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『フィンガーネイルズ』 実は4択

余韻の残る作品。とても良い作品だったし、「ジェシー・バックリー目当て」という動機にも十二分に応えてくれたなと思う。

どうやら当初はキャリー・マリガンがキャスティングされていたが、最終的にジェシー・バックリーになったという。前者であっても素敵な配役に思えるが、やはりこの作品でのジェシーはとても良かったし、歌唱の素晴らしさも流石だった。

『ジュディ 虹の彼方に』で彼女を知って、そのあとで初主演作の『ワイルド・ローズ』を日本公開時に観てからは、継続して出演作を観てきている。配信オンリーやシリーズドラマは後回しになっていて、今作はApple TV+ 配信作品ということで、さらにハードルは上がりそうだが、『フォー・オール・マンカインド』という目当てがあるのでちょうど良かった。ちなみに、英米では劇場公開もされたようだ。
その『ジュディ…』では、ジュディ・ガーランドのロンドン公演でのアシスタント役を演っていて、雰囲気や特徴的な右の口角などで印象付けられた。そしてWRで完全に推しになった。どちらも製作はUKで、公開はWRの方が先。日本では逆になったが、おかげでブレイクするきっかけになった初主演作を劇場で観ることができた。これがとても良かったし、歌唱力にもとにかく驚かされた。DVDも購入している。

そういう彼女なので、今作での歌唱は配役が決まってから考えられたものなのか。ただし、対になっていると考えられる○りのシーンがあるのでどうだろう。キャリー・マリガンも出演作で歌唱していたりすることを思えば、結局はキャリーを想定した当て書きだったのかも。何にせよ大好きなシーンになった。

監督のクリストス・ニクはギリシャの人ということで、ヨルゴス・ランティモスとも繋がっているそうだし、その系譜はなるほどなと思える部分もある仕上がりだろう。彼の前作『林檎とポラロイド』はまだ観ていないが、どうやら好きなジャンルのようなので鑑賞予定。その前作からケイト・ブランシェットにロックオンされているニクは、彼女のための新作に取り組んでいるのかもしれない。

さて今作について。
主演以外はリズ・アーメッドの出演を知っているだけだったが、2人とも意外性のある役柄で、かつそれを好演していたので、そこも観て良かったなと思えるポイント。アンナは恋愛について貪欲とは言い過ぎかもしれないが、他のカップルの関係性もすぐに気になって訊いてしまうような人物。理想のようなものを求めてしまうから、今のパートナーとの「相性」を何かと気にしてしまう。

今作はその相性を「検査」できるようになった社会という背景があって、もちろん信じない人たちもいる。しかもあの形式だから、こちらも懐疑的になるよりないし、あの「研究所」で行われているカリキュラムを見ていても、検査よりもそのためのプロセスが本人たちにとって重要なのがわかる。しかしそれを「検査」で台無しにすることもあるのだ。というか陰性の方が圧倒的に多い。
それを憂いているあの研究所の所長も検査結果を受けて離婚したというから、それって切っ掛け作りでは、とも思えてしまう。

登場人物たちの心の動きは、実のところよくある恋愛ものとも言える。そしてあの研究所で働く2人は「映画のように」惹かれ合う。これまでに繰り返し描かれてきたようなことを、あえてストレートにやっているように思われる。そしてSFの要素は乗り越えられるべき障害になった。2人がどうなるかはちょっと考えるし、アンナは手強そうだね……。

振り返ると、あの検査の「100か50か0」の設定もなるほどなと思えるし、あの結果が出た時のアミールのリアクションは何とも言えないものだったよな、とか考えるとちょっとややこしい。

音楽の選択も気になるので、その辺りの解説があればいいなと思う。あとチキンスープも。


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