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【声色ききみみずきん】#13 壇蜜さん・大久保佳代子さんの声は、諦念と聡明と生命力が溶け合っている

さて、壇蜜さん(38歳)と、大久保佳代子さん(47歳)。

5年程前に、ブログでお二人の声分析の記事を書いた。当時、ぐんぐん勢いが出てきて、メディアでもかなり明け透けできわどい発言をされていた。けれど、じっくり声を聴くと、印象が変わった。

「壇蜜さんは、中音域の少し高めの声。噛み合せのあたりの筋肉に、力を入れてお話をさせているので、口が開きにくいのかも。そのため、口の中の空間が狭くなって、声が薄く平べったく感じられる。ものすごく頭を使っている人の声、硬い人の声、という印象」

と、書いた。けれど、鼻から息を抜き、多少鼻にかかった発声なので、声に可愛いらしい色気が出ていた。

かたや、お笑い芸人の大久保佳代子さん。鳴かず飛ばずの状態から、大ブレイクした彼女。

「壇蜜さんに比べて、低音。舞台に立つことも多い方なので、口の中の空間も広く、響きもある。それが包容力を感じさせ、鼻にかかった声が色気にもつながっている。また声の輪郭も、はっきりしていて良い声」

と書いた。大久保さんの声は、外はパリパリ、中身はしっとりという印象。きわどい発言も、声の柔らかさが上手にカバーしているのだと感じる。

◆◆◆

おふたりの声に共通して思い浮かぶのは、「常識人」、「聡明」というワード。

壇蜜さんは30歳まで、さまざまな職業を体験されているし、大久保さんは、仕事のない状態が続き、今の仕事だけで生活できるようになったのは、デビューして随分経ってから。
社会の中で、ちゃんともがいていたという形跡が、声に表れるのだと思う。

たくさん傷ついてもいるんだと思う。
私も年齢を重ねて思うようになったのは、ちゃんと傷付いた人には、その傷に光が当たって美しく感じられるようになるということ。それ「痛かったよね」とさりげなく寄り添うことが出来し、時には捨て身になれる。強い。

有吉弘行さんの声にも感じたのだけれど、ある種の諦念、「あきらめ」の要素が二人の声には感じられる。

たぶん、今の状況が、うたかただと「気付いている」。
終わりがあると「知っている」。

社会の中で在り方を学び、痛みも知り、自分の特性にも気付き、与えられた仕事に真摯に向き合う。でも、それが永遠に続くわけじゃないと、どこかで、ちゃんとわきまえてもいる。

同業の方や、女性から人気が高いのも、そんな下地があるからなのだと思う。

強くて、弱くて、常識的で、飛び抜けて聡明なふたり。自分自身の可能性をあきらめず、切り開いてきた生命力あるふたり。あきらめているからこその自己開示力であり、思いきりもあるふたり。

(自分の可能性は)あきらめずに、(執着を捨てて)あきらめる!

これ、いいな。私は、彼女たちよりずっとずっと年上だけど、私も、あきらめて、あきらめずに生きる。

そして、まだまだ、もがいてみる。

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