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重大な契約違反と双方合意の謎
試合どころかトレーニングもなく、クラブの活動自体が止まっている中、4月下旬の地元紙に、え?と驚くニュースが報じられた。
06年のシーズン途中に鹿島から加入し、引退後も新潟に残り、トップチームやアカデミーのコーチとして活躍していた内田潤氏が、看過できない重大な契約違反があったとして解任されたという。
いったい何が起きたのか。その内容についても、クラブ側からは契約上話すことはできないと報じられていたため、古くからのサポーターを中心に、様々な憶測を呼ぶことになった。
去年まで、同紙でコラム執筆も担当していた間柄であるにも関わらず、内田氏のコメントを一切載せていないこと。さらに使用されていた写真がまるで無頼者のような写りであったことから、なにか言い訳できないようなことをしでかした感が強く、彼とマルシオ・リシャルデスとのコンビによる右サイドの崩しを見るのが、当時、何よりも楽しみだった私としては喪失感に似た大きなショックを受けていたのだが、その数日後、内田氏による反論が同紙に掲載されたことで、事態が少し明らかになっていく。
看過できない契約違反について
まず、1点目。内田氏は看過できない契約違反については思い当たる節がないという。
紙面によれば、「月会費の金額や再開方針についてクラブと議論、意見を擦り合わせていく中で契約違反に当たる行為や言動があったと指摘された」というが、内田氏には子ども(選手)や保護者を守る立場、彼らを代弁する立場もあり、クラブに対して意見を述べるのは当然の義務である。
ここの口を封じられていては、組織としても骨抜き極まりないが、これに関するお互いの言い分の相違が、そのまま今回の問題であるのは言うまでもない。
双方同意と報じられた点
次に2点目。双方同意なら「辞任」となるのが筋であり、これまで功績を考慮すれば辞任会見が行われなければならない。
それなのに、会見の開催もなく、内田氏側から、契約解除を言い渡された。理由はわからない、という情報が提供されるのみである。
対立構造を客観的に
この双方の対立について、事情もよくわからない私が、どちらの側に立って意見を述べる立場でないのは十分に承知している。
前段で、淡々と報道されていた事実を書き連ねていたのも、これを読んでいる人にも客観性を保って欲しかったからである。
プロ選手・スタッフのの労働者としての立場の弱さ
今回、改めてプロ契約という業務委託契約労働の立場の弱さを感じた。
プロとしてクラブと業務提携契約を結び、合わなかったら双方合意でやめてほかのチームを探せばいいというのは、確かにもっともな話である。
だが選手ならともかく、アカデミーのコーチなどは、シーズン途中でほかのチームを探すのは困難だろう。
退職金なども一切なく、今回のような契約途中での解約になると、ある日突然収入が途絶えることになる。
まして、今回のように、対立したまま、重大な契約違反があったからという一言で放り出されたのでは、狭い世界である、次の就職探しにも大きなマイナスとなろう。
契約違反の程度は知るよしもないが、仮に内田氏の主張するとおり、ボタンの掛け違い程度の問題で、いきなり契約解除を命じられたのでは、立場の弱い人間ならば、怖がって、自由闊達な意見などは言えなくなるだろう。
クラブには深いリスペクトを表する が・・・
このコロナ禍のなか、どのクラブも生き残るために必死で戦っている。
ましてアルビレックスのような、大企業がバックについているわけでもないクラブが我々の想像を超える戦いをしていることは想像に難くない。
アルビレックス新潟には深いリスペクトを評する。
しかし、サポーターの方も、クラブファーストの思いが強すぎるあまり、個人の人権が蹂躙されるようなことをそれこそ看過してはならないのではないか。
ましてや、アルビレックスはファミリーを強調している。今回の件も、報道に出す前に、双方で十分に話し合うことができなかったのか。
功労者を表玄関から送り出せず、裏口から放り出すようなチームはファミリ-といえるのだろうか。
私は、この点、クラブにも反省すべき点があったように思える。
クラブはみんなでつくるものであり、与えられるものではない。ファミリーであるなら、仮に誰かが間違ったことをしたのであればそれを質してやるのが家族であろう。少なくとも、すべてを無条件に受け入れているようでは、それはファミリーではなく宗教であり、独裁国家である。
繰り返すが、この問題について、双方の意見が出た後も、サポーター間に何も議論が起こらない状況が私には怖くて仕方がない。
健全で自由闊達な議論なくして、チームは成長できるのだろうか。
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