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揺れたくない

 ことに、揺らぎと変化に弱いことは昔から自覚している。

 ある種、悪意や中傷や攻撃よりも、内側から揺さぶられるものの方が怖い。つまるところ、わたしはわたしのことがいちばん怖い。

 始末の悪いことに……。


 人の手が届かない。救いは自分自身しかない。夜よりも、朝の方が残酷だ。
 人々の日常とのコントラストが最も強くなる時刻。
 この、根源的な空虚は薬で埋められるものじゃない。

 安住の地も愛も希望もそこにあるのに、わたしの内側はときどき激しく震えだす。
 この病理をずっと、わたしは恐れてきたし、持て余してきた。
 けれど同時に愛してもきた。だから引き剥がせない。
 ドーナツの穴はどうすれば捕まえられる?


 今年は、ざらっとした夏の空気を感じていない。この夏は、(少なくとも、今この時代に生きている)すべての人類にとってもはじめての夏なのだ。
 見えないシェルターに逃げ込んで、連日、ニュースを身体に入れる。
 この事態にかまけて、向き合うべきものを棚上げにしている自分もいると感じる。
 いろいろなことが特殊すぎる。ああ、世界中が長い長い「非日常」のなかにあるのだ、と思う。

 時が止まっているうちに、ずいぶん遠い未来に来てしまったような錯覚をおぼえる。永遠のような一瞬、を、まさに体験するような。

 日々、めげずに成長してきたんだっけ?
 小さなことをこつこつと積み上げてきたはずだったっけ?
 そういう感覚からかけ離れてしまっていても、それでも、確実に変化はしている。
 わたしは以前のわたしとは違う。細胞が入れ替わるように、少しずつ、でも着実に、組み替わっている。


 恐ろしいことを恐れなくなった。
 怯えることに怯えるのをやめた。

 もちろん、相変わらず揺らぐし、乱されるけれど。
 たぶん、きっと、自分で思っているよりも受け入れて抱きしめる準備はある。
 傷だらけで、進め。

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