11/16 月に開く オープンマイクで読んだ詩
さよならの雨が降る
神様の左手に触る
その頑なな響き
路傍の花に掛かる冷たい心臓
それから、音もなく叫ぶ街
言葉に与えられた拘束が
風の亀裂をひとつずつ数え上げる
果てしない水が虫の翅を冒し
砕かれた骰子(さい)が投げられる
すべてが冷たく
どうしようもなく美しかった
さよならの雨が降る
光の煙が昇る
何も視えない尾根で
火の連想が支配的である
悲しみに値札がつけられ
フリーマーケットで売買される
消えてゆく無限の硝煙
何故痛みは窓を打ち続け
気の弱い羊や草木のひと群れを欺き続ける
あの肉を焼く焔さえ夢に売り払い
おまえの
柔らかい四肢に
氷雨が刺さるのを
ただ静かに視ていた
そのときのおれの眼は
きっと酷い突端だったのだろう
過去は丁寧に改竄される
温もりだけが鋭利な別れを告げる
さよならの雨が降る
さよならの雨が降る
割れてしまった静寂を慰めるように
夜は今もなお凍り続ける
そして
一対の虹が眼の裏に建つとき
すべてが赦されるのが聴こえた
おまえの泣きじゃくらない声も
おれの肩に宿る彫刻も
幻を見せる蝶も
寿命を迎えた眠りも
祈りきれなかった隠喩も
水溜まりの中の怒声も
繋いでは離した左手も
すべて残酷に赦されはじめる
さよならの雨が降る
胸に空いた永遠の断崖に
月光が優しく飛沫く
なんの救いでもない
なんの贖いでもない
ただ柔らかい言葉に
虹の香りが漂い
炎の来歴の彼方
無数の
無数の
無数の
未来が
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