどうかは、本人次第である。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?