人格

僕の嫌いな人間が次々と死んでいった。

グチグチうるさい仕事場の上司。
生活音がうるさい隣の部屋の男。
僕のことを嫌っているまき(彼女)の母。

僕は古びた2階建のアパートの2階に住んでいる。週末は付き合って2年になる彼女が泊まりにくる。
そんな週末のある日、古びたアパートの階段から駆け上がってくる何人もの足音が聞こえてきた。
僕の家のチャイムが鳴り、ドアを開けると4人の大人がいた。

1人の男が内ポケットから手帳を見せてきた。
「警察です。立花まきさんはいますか?」
「警察?、、、いますけど、何ですか?」

手帳を見せてきた男とは違う別の男が内ポケットから紙を出してきた。
「立花まきさん、殺人容疑の疑いで警察に連行します。」

全く意味がわからなかった。
何がどうゆう状況でどうなっているのか。

奥の部屋で、玄関でのやり取りの声を聞いていたまきも意味がわかっていなかった。

まきが玄関に近づいてきた。
「すみません、全く意味わからないんですけど。どうゆうことですか?私が殺人?」
「詳しくは署でお話ししましょう。準備してください。」
「待って!!本当意味わからないんだけど!」
「詳しくは署で。」

まきは少し怒った感じで準備をしに部屋に戻っていった。
僕は警察の人にもう一度聞いた。
「まきが殺人容疑?何かの間違いじゃないんですか?」
「いいえ、間違いないです。」

本当に訳がわからなかった。

奥の部屋から準備を終えたまきがやってきた。
まきも訳がわからない感じで靴を履いていた。

僕はまきに話しかけようとしたがなんて声をかけたらいいのか分からず何も言えず、まきは不満そうな顔のまま部屋を出て警察に連行されていった。

僕は部屋に戻り、今さっき起こった状況を必死に理解しようとしていた。

まきが殺人?何かのドッキリ?
理解しようとしても全く理解できなかった。

それから数日後のことだった。

携帯が鳴った。警察からだった。
「立花まきさんを逮捕しました。罪状は殺人です。3名の方を殺しました。」
「え?」
「監視カメラに映っています。」
「ちょっと待ってください!!嘘でしょ?3人の人間を殺した?3人って誰?」


グチグチうるさい仕事場の上司。
生活音がうるさい隣の部屋の男。
僕のことを嫌っているまき(彼女)の母。

僕の嫌いな人間が次々と死んでいった。

本当待ってくれ!!訳がわからない。
一体どうなっているのか、、、


以前まきには話していた。
会社の上司がグチグチうるさくて、まじで嫌い。嫌みったらしいことばっかり言ってきて自分は全然仕事しない。まじでムカつく。

あと、
隣の部屋の男。とにかくうるさい。ドンドン音たてて歩くし、目覚ましは止めないし、朝方大声で携帯で喋ったり、爆音で音楽聴くし。まじストレス。

あと、
まきのお母さん。この件に関しては嫌いとかムカつくって訳じゃないんだけど、なんか精神的にきついんだよね。もちろん俺は好かれたいからお母さんの前で色々気配ったりしてるけど、あんなにわかりやすく無視されたりすると正直萎えるというかヘコむというか。


これが原因ってこと?
でもなんで?
まきは僕のために3人も殺したってこと?
この3人がいると僕がつらそうだから?
僕のつらそうな顔を見たくないからってこと?
僕のためにまきは自分のお母さんも殺してるの?
それ以外に殺す理由ないよね?
僕には笑顔でいて欲しいからってこと?

、、、


その理由は違っていた。


、、、


後日、刑事が僕のところへ来た。
そして本当の理由を聞かされた。

「まきさんは二重人格です。」
「え?二重人格?」
「はい、普段のまきさんは穏やかですが、もう1人の人格はとても弱い人間です。」
「嘘だ!そんなはずない!」

僕は本当のまきを知らなかった。

「ただ、もう1人の人格が出ている時は、まきさんは記憶を失っているみたいです」
「ちょっと待ってください!!一つ聞きたいんですが!」
「何でしょうか?」
「まきのもう1人の人格が仮に弱い人間だとしたら、殺人なんてできないでしょ!!」
「まきさんは実は脅されていたんです。」
「は?脅されていた?どうゆうこと?」

全然理解ができなかった。

「もしこの3人を殺さないとお前を殺すと言われていたそうなんです」

「じゃあその脅していた人間は誰なんですか?」

「あなたです。」

「はい?待ってください!僕がそんなことする訳ないでしょ?脅すなんてそんなことした記憶もないですし!!」

「まきさんが言ってました。あなたも二重人格だと。」


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