日銀の利上げを意識しすぎたGDP2次速報改定値~設備投資依存の一本足打法


1次速報では、-0.1%と前四半期(7-9月期)に引き続きマイナス成長だったが、本日の2次速報では一転してプラス改定(’+0.1%)となり、年率換算で+0.4%だと報道では景気改善を猛アピールだった。



『2023年10~12月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響をのぞいた実質(季節調整値)で前期(7~9月期)より0・1%増、この状態が1年続いた場合の年率換算で0・4%増だった。内閣府が11日発表した2次速報で、2月に公表した1次速報(前期より0・1%減、年率0・4%減)を上方修正した。その結果、2四半期ぶりのプラス成長になった。』


植田日銀が何としてもマイナス金利解除を断行できるよう、全面協力体制といったところではないかな。

強い数字だったのは、兎に角「民間設備投資」(+2.0%)ということで、企業の設備投資増加がプラス改定を可能にしたのだ、と。逆に家計消費は減少幅が拡大し、-0.2から-0.3%へと下方修正となった。


内閣府の発表資料を見てみました。


こちら>

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf


設備投資が+2%増とはいっても、四半期名目値の原系列(3-4表)では22年10-12月期から見ると

7.7
9.0
4.7
2.2
5.6

で、前年同期比では大して増加してるわけではない。名目額での取引だろうから、企業側の投資姿勢(意欲)というのは、前年同期比で大して伸びてるわけでもなさそう、ということだ。


全体として総固定資本形成の寄与度頼みとなっており、実質値でも原系列寄与度0.6、季調済寄与度0.3で、概ね「ハコモノ投資」的な額が少々増えたのだろうといった話かな、と(例えば半導体工場の建設、みたいな?)。


個人消費がマイナス拡大で下方修正となった一方で、企業設備投資が1次速報-0.1から+2.0に改定されたこと、その一点のみでプラス圏に浮上した、という話なのですよね。


これ、季節調整済の値なので、言い方は悪いが「実際の経済とは多少違う」し、計算結果で産出算出できる数字なので「工夫の余地」がないわけでもないんじゃないかな、と思えたりするわけです。


原系列の名目値を見ると、確実に減少傾向を辿ってきて、たまたま10-12月期に少し持ち直したかもな、という程度であり、物価指数も22年末~23年1-3月期には高かったわけで、実質成長率の増加は「主にインフレ率の減速」で設備投資の季調済の値が「ましに見える」ようになっただけじゃないのかな、と。

だって、比較対照となる22年10-12月期の設備投資は「-1.3%」と結果が悪かったわけで、今期が少しマシに見えても不思議でもない気が。


根本的な問題として、家計(個人)消費のウエイトが好景気時代の約60%(米国は更に多い)から、昨今では約52%と低迷を続けているわけで、今回の2次改定でもマイナスが拡大しているのは、その傾向に拍車がかかっているということでもある。
つまり、割と厳しい環境、ということだ。


企業の設備投資、それも主要な固定資本頼みでは、大して長続きはしないだろう。
受注残が減少すると、たちまち息切れすることになる。


単なる節約社会が続くなら、金融投資額は増えるかもしれないが、消費減退が継続することでデフレの影が迫ってくることになろう。




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