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『ムーミン・コミックス』これまでの収録状況 ざっと


なんだか最近、ネット上で本を探していて、その本の欲しい部分の情報がのってない、ああ載ってない、ということが多い。
多いのだ。

けしてネタバレ、というほどでもないようなこと。

というわけで
きっかけは去年出た『英語対訳 ムーミン・コミックス』という本。
「本邦初公開を含む7本収録」と説明にあって、
でもどのタイトル、計何本が初公開なのか
書いてなかった。

そこで調べはじめたら、沼に・・・・・・



ムーミン・コミックスとは


ムーミンコミックス。最高です。

ムーミンの原作は小説版が有名で、作者トーベ・ヤンソン本人による挿絵が入っていましたね。
それは彼女が画家だから。
絵本も描き、それ以上に新聞連載のマンガ版があるのです。それがムーミンコミックスだ!

しかも、初期はトーベ・ヤンソン本人が、
後期は、手伝っていた弟のラルス・ヤンソンが引きついで描いたもの。

これはもう正典でしょう。

実際、小説にあるエピソードが少し違う形で描かれていたり、コミック版からアニメになったエピソードもあるとか。



いま買えるもの


いま手に入りやすいものとしては
『ムーミン・コミックス』シリーズ全14巻が筑摩書房から出ています(2000~2001年刊行)。

これは全収録ではなく、よりぬき版
時事ネタなどが絡んでくるものもあり、省いたものがあった、と訳者解説にあるのです。
(※トーベ・ヤンソン作のものは計21話をすべて収録。ラルス・ヤンソンのものは52話中21話。14巻78ページより

そこからさらによりぬいた
ちくま文庫版『ムーミン・コミックス セレクション』が全2巻で2015年に出ています。


それでですね、去年、筑摩書房からさらに
『英語対訳 ムーミン・コミックス』という本が出たんですよ。

「本邦初公開を含む7つのストーリーを収録」
と、書いてある。

が、7本中何本が初公開なのかが、書いてない!!

本の中には、書いてあるだろう。
でも買う前に、知りたいもんじゃないか。



ムーミンコミックスの収録状況はどうなっているのか

といって、ここから自分でわかる範囲で収録リストを作ってたんですが、
ファンサイト「ムーミン谷へのみち」さんに
ものすごくわかりやすいリストが載ってあります。
そちらをどうぞ。

ムーミンのコミック 概要
トーベ・ヤンソンさんと弟のラルス・ヤンソンさんによって1954年から1975年までの21年間にわたり、イギリスの「イヴニング・ニューズ(Evening News)」に英語で連載された。
トーベさんがスウェーデン語で書いたものをラルスさんが英語に翻訳して掲載。全73話。このうち、ヤンソンさんの執筆分は最初の21作品。ただし、第14話、第15話、第16話、第17話、第19話、第20話、第21話はラルスさんが原案協力もしている。そして、第22話以降はラルスさんひとりで15年間も連載を続けた。
アニメでお馴染みの「スティンキー」と「署長さん」は、実はこのコミックスにしか登場しないキャラクター。
(太字 引用者)



全部読むにはどうすればいいのか

さてそれで
ムーミン・コミックスを全部読むにはどうすればいいのか。

これがねえ、わからないんですね。

トーベ・ヤンソンが絵を描いたものは「筑摩書房版」14巻にすべて収められている。(収録巻は後述)

問題は、ラルス絵のものです。
筑摩版にはさっき書いたように、52話中21話までしか入っていない。
「英語対訳」で初公開のものを入れても、まだまだ足りないわけで。


そうなると、海外に目を向けてみる。

ヤンソンの故郷、フィンランドではきっと完全版が出ているだろう、と思うけどわからない。

英語ならどうか?
「Moomin: The Complete Comic Strip」(Drawn & Quarterly Pubns) が、今のところの決定版のよう。洋書。英語。日本のアマゾンで買えます。

これは、vol.1~vol.5までがトーベ・ヤンソン回(1話~21話収録)
vol.6~10までがラルス・ヤンソン回(22話~41話収録)。
という分冊で刊行されたあと、いまはトーベ合本、ラルス合本という形の豪華版も出ています。

↓ トーベ合本版。日本語のレビューもある。

↑ ラルフ合本版。まだ全てではない。


先ほどのリストを見ればわかりますが、こちらは発表した時系列で収録していて
(※ただし1947年作のプロトタイプ的な「ムーミントロールと地球の終わり」は、掲載紙が別なので省かれている)
今のところ全73話中、第41話まで収録している。
筑摩版に入っていないラルス作も多数含む。

(※逆に筑摩版に入ってて、こちら D&Q版 がまだ収録していないものもある)

英語版なので、イブニング・ニューズに掲載されたままの形が見られる(たぶん)、というのも嬉しいところかと。



筑摩版(2000~2001)

さて、では
日本語で一番手に入りやすい筑摩版
これ、特色としては、スウェーデン語からの翻訳なんです。

トーベが絵を描いていたころから、ラルスが英語への翻訳を手伝っていた
と書いてありましたから、逆に、スウェーデン語バージョンのほうがトーベ・ヤンソンそのもの、といえるかもしれません。
まあ結局翻訳してるんだけど。重訳かどうかという。

(※なおフィンランドでは、フィンランド語・スウェーデン語 両方とも公用語ながら、フィンランド語がかなりの多数派らしい。色々あるなー)

訳者の冨原眞弓さんはトーベ・ヤンソンの小説を多数訳されている方。


とりあえずご参考に、収録リストを引用します。
数字は製作年。第14巻の巻末より。('60年以降がラルス担当回)

第1巻 黄金のしっぽ
黄金のしっぽ 1958
ムーミンパパの灯台守 1957
第2巻 あこがれの遠い土地
ムーミン谷のきままな暮らし 1958
タイムマシンでワイルドウエスト 1957
あこがれの遠い土地 1958
ムーミンママの小さなひみつ 1957
第3巻 ムーミン、海へいく
ムーミン、海へいく 1959
ジャングルになったムーミン谷 1956
スニフ、心をいれかえる 1968
第4巻 恋するムーミン
恋するムーミン 1956
家をたてよう 1956
ちっちゃなバンパイア 1964
署長さんの甥っ子 1962
第5巻 ムーミン谷のクリスマス
預言者あらわる 1956
イチジク茂みのへっぽこ博士 1959
ムーミン谷のクリスマス 1970
第6巻 おかしなお客さん
おかしなお客さん 1959
ミムラのダイヤモンド 1963
レディ危機一髪 1963
第7巻 まいごの火星人
まいごの火星人 1957
ムーミンママののノスタルジー 1965
わがままな人魚 1969
第8巻 ムーミンパパとひみつ団
やっかいな冬 1955
ムーミンパパとひみつ団 1960
ムーミン谷の小さな公園 1965
第9巻 彗星がふってくる日
彗星がふってくる日 1959
サーカスがやってきた 1960
大おばさんの遺言 1963
第10巻  春の気分
南の島にくりだそう 1955
ムーミン谷の宝さがし 1961
春の気分 1966
第11巻 魔法のカエルとおとぎの国
おさびし島のご先祖さま 1955
魔法のカエルとおとぎの国 1966
テレビづけのムーミンパパ 1964
第12巻 ふしぎなごっこ遊び
ふしぎなごっこ遊び 1956
ムーミンと魔法のランプ 1960
ムーミン谷の大スクープ 1968
第13巻 しあわせな日々
スナフキンの鉄道 1960
しあわせな日々 1971
まよえる革命家 1970
第14巻 ひとりぼっちのムーミン
ひとりぼっちのムーミン 1954
ムーミン谷への遠い道のり 1955
ムーミントロールと地球の終わり 1947

各巻ごと特色が出るように収録作品を選んでいることがわかります。
時系列ではありません。

時系列~年代順のリストは、先と同じリンクですがこちらをご参照ください。



講談社版(1969~1970)

むかしに出た版を掘りおこす向きには。

講談社版は、『ムーミンまんがシリーズ』として刊行されたそうで、以下のラインナップ。(ウィキペディアから引用)

1. とってもムーミン 1969年
2. びっくりムーミン 1970年
3. それいけムーミン 1970年
4. ぐっときてムーミン 1970年
5. ハレハレムーミン 1970年
6. ムーミンワルツ 1970年
7. あの日のムーミン 1970年
8. いうなればムーミン 1970年
9. やったぜムーミン 1970年
10. そこぬけムーミン 1970年

ほー、「とってもムーミン」なんてエピソードがあったのか!こら筑摩版にもなかった!

と言えればいいですが、何が入ってるのかわからないな・・・。

「ムーミン谷へのみち」によると、計29話収録しているそうです。



ベネッセ(旧 福武書店)版 (1991~1993)


ベネッセ版は『絵本こみっくす ムーミンの冒険日記』。
またしても「ムーミン谷へのみち」さんへリンク。

1冊に1話収録。おそらく英語版からの翻訳で、アニメ放映時の出版ということもあるのか、簡潔明快な訳文になっています(筑摩版とはだいぶちがう)。
各巻末にコラムを収録。
原画が残っていないため、ヤンソン母の切り抜きを使っているそうです(1巻末より)。この時点でそうなら、筑摩版も同じということですかね。でも・・・

画像2

↑ ベネッセ版(6巻3ページ)

画像3

↑ 筑摩版(9巻2ページ)

ベネッセ版は非常にクリアな画質になっていることがわかります。フキダシの形も違う(!) ・・・なぜでしょう?

収録リスト

1. ムーミン英雄になる 1991年
 (筑摩14巻「ひとりぼっちのムーミン」。
  巻末コラムは訳者。ムーミンコミックスの概要)
2. ムーミンパパの幸せな日々 1991年8月
 (筑摩14巻「ムーミン谷への遠い道のり」。
  巻末コラムは訳者。トーべ・ラルスとの思い出など)
3. ご先祖さまは難破船あらし!? 1991年
 (筑摩11巻「おさびし島のご先祖様」。
  巻末コラムは訳者。'90年のトーベ、ラルス、トゥーリッキー
  来日について)
4. ムーミン家をたてる 1991年
5. ジャングルになったムーミン谷 1991年11月
 (筑摩3巻「ジャングルになったムーミン谷」。
  巻末は訳者の「トロール」に関するコラム、
  およびラルスからのこのシリーズについての感想)
6. ムーミン谷に彗星がふる日 1992年
 (筑摩9巻「彗星がふってくる日」。コラムはラルス担当。作品の
  成りたち、当時の連載事情について)
7. ムーミン谷のスポーツ大会騒動 1992年
8. ムーミン南の海へゆく 1992年
9. ムーミン一家とメイドのミザベル 1992年11月
 
(筑摩12巻「ふしぎなごっこ遊び」。
  巻末はラルス。ヤンソン家で働いていたメイドについて)
10. ムーミン谷に火星ジン!? 1993年1月
 (筑摩7巻「まいごの火星人」。
  巻末はラルス。日本の印象について)



『英語対訳 ムーミンコミックス』(2020)

そしていよいよ

『英語対訳 ムーミン・コミックス』に収録のエピソードは以下のとおり(サイトから)。筑摩版に収録済みかどうかを付記。

・ムーミンパパの灯台守   (1巻収録 1957)
・ムーミンママの小さなひみつ(2巻収録 1957)
・ムーミン谷のきままな暮らし(2巻収録 1958)
・ムーミンと魔法のランプ  (12巻収録 1960)
・ムーミンパパ農園主になる (筑摩未収録)
・ムーミン谷の芸術家たち  (筑摩未収録)
・ムーミンたちの戦争と平和 (筑摩未収録)

というわけで、7本中3本が、(少なくとも筑摩版には)未収録作!!
ということはわかりました。

(・・・こういうのって「*」印とかで「* は初公開」とか書いておくものじゃないのだろうか?)


しかしまだまだ、未邦訳のラルス作品はいっぱい、ということのようです。
英語版ですら第一線の流通には乗ってなさそう。



ラルスの作品はどこへゆく


ムーミンの全貌を知りたいひとは、ラルス・ヤンソンのも全部読みたい。

しかし、売れないとなあ・・・

そんなに、いま読んでもなあ・・・って感じなんだろうか?

それも含めて読みたいですけどね・・・・・・



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おわり



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