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チェイサーお願いします (12/26)

・布団のなかでだらだらしていたらお昼をまわってしまい、しょうがないなあと階下に降りる。朝ご飯(兼昼ご飯)を食べたあと、ようやく重い腰を上げて髪を切る予約を入れた。

・すでに1ヶ月くらい前から切らなきゃいけない程度には髪が伸びきっていたのだが、どうもその気になれず一週間、二週間……と引き伸ばし続け、ついには月末になってしまった。ここ数日は前髪を真っ直ぐ下ろすとあごに届くまでになってしまい、髪を洗うのも一苦労、maimaiするときにはヘアピンが必須になるありさまだ。さすがに新年まで持ち越すのはまずい、とこのたび不承不承断髪を決意した次第である。ぜんぶ美容院での会話という習慣が悪い。「髪を切るときの会話用の人格」を憑依させる必要があるのが途方もなく苦手だ。

・夕飯は祖父のところにお歳暮で送られてきたうなぎを譲り受けたのでうな丼。そろそろうなぎを食べたと公言するのが憚られるようなご時世になりつつある。だからではないけど写真を撮り忘れた。

・いただいたうなぎ、特有のねちねちした皮感がないやら身がほくほくやら大きいやらで、庶民の舌でもああこれいいうなぎなんだろうな、というのが分かる。ありがたくいただいた。


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・最初に言っておくと今日はシャニマス回です。千雪さんのG.R.A.D.編をプレイしたのだけど、とっても良かったというお話。

育成が下手とか言わないでね

・ここ最近、自分の中でアルストロメリアの株がぐいぐい上がっている。最初は、ふーん双子の姉妹と年上の物静かなお姉さんのユニットかあ、W.I.N.G.をひと通り読んで最初のイベントコミュを読んだものの、どこか現実離れした感じがしていまひとつ乗れないなあ、などと思っていた。ところが、イベントコミュ「薄桃色にこんがらがって」あたりから甘奈・甜花・千雪の心の動きを丁寧になぞる踏み込んだ描写が増えてきて、俄然この3人のことが好きになり出していった。よく、最初の2話は正直普通だけど、そこからの展開がすごく良いアニメを「とりあえず3話まで見て……!」と布教するのはあるあるだけど、アルストロメリアはまさにそんな感じだ。とりあえず「薄桃色〜」まで見て!! アルストロメリア「まどマギ」説。

・先週読んだ甘奈のG.R.A.D.シナリオもかなり良かったけれど、今回の千雪G.R.A.D.もそれに引けをとらず素晴らしかった。アイドル桑山千雪の価値とは何か、個人としての千雪はそれとどう折り合いをつけていくのか、というデリケートな問題に触れるストーリーで、千雪さんという人間を正面から描く重要なコミュだと思う。

− 免責事項:以下、文体の関係でやむをえず敬称を略させていただきますが、心の中ではさん付けで呼んでおります。 


(ここからネタバレ)


千雪G.R.A.D.より「千雪って人が」

・パーソナリティを務めるラジオ番組の企画で、手作りの雑貨小物をオークションにかけることになった千雪。

千雪G.R.A.D.より「ハンマープライス」

・人気アイドルがじきじきにデザインして作った小物だ、案の定、値段は釣り上がる。いただいたお金は全額チャリティに寄付するとはいえ、誰かこの企画を止めるやつはいなかったのか。

・こんな額をつけられるなんて心苦しい、と話す千雪に対してこう答えるプロデューサー。

「けどさ、これは凝ってて、デザインも印象的で 心のこもった手作りで——」「何より、千雪って人が作ったものでさ」「みんなそのことに、お金には換えられない価値があるって思ってる」

千雪G.R.A.D.より「千雪って人が」

・巾着そのものに魅力があるというよりは、アイドル桑山千雪が熱をこめて作ったものだということに人は価値を見出す。分かりきったことではあるし、それ自体は悪いことではない。批判されることでもない。

・ただ、千雪の手作り小物に大金を払うファンたちが、巾着そのものに価値を見出していないというのは少し複雑な気分にさせられる。雑貨も、桑山千雪という人格を形作っているかけがえのない要素だからだ。

・アイドルとしての千雪は片割れであり、もう半分には、小さいころ憧れの雑誌を読んで以来ずっと続いてきた、雑貨作りに情熱をかける千雪がある。その思い入れは、アイドルになる前に雑貨屋で働いていたことからも、のめり込むきっかけとなった雑誌『アプリコット』のオーディションをめぐって、甘奈と不本意ではあれ争う形になってしまったこと(「薄桃色〜」)からも伝わってくる。

千雪G.R.A.D.より「千雪って人が」

・だから、みんなの追い求めている(アイドルとしての)桑山千雪を取り去ったとき、自分の片身、アイドルではない昔からの桑山千雪がどういう価値を持っているのかを確かめたくなった彼女を私は責められない。

・千雪は、番組の企画に出したものとほとんど同じデザインの小物を、別のアカウントから、名前を伏せて、自分が素敵だと思う詩的なタイトルをつけて、オークションに出品するのだ。

千雪G.R.A.D.より「月へ出かけたキャラバンたちの鈴」

・ここからの展開は想像の通りだ。ページビューは数十いく程度、入札額はたったの1円。よほど狙って検索しないかぎりヒットしないようにし、「桑山千雪の手作り」という情報を省いた巾着が売れないのは、無理もない。

・ここからは個人的な解釈だが、千雪だってそれは重々承知で出品したのだろう。企画で出品した巾着のようにプレミア価格がつくわけない、それは分かっているはずだ。私にはどこか、千雪が自分から進んで苦しい状況に飛び込んでいく傾向にあるように思えてしまう。

・終盤のプロデューサーとのやりとりが印象的だ。

「『ただの千雪』が…………アイドルの千雪に負けたみたいな気がして」「自分で出品したの、ちょっと意地になってたかもしれないです」「ずっと小物とか手芸が好きだったのは こっちの私なんだーって——」「私にも、価値があるんだー……って」

千雪G.R.A.D.より「1円ベイビー」

・「薄桃色にこんがらがって」で、千雪が『アプリコット』にあれだけこだわったのも、甘奈との関係が壊れるかもしれないことを承知でオーディションに出場することを宣言したのも、もしかしたら今回と同じ理由だったのかもしれない。これは彼女なりのあがきなのだ。

・「薄桃色〜」ではづきさんに悩みを打ち明ける千雪が、似たようなことを言っていたのを思い出した。

「でも、そんないいものじゃなくて 結局……」「自分のもやもやと戦うために 甘奈ちゃんの胸を借りるんだよね」

「薄桃色にこんがらがって」より第4話「ふたつの夜」

・このくだり、その後に優しく語られるはづきさんの励ましの言葉が本当に温かくて、大好きなシーンだ。ともかく、理屈じゃなくても、千雪のとった行動は「自分のもやもやと戦うため」の大事な儀式なのだと思う。

・本当は、「ただの千雪」の価値だって、アイドル桑山千雪の価値に負けないくらいたくさんあることを彼女もわかっているはずだ。ただ、前者の価値が多くの人に理解される類のものでないというだけ。それを自ら肯定するために、きっかけが必要だったのだ。

・だから、異変を察知したプロデューサーが千雪にかけた言葉がこうであることを、評価したい。

千雪G.R.A.D.より「意地があるの」

・「アイドルとしての価値」と「素の自分の価値」は千雪に限らず全員が直面する問題だろう。それこそ冬優子なんかはずっと前からその壁につき当たり、それに対して彼女なりの答えを出している。面白いのは、その解答が千雪の出したそれとはまったく違うことだ。25人いれば25通りの正解があるのが、シャニマスのいいところだよね。

・「薄桃色〜」やG.R.A.D.編を通して、私の中で千雪に対する印象がかなり変化したように思う。みんなに優しく、いつも明るいアルストロメリアのお姉さん。もちろん今でもそうであることには変わりないのだが、千雪は想像よりもずっと「面倒くさい人間」だった。そして私は面倒くさい人間が大好きだ。

・というわけでアルストロメリアのG.R.A.D.編をすべて読み終えたわけだけれど、どれも個人を真正面から掘り下げる内容でとても素晴らしかった。G.R.A.D.を経たアルストロメリアの3人がこれからどういう道を歩むのか、たいへん興味があります! G.R.A.D.実装後に追加されたイベントコミュ「流れ星が消えるまでのジャーニー」と「アンカーボルトソング」、早く読みたい。


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おまけ:細かすぎて伝わらない千雪G.R.A.D.の好きなシーン

・作中で二段階認証が登場するアイドルプロデュースゲーム、何??

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