わたしたちはどこへ行くのか (02/14)
・前の日(13日)に朝早く起きて一日じゅう立ちっぱなし、雨が降るなか多摩川の土手を歩き回って日が暮れてから家に帰り疲労はマックスのはずなのに、夜にDiscordに潜ってそのままずるずる深夜4時まで起きていたの、よくないなと思う。
・睡眠不足のツケがまわってきて、起きたのは12時だった。これから昨日のぶんの日記を書いていたらさすがに一日何もしないで終わるな、ということを察して文章書きは後回し。滞っていたシャニマスのシナリオ読みを再開することにした。
・おともはDARSのダークミルク味です。森永の回し者かって? そうだよ。
・10月末からこつこつ全アイドルのG.R.A.D.シナリオを読んでいるが、あとはアンティーカの5人を残すのみ。終わりが見えてきた(なんで4ヶ月もかかってるの……)。全員分を読みおわったら総括みたいなことを書いてもいいかもしれない。
・ということで霧子のG.R.A.D.をプレイしたのだが、心の準備をせずに読んだら予想以上に良くて驚いた。とても好き。(ネタバレあり)
・霧子のG.R.A.D.シナリオの根底にあるのは、〈わたしは何者になりたいのか〉というテーマだ。二人の人間との関わりを通して、彼女はアイドルとしての自分がどういう存在なのか、自分はずっとこのままでいいのだろうかという問いを抱えることになる。
・楽屋で取り乱したアイドルに当たり散らされる霧子。彼女は、霧子と同じくオーディション番組「G.R.A.D.」に出場するはずだったが、靭帯を傷める怪我を負いそれが叶わなくなったのだという。復帰には半年ほどかかるらしい。
・苦しんで努力しても出られない私と違ってそうでないあなたは気楽なものよね、となじるアイドルに、霧子は何も言い返すことができない。
・ちょうどそのころ、霧子は担任の先生との面談を受けていた。高校2年生となれば、そろそろ受験のことや将来のことを考える時期だ。学業に秀でた霧子は、先生に医学部を受験することを勧められる。
・医学部受験といえば大学受験において最難関とされているものではあるが、それ以上に、人が医者になるための最初の一歩としての側面がある。両親が病院関係者で、小さいころから病院の手伝いをしてきた霧子にとっては馴染みのある領域でもある。
・これらふたつの出来事をきっかけに、霧子の中にある迷いが生じる。
・それを象徴するのが、冒頭で霧子が語る寓話だ。
・貧乏な暮らしをしているねずみさんは、お腹を空かせて仕事から帰る毎日を送っている。ふかふかのパンは夢のまた夢、家で待っているのは固いパンと薄いスープだけだ。
・そんな帰り道、ねずみさんはお腹をひどく空かせたとりさんに出会う。とりさんは、固くてもいいからパンさえあれば飢えを凌ぐことができるのに、とねずみさんに訴える。
・そこに通りかかったのは、ほかほかのパンをかかえたいぬさんだ。
・言うまでもなく、ひもじい思いをしている「とりさん」は怪我でG.R.A.D.の出場を辞退したアイドル、「ねずみさん」は駆け出しながらも何不自由なくアイドルをしている霧子の比喩だ。
・目の前に自分の何倍も苦しんでいる人がいて、アイドルとしての道を進みたくても進めないでいる。対する自分は、そのような絶望的な状況に追い込まれているわけでも、「私にはアイドルしかない」と思っているわけでもない。霧子には、パフォーマンスの才能だけではなく医学部に入るだけの学力だってある。
・自分がアイドルの道を目指すことで、パンをもらえなくなる人がいるんだったら——
——パンをつくる側になったほうが、いいのかもしれない。
・この悩み、つねに弱者を思いやることのできる霧子だからこそ生じたものだよなあ。霧子のW.I.N.G.編には、大きな声を出したら他の参加者に迷惑になるんじゃないかと萎縮してオーディションに落ちてしまう一幕があった。あれは少し滑稽なトーンで描かれていたけれど、今思い返すとあれは伏線だったのかもしれない。
・「ねずみさん」である自分が、このままアイドルを続けるべきか? それとも、誰からも奪うことなく人々にパンを与えることのできる医者になるべきか? 心に去来した迷いを霧子に打ち明けられたプロデューサーの返答が、とても良かった。
・彼は、いますぐに答えを出さなくてもいいと言った。どちらの道が霧子にとって最善なのかを彼女自身が見つけるまで、どちらも諦めないでいようと諭したのだ。
・素晴らしかったのは、エンディングで「パンをつくること」に対する別の視座が示唆されたことだ。
・G.R.A.D.で優勝したあと、例のアイドルの子が決勝を観にきていたこと、霧子のパフォーマンスに涙を流していたこと、霧子に負けたくないという思いを原動力にリハビリに勤しんでいることを彼女に伝えるプロデューサー。
・このセリフが本当に良くて……。
・医者がパンをつくる存在でアイドルがパンを奪い取る存在だとか、そういった単純な話ではなかった。アイドルとしてのパフォーマンスが誰かに希望を与えること、これだって立派な「パンをつくる」行為なのだ。そして、それは医者にはできないことだ。
・もちろん、アイドルの道を選ぶということは、つねに誰かを蹴落として生きていくことを意味する。そうまでして他人にパンを譲ってもらって、それで何もつくれなかったらどうしよう、という怖れを口にする霧子にプロデューサーがかけた言葉がとても温かかった。
・「パンをつくる」ために何ができるのか、何になりたいのか。その問いに至ることになったG.R.A.D.編は、霧子にとって大きな転換点になったように思う。いつか答えを出さなくてはいけないのだろうけれど、それはいつになるのだろうか。注意深く見守っていきたい。
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