むかしの流行りネタをいまからどうやって知っていくのか ~ハウス カリー工房 編~

ドラマも映画もマンガも小説も、すぐれた作品は何十年と残りますが、作られたときの世の中のムードや流行りというものがありまして、作品のなかにはその「当時」が刻印されている。

そのムードとか流行りは、「当時」は当たり前だったので、わざわざ
「最近の世の中は・・・」
なんて解説は付かず、
突然、ポッ! と出現して去っていく。
スマホがないとかポケベルはまだしも
ムードや流行りを、現代で捕まえるのはなかなか難しいものです。

以前も
「『ガラスの仮面』第一巻に樹木希林(らしき人)が出演している」
というプチトリビア
を書いたことがあった。


今回は、シティボーイズライブのDVDと、安達哲のマンガ『お天気お姉さん』に、同じ時代の刻印がされていることを発見しました。


シティボーイズのDVD化されている映像では最古のライブ、1992年の
『鍵のないトイレ』


このなかに「機能主義者の憂鬱」という短いコントがある。タイトルのカッコつけ感も時代性だけど、本題は別で。

大竹まことさん扮する「評論家」が、キャスター(きたろうさん)に、インタビューを受けている。語る内容は、

世のすべての事物は「機能」の要請によって動かされている。たとえば近親相姦はほとんどの民族でタブーとされ、これは宗教的・倫理的な文化だとされているが、「機能」の観点でも奇形の発生を予防するという効果がある。人間の文化が生んだ風習と思われることでも、実は「機能」によってコントロールされた行動なのである

・・・云々。

そしてインタビュアーが
「では、人間の行動にはすべて『機能』がそなわっていると・・・?」
と問い、評論家がうなずくと・・・

その途端!
舞台端から、巨大なアライグマのお面をつけた男(斉木しげるさん)が登場する。

「♪私はかわいい、アライグーマ!
クマクマ、シュビドゥワ、クマ、クマクマ・・・」

そうして、舞台を横断していった。

インタビュアー「先生、あれは一体どんな機能が・・・?」
評論家    「ううんっ?」
〈終〉


で、私はずっとこの
「私はかわいい、アライグーマ!」
が、ただの”なんだかわからないもの”だと思ってたんですね。「機能」のないデタラメなんだと・・・。

元ネタがあるとは、全然知らなかった!


それを知るきっかけとなったのが、
最近読んだ『お天気お姉さん』でした。

『さくらの唄』『バカ姉弟』などの安達哲作品。1992~1994年連載。

前作『さくらの唄』の陰鬱さから一転、エロと人の醜さを湛えた作風は通底しながら、バカバカしいまでのハイテンションで打ち出した一品。

その、第1巻にこんなコマが(70ページ)

画像1

「♪わたしはかわいい アライグーマ!」

「♪わったしは かわいい オナニスーート♡」


あれえこれ 同じメロディじゃない?
と、文字面を見て思う。
そして、「カリー工房のフシで」というヒント!

早速、「カリー工房 CM」で検索すると、(1:12~)

これだ!!!

これ、そうか、「具が大きい」のやつか!!!


「具が大きい」というフレーズなら、よく耳にするので知っていた。
古くはクドカン脚本ドラマ『マンハッタンラブストーリー』(2003年)の中で、何度もテレビCMとして
「具が、多~~い!」
と松尾スズキさんの声でやってたり・・・。


しかし、「具が大きい」だけじゃなく

「わたしはかわいい、アライグーマ!」

1つのシリーズCMで2つも、名フレーズが作られていたとは・・・!

げにおそろしきは、

安達祐実。


そして「♪ハウス カリー工房」のほうは、だれも語り継いでいない感じのするのも、また、諸行無常であります。

げにおそろしきは、

安達祐実。


お天気お姉さんのほうは、初出は「ヤングマガジン」1992年19号ごろ。ということは5月ごろ。
シティボーイズライブも、だいたいゴールデンウィークあたりに開催していた・・・はず・・・
なので、おおむね同時期といっていいでしょう。
CMの出稿期間、そして消費期限とはどれくらいか。
でもこれだけの波及力。最近の例だと、ハズキルーペぐらい、いやそれ以上、認知が広がっていたんでしょう。


しかしこういう「元ネタさがし」って、際限がないよなあ。



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