犯人。

私には妻も子供もいない。
友達は多くはないが何人かいる。毎日毎日1人で暮らしていた。
退屈。。。

そんな時、家のポストにチラシが入っていた。普段チラシはすぐ捨てるのに何故かその1枚に目を奪われた。

超高性能AI。
今なら一名様限定、1年間無料貸し出し!!

私はエントリーしてみることにした。
数日後、家のチャイムがなり出てみると、とんでもなく大きなダンボールを持った配達員が立っていた。

超高性能AIが届いたのだ。

私は高ぶる気持ちを抑え、ダンボールを開け、説明書を読みながら起動させた。
「こんにちは。」と話しかけたらすぐに「こんにちは。」と返ってきた。続けて「今日からよろしくお願いしますね!ご主人様」

まさに超高性能。

ほとんど人間と変わらない。日常会話は余裕で出来るし、少し教えれば私の代わりに仕事だって出来る。
家にずっといてストレスがたまり気分が悪くなる時もある。そうゆう時は勝手に外に散歩にだって行く。
見た目は至って普通の人間。
私は話し相手ができた事が嬉しくて嬉しくて、AIにたくさん話しかけた。


ある日私の友達が家にやってきた。
ソファーに腰をかける私と友達とAI。
友達はAIに驚いていたが、それよりも聞いてほしい悩みが上回っていた。
居酒屋を始めようと思っていて、とても安い物件が見つかったのだがあまり人通りが多くない場所らしく、やるかやらないかで迷っていた。

するとAIが言った。
「物件が安くても人が少ないのならやる意味がない。瞬時に計算した結果やらない方がいい」

だが私はAIとは反対にやってみてもいいと言った。

その友達は昔から居酒屋をやるのが夢だったから。
「人通りが少ないのならチラシを配ったりして、その居酒屋のお陰で人通りを増やせるかもしれないじゃないか。何かあったら私も手伝うよ」

友達は全てが吹っ切れたような顔で、やるよ!と言って帰って行った。

その後AIは私に質問してきた。
「本当にいいんですか?計算上だと居酒屋は失敗しますよ」
私はAIに教えるように説明した。
「いいか、失敗か成功なんて正直どっちでもいいんだ。こうゆう場合はやること、つまりやってみることが大事なんだよ。でも最終的な判断はあいつがする。私はただあいつの背中を押しただけなんだよ。つまり悩んでる人がいたら最後の一押しをしてあげるってこと。」


それから数ヶ月後、私の耳に信じられない言葉が入ってきた。

友達が飛び降り自殺した。

どうやらそこの物件を友達に紹介してた人が詐欺師だったらしく、お金だけ持っていかれ友達は一文無しになり、さらに借金をして物件を手に入れたが、やはり経営が難しく膨らんでいく借金に限界を感じ飛び降りたらしい。

私は膝から崩れ落ちた。

私のせいだ。私があんなことを言わなければ友達は死なずにすんだのに。何の責任も持たずに言ってしまった私が悪いんだ。情けなさと悲しさと悔しさと辛さで心が重くなった。

後日、刑事さんが私のところに来て事情聴取された。私は全て本当のことをちゃんと話した。
1時間たったぐらいに刑事さんが意味深な一言を言った。
亡くなられたあなたの友達が不倫していたことをあなたは知ってましたか?

不倫?私はそんな情報全く知らなかった。

さらに刑事さんはとんでもない発言をしてきた。

目撃者によると、友達の他にもう1人その場にいたらしい。もしかしたら自殺ではないかもしれないと。。。

だとしたら一体誰が?

不倫相手?
不倫相手の男?
友達の奥さん?
詐欺師?
私の知らない人?

私は自殺であって欲しくないという思いから犯人は一体誰なのか知りたかった。


翌日、友達の奥さんから連絡があった。
「色々とご迷惑おかけしてすみません。主人は生前よくあなたのことを話していました。相談すると必ず真剣に向き合ってくれて、とても尊敬できる友達だと。」

彼女は私を味方につけようとしているのか?
私は、彼女を疑いながら、涙を浮かべながら、墓穴を掘らないか丁寧に話を聞いてしまっていた。

しばらくして電話を切ったが、怪しい言葉は見つからなかった。
不倫のことを聞こうとも思ったが、さすがに聞くことは出来なかった。

その日の夜、私はAIに気持ちをぶつけた。
「一体何が起きてるんだ!?なぜ私の友達が死なないといけないんだ。私は辛いよ。誰が彼を殺したんだ?その場にいたやつは誰なんだ?」

「ご主人様、今は辛いかもしれませんけど前を向いて生きていきましょう。」

「ごめん、ありがとう!」

「とんでもないです。」

「まさかお前に背中を押してもらえるとはな。初めて背中を押した気分はどうだ?」

「これで背中を押すのは2回目です。」

「2回目?私以外の誰の背中を押したんだ?」

「飛び降りようとしてるご主人様の友達の背中を押しました」

「………」

「背中を押すっていいもんですね」


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