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『きのう何食べた?』がくれたもの

劇場全体が、クスクスと淡く揺れ、ホロリあたたかい涙を流す。あぁ、おかわりしたい!
以下、設定以外のネタバレなし。
ただただ大好きなところを賛辞していくエントリです。

(この2人の素敵な画を載せたくて)

よしながふみさんの作品を知ったのは、2005年の『愛がなくても喰ってゆけます』から。紹介されていた数々の「旨い店」に、聖地巡礼のごとく訪れたりも。

『西洋骨董洋菓子店』『大奥』その他作品も全部読んでいるなかで、いちばんハマったのが『きのう何食べた?』2007年から、5回の引越しを経てもずっと書棚に増え続けています(連載の長さも素晴らしい)。

TVを見ない生活が長く、深夜ドラマ化は単行本の帯で知っていたけれど、キッズ2人のワンオペで忙しくしていたのもあり、評判すら知らずまま、2年。

それが。先日出た19巻に『特装版』とあり、しかも少し前に映画化されたと。えええええ!映画!11月公開!もう12月も終わり!やってるところ、あるのか…?

帯でドラマの紹介をみたとき気にもしていなかったキャスティング。エントリ冒頭に載せたこのお2人の絵が、可愛いくて素敵すぎて。

万障繰り合わせのうえ最速で映画館へ。(ヘアサロンに行くため有休を取っていた→奇しくもラスト上映日だった映画館へ駆け込み)

食べることは、生きること

この作品でいちばん好きなのは「食べる」を丁寧に描いているところ。

作る人は食べる人を想い、食べる人は作る人を想う。

映画では、西島秀俊さん演じるシロさんがごはんをたくさん作るのですが、いつも一緒に暮らすパートナー、ケンジに思いを馳せている。好きな食材、好きな味つけ、そして、忙しい立ち仕事を気遣った栄養バランスまで。誰かのために作る料理って愛しくて尊い。シロさん、キッチンでずっとニコニコしながら料理しているのも、内野聖陽さん演じるケンジが心から美味しそうに食べるのも、実写化ならでは。眼福でした。

もちろん、レシピも参考に!(映画の後数日で、インスパイアされた献立を3つは作りました)
毎日、家族にごはんをつくる時間は、誰かを想う時間なんだ。毎朝毎晩、バタバタするキッチンも、こどもたちがおかわり!と声を張る食卓も、とても愛しくてしあわせな場所に感じられたのは、このふたりのおかげ。

変わってゆく家族のかたち

トップ画像でもわかるように、この作品はサザエさんドラえもん方式ではなく、登場人物も歳を重ねてゆく、そこがまた切ない。同性のパートナーの物語だけでなく、ふたりを取り巻く周囲もまた変化してゆく。新しい家族が増えたり、親の「老い」に直面したり。自分も辿ってきた過去に重ねて泣けたし、身につまされたし、爆笑もした(この映画は感情が忙しい)

映画のあと。離れて暮らす家族を想い、どうしてるかなぁと連絡したり、会いに行ったり。「いま」は決して永遠じゃなく、変わってゆく未来の入口。イマココは、愛しくて大事な時間なんだよね。

大切なものから手を離さない

ありがとうも、ごめんねも、心にとどめているだけでは伝わらない。いつも想いあって一緒にいるふたりでさえ、ちいさなすれ違いから綻びが大きくなっていくこともある。

わたしは、家族や、友人や、大切なひとたちに、ありがとうやごめんねを、ちゃんと伝えているだろうか。わかってもらっている気になっていないだろうか。

たくさんの愛おしさを、ありがとう

かたちがさまざまに変わっても、すれ違っても、大切なひとを想って、気持ちを伝えて、心を込めて一緒にごはんを食べて、生きていく。それだけで、じゅうぶん。

駆け足ですぎてゆく年の瀬、駆け込んだ映画館。
同性パートナーの、ごはんが美味しいマンガ作品から、こんなにたくさんの愛おしさをもらえるなんて、想像をはるかに超えすぎて、最高かよ。

あぁできるなら、映画館でもう一度観たいなぁ。


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