【声色ききみみずきん】#26 林修さんと池上彰さんは「わかりやすく伝える」ために練り上げられた極上の職人声。
多くの人に向かって お話をする時、
「意図した通りに伝わっているかな」
「楽しんでいただけているかな」
「わかりやすかったかな」
などと、話しながらも気になってしまいますよね。
そこで本日は、著作、テレビなどで大活躍の「伝える」達人のお二人の声に聞き耳を立ててみます。
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おひとりは、林修先生。
東進ハイスクール・東進衛星予備校国語科専任講師の林先生。
2010年よりテレビタレントの活動を開始し、CMのセリフ「今でしょ!」が、2013年の流行語 大賞にも選ばれました。
今や、ご自身の名前がタイトルに付く冠番組もお持ちです。
素晴らしいご活躍ですね。
林先生の特徴は、口元。
くちびるが、前に突き出しています。
甘えん坊さんの口。
そして、自己主張の強い口。
人間は、伝えたいことがある時や相手に受け止めて欲しい時、口角の力が抜けて唇が前に突き出て、ラッパの先のベルのような形になります。
その方が、声が前に出やすいことを本能的に知っているのでしょう。
無意識でいても、自然に唇が前に出てしまうんですよ。
「ねぇねぇ、お母さん、聞いて!聞いて!」
と言って甘えている、子どもの口元のよう です。
伝えたくて、伝えたくて仕方ないと いう口でもあります。
林先生の口は、講師として、タレントとして、まさに伝える人の形と動きをしています。
ただ、林先生…
きっと、本来は内向的な人。
エネルギーが内側に向いている人となのではと推察します。
なぜなら、一対多の関係で話している、 つまり講義形式で話している時は、 声の押し出しが強く一語一語はっきりと発していますし、リズムや間も良い!
ところが、一対一や少人数で会話をする時は、途端に声が受け身になります。音量もエネルギーも極端に下がります。
まぁ、生粋のタレントさんではありません から、無理もない話なのですが。
頭が良くて押し出しも強いけれど、受け身で繊細な人が林先生の中に共存しているという印象です。
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さて、もうお一方は、元NHK社会部の記者である 池上彰さん。
著作は多数!
冠番組や特別番組での分かりやすいニュース解説は、他のキャスターの追従を許しません。
声が良いんですよね。
サクッとしていて、肌触りが良く、とても聴き心地の良い声です。
70代なのだそうですね。
一時期、奥歯からの息漏れや、滑舌が少しゆるくなられた感じもお見受けしたのですが、今はさほど気にならず、鋭い切れ味は継続中。
さすがです。
池上さんの場合、取材対象にかなり辛辣な言葉をぶつけても、威圧的や暴力的にならないのは、その声の軽やかさがあるからなのだろうと思います。
池上さんも、伝える時に口角がゆるんで唇が前に出ていますね。
林先生同様、やはり伝える人の口の動きです。
林先生の声を柔らかい布地だとすると、池上さんの声は、やや金属的。
メタリックな感触ですかね。
少し高めで、若干乾いた感じのする声が、人としての親しみやすさにもつながっています。
物知りで切れ者なんだけれど、存外気さくに話せる親戚の おじちゃん。
それが、池上さんの持ち味なのだと思います。
~☆
さて、おふたりの伝える技術が素晴らしい のは、そのわかりやすさです。
林先生の講義は、視点がユニークで 聴く人の好奇心をかきたてます。
池上さんの政治の解説は、国を擬人化して子どもでもわかるように嚙み砕いて伝えてくれます。
おふたりとも、けっして難しい言葉は使いません。
作家・井上ひさしさんは、
むずかしいことをやさしく、 やさしいことをふかく、
ふかいことをおもしろく、 おもしろいことをまじめに、
まじめなことをゆかいに、 そしてゆかいなことは
あくまでゆかいに
という言葉を残しています。
まさに、そんな伝える技術をお持ちの お二人。
職人芸のようです。
それから、林先生は多趣味。
池上さんも、好奇心旺盛。
素直に、泣いたり怒ったり感動したりよろこんだりしながら、たくさんのことをインプット して、わかりやすく噛み砕いて伝える。
伝えるために、遊ぶ。
伝える側がイキイキと心を動かしていないと、受け取る側の心を動かすことは出来ないということなんですよね。
教壇に立つ人、伝えることが職業の人は、そこが原点。
時々自らチェックをしないと、受け取る人を置いてけぼりにしてしまうかもしれません。
私も、やさしく・ふかく・おもしろく まじめに・ゆかいに伝えられるように好奇心を持ち続け、自分に問いかけつつ進んで行きたいと思います。
林先生と池上さん。
お二人の中にはきっと、知りたい、驚きたい、伝えたいという子どものような純粋な動機が、ずっとイキイキと走り回っているのでしょう。
あなたの中にも、いるはずです!!
さぁ!
あなたもよ~く、林修さんと池上彰さんの声にききみみを立ててみて下さいね!
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