第12回 なぜ写真館だったのか?(その5・お店を持つメリットデメリット)
なぜ写真館だったのか?シリーズのラスト。
そもそも写真館になるまでの経緯として、自分のスタジオが欲しかったことから始まっていることはお話ししてきた通りです。
「写真館」と「自分の撮影スタジオ」
その大きな違いは普段営業しているかしていないか。つまり「お店」なのか「事務所」なのかということです。
私の場合は写真館という実店舗(お店)を作ることを選んだのですが、ではお店を持つことのメリットとデメリットってなんでしょうか?
まずはデメリット。これについては大きく2つ。
それは「時間」と「お金」です。お店には営業時間というものがあり、基本的に自分が決めた営業時間はお店を開けておく必要があります。なぜならお客様はHPなどで見た営業時間の情報を元に来店をしたり電話をかけてきたりするからです。
ハレノヒは完全予約制なので基本的に飛び込み撮影はないのですが、商品の受取やスタジオの雰囲気を見たいお客様の来店は自由です。
営業時間のはずなのにお店が閉まっている。電話に出ない。個人営業のお店なんかではよくありますしカッコよく感じるかもしれませんが、お客様の身になってみれば残念でありせっかくの受注機会も失ってしまうのが実状な気がします。
うちもオープン当初、撮影などで外出する際は張り紙をしてお店を閉めていましたが、それはお客様が少なかったためにできることでした。このようにお店は営業時間に縛られるデメリットを持ちます。
そして「お金」
まず先ほどの開けておかなければいけないという事情に対しお金がかかります。たとえば自分が外出している間にお店を守ってくれるスタッフの存在。人を雇えば当然賃金が発生します。うちはオープン当初、私を含め2名で始めました。もう一人のスタッフはカメラマンではありません。なので基本的にお店で接客や作業してくれていました。
当時は、お金を生み出さない人(当社の場合はカメラマンなどクリエイターではない人)とお店を始めるのは妥当ではないといろんな人に言われましたが、私なりに理由がありました。それはまた説明したいと思います。
次に店舗の内外装費用です。お客様が来店するならば、それなりに見た目を良くしなければなりません。私も内装費用に数百万円を使いました。本当はその数百万円を撮影機材に使いたいところです。
しかし単なる事務所ならばそれなりでも大丈夫かもしれませんが、お店の場合は見た目が重要だと思っています。カフェでもお花屋さんでも店内がおしゃれなお店とそうでないお店、きっとおしゃれな方に行く方が多いと思います。
そしてそのお店に誘導するためのホームページ制作費や広告費もかかります。店内の見た目がいくら良くても、知ってもらったり興味を持ってもらえなければ、来店してはもらえません。見やすく興味の持たれるホームページを持つことは信頼感につながります。今はSNSだけでも集客できる可能性がありますが、ホームページは持つべきでしょう。
ハレノヒはほぼ広告に出稿することはありませんが、広告を出して集客することがあれば広告費がかかります。(広告についてもまたいつか)
またリーフレットやチラシを作って配ることも出てきますので、そのデザイン料や印刷代も考えておきましょう。
ざっくりとデメリットと思われることを書いてきましたが、これらを「投資」と思える人はお店作りに向いている気がします。逆に「経費」と捉えるとゲンナリしてしまいますよね。そろそろBtoB取引の写真事務所の方が楽!ってなっていませんか?笑
ではようやくメリットについて。
私が思うお店や写真館を開くことのメリット。ズバリそれは、自分を「写真屋さん」にしてくれることです。
カメラマンでも、フォトグラファーでもない。「写真屋さん」になれることが写真館を開くメリットだと思います。
写真館を開く前、私は一人の契約ウエディングカメラマンでした。少なくとも私が撮影したお客様や式場のスタッフさん、友人家族は私をそう認識していたでしょう。しかしその他の人に「私はカメラマンです」と言ったところで、自分の利用方法などをすぐに思い浮かぶことは難しいと思います。
「ディレクターしてます」「プロデューサーです」なんてよくわかりませんよね。「デザイナーしてます」「カメラマンです」はどうですか?その関係するお仕事をしている人からは「今度仕事を見せてください」となるかもしれませんが、一般のユーザーから「じゃあ今度お願いします」とはなかなかなりません。
でも「写真館やってます」ではどうでしょう。前も書きましたが、写真館は仕事内容がとても明確なので「あそこの写真屋さんなんだ。今度うちの家族写真を撮ってもらおうか」ってなります。このように地域の人の大多数にとって何者でもなかった自分が「写真屋さん」という存在になれる。それが最大のメリット。
もっとわかりやすく言うと「自分にお仕事をくださる可能性がある人が大幅に増える」ということです。広告のフォトスタジオや事務所の、何倍では効かないほどのクライアント候補ができます。これは以前書いたBtoCのメリットに追加しておいてください。(その記事はこちら)
なぜ写真館だったのか?について結構長く書いてきましたが、次回からはまた私の経緯に戻り、開業までのことや資金作りなどに関係するお話を書いていきたいと思います。
(あとがき)
どうでしょう?これを読んでくださっているカメラマンさんの中には事務所なのか写真館なのか、今も迷われている人もいると思います。私はお店を持つことを選びました。実は上記以外にメリットがあと二つあります。
一つ目はダイレクトに自分の仕事が喜ばれているところを目にすることができること。
もう一つはその地域で愛されるお店作りができれば、自分が歳を重ねてカメラマンとしての旬を仮に過ぎてしまったとしても、経営者や裏方として仕事を続けることができるかもしれないということです。
「自分が作ったお店がお客様を喜ばせ、永く自分に仕事をあたえてくれる」
お客様も自分もスタッフも。長年にわたって三方よしのお店ができるようにしていきたいです。
株式会社ハレノヒ代表取締役/2015年、築100年の古民家をリノベーションした写真館をオープン。地方写真館の再定義を行うことによって人とまちが豊かになる仕組みをつくろうとしています。その他セミナー講師や各種メディアにも出ています。