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10年ぶりに赤札をいただいた

 初詣で有名な川崎大師は10年ごとに大開帳がある。

 “ご開帳”とはご本尊の御簾が開かれてお参りができるということで、数えで7年ごとに実施される長野・善光寺のものが有名。とはいえ、善光寺のご本尊は“絶対秘仏”なので、「お前立」という仏像の御簾が開帳されるもの。どれだけ勿体ぶっているのか。

 川崎大師のご開帳が有名なのは、この期間にありがたい「赤札」が授与されるからだ。これを求めてものすごい数の人が並ぶことになる。


 赤札がいただけるご開帳の期間は1カ月だけ。50歳だった10年前は、自分の分だけでなく家族や親のために何回も並んだもの。しかしさすがにもうそんな気力と体力はなく、今回はきょうだけトライすることに。

 というのも、赤札の授与は1日に6回ある護摩祈祷の際にだけ「出る」ものであり、しかも「貫主の感得によって授けられるもので、場合によっては出ない回もある」ことになっている。「並ぶのも修行」とも言われる所以だ。しかし実は朝6時の初回と夕刻4時の最終回には必ず出てくるので、まあこちらも「勿体ぶっている」だけである。

 早々に起きだして、自宅を出たのが5:20頃。川崎で京急大師線に乗り換えて、境内の行列最後尾に着いたのは6:13だった。ひとつの回で2枚取ることができないようにするためか、護摩祈祷が終了して授与が始まるタイミングで行列はラインカットとなり、次の回に回される。このため6時の回を狙うなら6時20分には列の最後尾に到着している必要があるのだ。

 そこから待つ。列は微動だにせず、ひたすら待つ。前にいるおじいさんが結構な音量でラジオを鳴らしていて軽快な音楽やニュースショーが聞こえてくるのがかなり鬱陶しいが、止めさせるほどでもない。駅からの参道ではおじいさんやおばあさんが多かったが、列には若い人も案外多い。スマホゲームに夢中になっている20代前半とおぼしき姉妹は、家族に頼まれて並んでいるのだろうか。

動かない行列

 ようやく列が動き始めたのは6:57。そこからは案外早く進むもので、靴を脱いで本堂へ昇り、押し合いへし合いしながらお大師さまの像の前を通り、建物の出口で赤札をいただいたのは7:12。ちょうど通勤ラッシュに当たってしまって、会社に来るだけで疲弊してしまった。

 境内には、いただいた赤札を納める「赤札入れ」の屋台が今回も出ていた。そこですぐに買えばよかったものを「参道の土産物屋さんで買えばいいや」と駅に向かったら、早朝だったせいなのか、そんなお店は見当たらない。仕方なくAmazonで「赤札 川崎大師」を検索したところ、お目当ての「赤札入れ」は見当たらず、その代わり赤札そのものが12,980円で出品されていたのである。うう、これが「転売ヤー」というやつか。

 それにしても。

 コロナ禍で寺院参拝にすっかり足が遠のいてしまった私だが、合掌しながらご本尊に向き合う瞬間はすがすがしい時間になった。ありがたいことである。
(24/5/21)

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