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プラセボ(Placebo)

プラセボとは、治療効果がない偽(にせ)モノの治療のことを指します。
プラセボ薬は実際には有効な成分を含まない薬であり、患者に対して薬剤として提示されますが、特に薬理学的な効果は期待されません。
プラセボ薬は効果の無い薬なので偽薬(ぎやく)とも呼びます。
別の記事「ジェネリック~その3・DDS~」で説明した不活性成分のみで作られた医薬品です。
では、なんの効き目も無い薬がなぜ必要なのでしょうか?
この問いに答えるためには、まずプラセボ効果という現象を説明しなくてはいけません。
実際の治療効果がない偽薬を服用したにもかかわらず、患者が自覚する症状の軽減や緩解をプラセボ効果と表現します。
言わば、患者が効果を期待するあまりに、あたかも症状が軽減もしくは緩解したかのしたような錯覚にとらわれてしまう心理的もしくは精神的な現象のことです。

そのお薬・・・ じつは薬効ないんですよ

ときに我々ヒトという生き物は、心理的もしくは精神的な影響のもとでは理屈を超えて、薬理学的な作用以上の効果を実感してしまうことを知っておきましょう。
これがプラセボ効果です。

治験第三相試験として実施される方法として比較対照試験があります。

比較対照試験というからには2つのグループを比較するわけですが、介入群と対照群という2つのグループを無作為に抽出します。
介入群と対照群を説明する別の記事「介入群と対照群」もありますので、その記事も閲覧していただければ、理解しやすいと思います。
介入群に実薬内服グループ、対照群にプラセボ薬内服グループを割り当てて、安全性と有効性を証明するための比較対照試験を実施したと仮定しましょう。

介入群に効果が認められるのは
実薬を内服しているんだからまあ当然ですよね
でも対照群にも効果が認められてますね

介入群で効果が確認できるのは当然として、プラセボ薬を内服した対照群であっても前半で述べたプラセボ効果のために一定の効果があったことが確認できできてしまう(!)のです。
実際の治療効果がないプラセボ薬を服用したにもかかわらず、患者が自覚する症状の軽減や緩解と説明されるプラセボ効果が表れた結果です。

実薬を内服した介入群でもプラセボ効果は発現するはずなので、内服しただけで効き目があったと錯覚しているプラセボ効果分を差し引かないと安全性や有効性といった効果を過大評価してしまいます。

偽薬を内服した対照群で認められた効果が
プラセボ効果なんですね

プラセボ効果分を差し引いたこの※印の範囲が忖度なしで錯覚部分を取り除いた本当の意味での安全性や有効性という効果になります。

プラセボ薬についての知識やプラセボ効果についての理解なしには、介入群に内服してもらった実薬の安全性や有効性が測れないということです。
新薬開発の際、安全性や有効性を客観的かつ信頼性の高い形で評価するために欠かせない考え方がプラセボなのです。

じつは副作用を評価する際も、同じ構図になります。

※印が本当の意味での副作用ということですね

何の効果もないプラセボ薬を内服しただけで気分が悪くなるヒトもいます。これはネガティブは方向に現れたプラセボ効果です。
副作用を評価するにあたっても、プラセボ、プラセボ薬、プラセボ効果は大きな役割を果たしているということを理解していただけましたでしょうか。

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