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「停止位置を調整します」

 相変わらず朝の通勤電車のダイヤは「乱れています」が普通で、規定通りに運行することはまれである。

 先日のこと。

 やはりダイヤは少し乱れている。「●●線内で車両点検を行ったこと、さらに途中駅混雑のために遅れております。お急ぎのところにご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」とのアナウンスだ。

 電車がやってきた。

 ところが、ブレーキ操作が遅かったのだろう、停車後に「停止位置を直します。しばらくお待ち下さい」で、ゆるゆるとバックをした。

 私は小学校から電車通学だった。そういえば、かつてはこのように「ホームで行き過ぎちゃってバックする電車」はしょっちゅう見かけたものだが、最近はめっきり見なくなった。「久しぶりに遭遇したなー」というところである。

 「運転士の技能が進化した」というよりも「電車のブレーキの性能が向上した」のだろう。しかもいまどきのホームの多くは「ホームドア」が設置されてるのだから、停止位置誤差の許容範囲はセンチ単位で厳しくなっているだろうに。

 停止してからバックを始めるまでに、たっぷり20~30秒はかかっていたうように思う。やけに長い。

 乗り込むと、車内アナウンスが「更新」されていた。

 「本日は、●●線内で車両点検を行ったこと、さらに混雑のために遅れております。また、さきほど○○駅では停車位置の調整も行いました。お急ぎのところにご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」。運転士は針のむしろだろうな。

 笑い話では済まされない。

 2005年のJR福知山線脱線事故は、手前の駅でオーバーランした運転士が懲罰を恐れてスピードを上げすぎたことも一因だったとされている。

 ダイヤが乱れる。焦ってスピードを出したり、ブレーキミスを起こしたり。さらにダイヤが乱れる。運転士、焦る。

 「毎日乗っていること」は、「事故が起きないこと」とイコールではない。万が一を想像するとゾッとしてしまう。
(22/12/24)


 

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